マダム No. (09.12.2008)

「政治家の真価は、危機が起こった際の対処で証明されるものである。」とは、かってのシュミット首相の言葉だ。まさか任期の間にそんな危機が起こるとは予期していない頃、国会討論で発した言葉だが、首相在任中にまさにその危機が発生する。テロリストによるルフトハンザのハイジャックでは、直ちに特殊部隊による介入を指示して人質の解放に成功、見事にこの危機を克服した。そして今、新たな危機、経済危機が起きている。

製造ラインの停止、労働者の解雇、工場閉鎖(倒産)など、毎日のように聞かれるので、すでに悪いニュースは大方出尽くした?と思っていたら今日はメルセデスが(ドイツ国内の)全工場にて労働時間の短縮、及びクリスマス休暇の延長を行うと発表した。これによりドイツ人の大好きなクリスマス休暇が2週間から4週間に(強制的に)伸び、(労働組合が長年求めていた)労働時間短縮が実現したたわけだが、反応は喜びではなく、不安と心配の混じったものだった。しかし、メルセデスはまだ運が良かった。ここでも紹介した通り、メルセデスの前社長のSchrempp氏は、「世界に冠たるメルセデス。」を目指してクライスラー、三菱自動車を買収した。この事業が一向に赤字から黒字に転換しない為に、氏は取締役社長を解任されて、「処理班長」として名高いZetsche氏が跡を継ぎ、次々と赤字事業を売却、縮小していった。この処理作業が一段落した時点で、この経済不況がやってきたのは不幸中の幸いだった。もし、あのままSchrempp氏が社長に納まっていたら、メルセデスは米国の自動車会社GM,Ford, Chryslerが米国政府に財政援助を願い出ているように、ドイツ政府に支援を乞う事になっていただろう。

この危機の時期こそ、首相の才能(があれば)、手腕を発揮するいい機会だが、この現状に鑑みてもメルケル首相は経済(景気)対策を実施する気がないばかりか、この無為を、「ドイツの目玉輸出商品にすべきだ!」とまで言い出した。才能はともかく、自信(それとも過信?)だけは十分に備えているようだ。それはさておき、ドイツにも現状をちゃんと認識している政治家は要る。その一人がここで何度か紹介しているGisi氏だが、先日テレビの討論会で非常にわかりやすい論拠を展開していたので、ここで紹介してみたい。氏は、「一個人の財政と国家の財政はその管理の方法が異なる。一個人の場合、お金があれば、お金を消費するが、お金がなければお金を節約する。しかし国家は、お金があるときはお金を節約して(国家財政の建て直しを図り)、お金がないときは、借金をしてもお金を消費しなくてはならない。」と、持ち前の才能、「わかりにくいことを、誰でもわかるように説明する。」を、見事に発揮していた。

この経済危機にあって国家の支出を増やすというは、勿論、Gisi議員だけの提案だけではなく、欧州議会の提案でもある。欧州議会は大幅な減税に加え、国内総生産高の1,5%程度の規模の景気対策を呼びかけている。しかし、よりによってEU内で一番経済力の強い(国内総生産高の高い)ドイツが、"ohne mich!"(やなこった。)と言っており、さらにはドイツの経済政策を欧州統一の経済政策にしようと画策するに及んで、欧州議事長Barroso氏の堪忍袋の尾が切れた。12月8日にロンドンにて今回の経済危機に関して、各国からの経済専門家を招いて対策会議が開かれた。参加者にはBarroso氏、英国首相、フランス国大統領が招待されたが、ドイツの首相はこの会議に招待されなかったのである。首相官邸は、「何かの手違いでは?」と問い合わせたようだが、返事は"Sie werden ausdruecklich nicht (ein)geladen."(お呼びではない。)だったそうだ。フランスの大統領にあってはメルケル首相を「マダム No.」という名前で形容した。

面子を潰されたメルケル首相は、この週末に独自の「対策会議」を首相官邸で開くと発表、あくまでも独自路線を貫く姿勢を明らかにした。それとも自信がなくなってきたのだろうか。この経済危機が荒れ狂う大嵐の中で、舵取りがどっちに船を向けたらいいのかわからないので、「嵐が過ぎるまで我慢する。」という状況は、船員(国民)にとって不安極まりない。


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危機の時の舵取り(Lenker)としてはかなり不安だ。

 
        

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