墓穴を掘る。 (28.05.2009)

5月23日に新しい大領領が選出された。ドイツでは、米国や(確か)フランスのように国民が直接投票するのではなくて、国会議員が投票をする仕組みになっている。又、候補者は政党の指名を受けて立候補するので、米国のように「誰でも立候補できる。」ものではない。さて、肝心の大統領選に立候補、つまり使命されたのは4名。1名は極右(ネオナチ)政党から指名を受けた候補者だが、ドイツのような成熟した社会では最初から当選する見込みはなく、ただ社会の注目を浴びる為に立候補しただけ。第二の候補者は左翼政党が指名したSodann氏で、ドイツで人気番組だったTatortという番組で、名刑事を演じたテレビ俳優。氏は大統領候補指名の記者会見で、「(もし)大統領になったらドイツ銀行の頭取を逮捕させる。」とか、「社会主義をドイツに再度導入する。」とか、100年前なら国民には受けただろうが、今ではすっかり時代遅れになったスローガンを記者会見で飛ばして、失笑を買っていた

上述の2名と比べて、大統領に選出されるチャンスのあるのは、先の大統領選で現大統領に敗れて雪辱に燃えるGesine Schwan女史。女史は、余程先回の敗北が悔しかったのだろう、SPDが「独自候補は指名しない。」と声明を出すと。当時SPD党首だったBeck氏に直談判をして、氏を説得、彼女を大統領候補に押すように約束させてしまった。このベック氏の翻意は党内で批判されたが、まだベック氏を擁護する声の方が大きく、党内でもSchwan女史を押すことでなんとか意見の一致を見た。ところがその後の記者会見で、女史が「左翼政党の支援を歓迎する。」とやり、選挙戦の演説で「かっての東ドイツ(DDR)は(よく報道されているような)ひどい国家ではなかった。」とやって、SPD内の中道右派(最大派閥)や緑の党から反発を受けた。その後もよりによって政治学の教授である女史が、かっての独裁政権であった東ドイツを擁護する発言を繰り返したので、SPDは表面上は女史をまだ押していたが、女史に距離を置くようになった。

その後、ベック氏が左派への言い寄りで党首の席を追いやられると、Schwan女史へのSPD内部での支援はますます減った。大統領選についてコメントを求められるとSPDの幹部は判で押したように、「ノーコメント。」を繰り返し、このテーマを避けているのが明らかだった。「このままでは、またしても負けてしまう。」と情勢不利を感じた女史はベルリンのSPD党本部に乗り込んで、もっと積極的な支援を要求したが、党本部の反応は冷めたものだった。SPDにしてみれば、前党首の「左寄り」の結果、ヘッセン州選挙で大敗を喫した記憶が生々しく、左翼政党にラブコールを送る大統領候補を押すなど毛頭なかった。それどころか今年の9月には総選挙が控えているので、できればSchwan女史の大統領指名を取り下げたい心境だった。ところが政治学者の割りに敏感さに欠ける女史は、これを一切機に介さず、ますます大胆な発言を繰り返すようになり、最後には、「大統領は議員による投票ではなく、国民による投票で決められるべきだ。」と、憲法の改正を要求した。

実際の所、Schwan女史の勝算は悪いものではなかった。女史が念願の大統領に選出されるには過半数の613票が必要だが、対立候補で現大統領のケーラー氏を押すCDUとFDP党は合計604人なので、最高でも604票しか獲得できない。つまり最初の投票で右翼政党と左翼政党の候補者が脱落すると、第二回目の決選投票ではSchwan女史とKoehler氏の一騎打ちになる。ここで左翼政党が女史に投票すれば、Schwan女史は得票数でKoehler氏を追い越し、選挙に勝つことができる。こうした目録があっいて女史は左翼政党にラブコールを送ったわけである。しかしよりによって女史のこの目録が、思ってもいなかった結果を生む事になる。

23日の午前中に最初の投票が行われ、その結果が発表されるまで(異例の)ほぼ3時間もかかったので、かなり僅差の結果であることが予想された。やっと昼すぎになって得票結果が出たが、現大統領のケーラー氏が最初の投票で過半数の613票を獲得、再度、大統領に選出された。これはまさに1票差で過半数になるという稀に見る僅差であり、投票結果の発表に時間がかかったのも無理はなかった。1票の数え間違いで、選挙の行方が変わるかもしれないので、何度も得票数を数え直していたに違いない。この投票結果を見るに、「最高でも604票の筈なので、一体、誰がケーラー氏に投票したか?」と問われる所だが、Schwan女史の左翼政党への言い寄りを快く思わない緑の党などの議員が、党の方針「Schwan女史に投票すべし。」を無視してケーラー氏に投票した事が判明した。つまる所、Schwan女史は自身の左派政党への言い寄りで自身の墓穴を掘った事になる。これによりヘッセン州のSPD党首Ypsilanti女史、SPD党首のベック氏に続き、左翼政党への言い寄りで3人目の犠牲者が出た事になる。ちなみに公式には選挙に負けたSPD党幹部だが、ケーラー氏が大統領に選出されて「ほっ」としたのだうか、終始、笑みが耐えなかった。


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笑い者になったSodann氏。


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復讐に燃えるSchwan女史は、


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また負けて涙を流し、


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勝者は笑いが止まらない。

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