Mission Blau. (06.02.2008)

今年の初めに米国で、「ドイツ軍は訓練、装備、どの面を見ても、実戦に投入できるレベルにない。」と非難があがった。これは(かっての)軍事大国ドイツの誇りを大いに傷つけた。国防大臣がこれに答えて「ドイツ軍は、装備に置いても訓練に置いても実戦に投入できるレベルにある。」とコメントしてしまった。するとその翌月、アフガニスタン南部の戦闘任務にドイツ軍を派遣して欲しいという正式依頼がNatoから入ってきた。うまい米国の誘導非難である。ところが、この前はドイツ軍を「実戦投入レベル」と評価した国防相が「ドイツ軍はアフガン南部の戦闘任務には派遣されない。」と回答して、事実上、米国の要請を蹴った。この決断には他でもない、最近のドイツ海軍の活躍が大いに貢献していた。

事件があまりに多いので、最近の事件ばかりに限って紹介すれば、去年ノルウエ-海岸沖を航海中の機雷探知船Groemitzが座礁した。通常、座礁というのは、地図に記載されていなくて、しかも海中に隠れている岩に気づかないで乗り上げてしまうのである。ところが今回は、でかい岩が海から突起していたのに、ドイツ海軍は真昼間に思いっきりこの岩に向けて航行、座礁した。事件後、海軍の秘密保持令にもかかわらず「みんなビールを飲んで酔っぱらっていた。」というもっともらしい噂が海軍内部で広まり、この事件は海軍内でGroemitz オン ザ ロックという相応しいコード名が付けられた。

その後には、実弾訓練中に装填不良を起こした76mm砲の修理中、装填状況を確認する為に兵士が砲の発射ボタンを押してしまう。大砲は船の前方部に命中、沈みはしなかったが、大穴が空いた。世界広しとは言え、自分の船の大砲で自分の船を打つ海軍といえば、ドイツ海軍しかあるまい。

事件は今年になっても一向におさまらず、地中海で武器密輸を監視する任務を持つドイツ駆逐艦隊が、「誰が一番早いか!競争」を展開。何を考えたがその内一隻が全速力で航行中に航路を変更、別の船の航路を横切ろうとした。最初の一隻はなんとか衝突を交わしたのだが、その後ろを航行していた別の船に衝突。この一部始終を、兵士がビデヲ撮影。(一体、訓練はいつ行うのだろう。)寄港後、編集されたビデを兵士がYouTubeにアップロードした為に、ドイツはおろか世界中にドイツ海軍の名を覇せることとなった。

他にもキールの軍港での27mm砲連射事件、海上での衝突事件は後を絶たない。あまりの惨状に業を煮やした海軍の上層部は、事故を防ぐ為、駆逐艦の速度を制限する改造を命令したほど。一体、どこの海軍が軍艦のスピードを減速する改造を施すだろう。日本で暴走族対策の為にオートバイの馬力を自主規制したのと同じで、まるで子供の扱いに手を焼いてるとしか思えない。

通常、軍隊は自身のボロがでないように事件後、直ちに緘口令を引くので、滅多に外部に漏れることはない。だから今まで外部に漏れた事件は氷山の一角と考えるべきだが、それでもすばらしい実績である。これでは国防相が、ドイツ軍の実戦派遣を拒否したのもよくわかる。この様では、良くて我が軍の足手まといになるのが、関の山。軍事専門家(ドイツの場合は退役した将軍)は、「ドイツ海軍は、まず自分自身との戦いに勝ってから、外部の任務に始めて目を向けることができる。」と言明していた。巷ではそんなかっこいい言い方をしないで、ドイツ海軍に出来ることはMission Blau*くらいだと言われている。

*ドイツ語でblauというと、大酒をくらって酔っぱらう事、あるいは酔っぱらっている状態を言う。


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Groemitz on the Rock

 

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「自爆」後、港に引っ張られていくLuebeck。
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