柳の下の二匹目の泥鰌 (03.02.2008)

1月27日にHessen州とNiedersachsen州で地方選挙が行われた。ニダーザクセン州の選挙では、(もう若くない奥さんを放り出して、若い女性と一緒に生活を始めた)Christian Wulff氏の楽勝が予想されていた為、メデイアの焦点は、ヘッセン州の選挙に集中した。(ドイツでは政治家の私生活は、あまり問題にされない。)

ヘッセン州の現州知事はKoch氏。この政治家を一言で描写するなら「ガキ大将」。リーダーシップはあるのだが、時々、とんでもない事をしでかすのである。ヘッセン州は元来SPDの地盤であったが、コッホ氏は4年前の地方選挙で外国人の二重国籍を断固拒否し、(選挙権のない)外国人が多く住むこの州のドイツ人の共鳴を受け、ヘッセン州をSPDから勝ち取った。これにより、「敵の城」を奪取した政治家としてCDU内ではその功績が大いに称えられた。そして今回の防衛選挙である。SPDが対抗候補として立てたのが、全く無名のギリシャ人の名前を持つYpsilanti女史であり(外国人の名前は受けない。)、選挙はコッホ氏の楽勝に思えた。ところがこのガキ大将、次から次へと奇策を展開、日に日に人気を落としていった。

まずはフランクフルト空港の夜間離着陸問題で、「これ以上の離着陸は、あり得ない。」という約束を(よりによって)選挙前に反故にして、大幅に夜間の離着陸をで許可してしまい、付近住民の反感を買った。お次は、先回敵の城を奪取した際の秘密兵器、「悪いのはすべて外国人」を取り出して、「外国人がドイツで犯す犯罪率はドイツ人の3倍もある。そんな外国人は、故国に強制送還してしまえ!」と言い出した。この外国人を十把一絡げにして、すべて犯罪者扱いにする州知事の声明には賛否両論。外国人の犯罪率は、確かにドイツ人のそれよりも高いのだが、3倍というのは明らかに誇張であった。この為、「外国人ネタ」を選挙運動に使用しているとして、知識人から非難の声があがった。ここでもしコッホ氏が情勢の変化を感じ取る敏感さがあれば、まだ選挙には楽勝できただろう。しかし、「まだまだ手ぬるい。」と感じたコッホ氏は、現在は18歳以上の大人に対して採用される罰則を14歳にまで引き下げ、「悪ガキは、牢屋に放り込んで一般市民(つまりドイツ人)を守るべきだ!」と言い出したのである。これに大喜びしたのが、対立候補のYpsilanti女史。外国人の多く住む地区を訪れて、一緒に写真を撮り、外国人に対する理解を示した。そして、「14歳の少年が、刑務所に送られるようなことがあってはならない。」と(当たり前の事を)言うだけでYpsilanti女史の人気は急上昇。選挙前の世論調査では、ほぼ同じ支持率に達した。

18時に投票所が閉まって、選挙速報が1時間おきに入ってくるのだが、その度にCDU(コッホ氏)が優勢かと思えば、SPD(Ypsilanti女史)がトップに立つという稀に見る超接戦になった。選挙結果が出てみると、CDUは36.8%、SPDは36.7%。その差、わずか01.%であった。選挙結果を追うコッホ氏の顔面は蒼白になり、結果が出た瞬間のCDU党の選挙本部は御通夜のようなムード。これと対照的なのが、Ypsilanti女史のSPD陣営だ。選挙前は誰も予想していなかった善戦で、戦勝ムードで湧きに湧いた。翌日の記者経験ではこの両役者が出席したのだが、どちらも過半数を獲得していないので、「連立政権を組む用意はあるか。」と聞かれると、Ypsilanti女史はまるで汚物でも見るかのような表情で「あり得ない。」の一言。同じ質問がコッホ氏に向けられると、まるで先生に叱られて機嫌を損ねた(beleidigte Leberwurst)ガキ大将のような表情になり、そっぽを向いてしまった。この記者会見では、両者は隣同士に座っていたのに、一度も視線を交えることなく、お互いに別方向を凝視するほどの最悪のムードだった。

別の視点から見ると、今回の州選挙では左翼政党、die Linkeが州議会入りを果たし、西ドイツでも5政党制となった政党政治の転換点である。つまり議席が5政党に分散しているので、単独政党が過半数を獲得する事は不可能である。又、これまでのように2政党が連立政権を組んでも、過半数が獲得できず、過半数を制するには3政党が連立政権を組むことが必要になった。勿論、CDUとSPDが連立政権を組めば過半数を獲得できるが、あの仲の悪さでは想像さえできない。例え【便宜上の結婚】になっても、この関係が長続きすることはないだろう。お互いに憎みあっている仲で、結婚生活が長続きするわけがない。又、SPDは過去、脱党者(裏切り者)がdie Linkeに数多く移籍しているので、die Linkeとの連立は可能性としても検討することを拒否している。あるいは、CDUかSPDがFDPと緑の党を取り込んで3党政権を組む事も算術上は可能なのだが、FDPと緑の党はアラブとイスラエルのような半永久的な敵対関係(die ewige Feindschaft)にあるので、この両者が婚姻届にサインする可能性はない。結果として、どのような組み合わせでも過半数を取ることが不可能となり、ヘッセン州では再度、投票が行われる可能性さえ出てきた。これもコッホ氏の、「柳の下の二匹目の泥鰌」戦略のお陰である。
          

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Wulf氏と新しい【奥さん】。

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開票結果に大喜びするYpsilanti女史

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顔を合わせる事を嫌って、そっぽを向く二人。



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