die Regierungskrise. (17.06.2010)

先日、日本の首相が守れもしない約束をしてしまった事が原因で辞任してしまったが、ドイツでも同じ時期、大統領が辞任した。又、新首相は日本の天文学的な財政赤字対策に取り組むと頼もしい発言をすると、ドイツでも当初は減税を約束していた現政権であったが、ユーロ危機に強いられて、増税を実施すると発表した。このように今の両国には共通点が多いので、今回はドイツの財政赤字への取り組み、そして大統領が辞任するに至った経緯などを紹介してみたい。

まずはドイツの政治の現況だが、去年の総選挙にて新連立政権が誕生してから、意見の違いで争いばかり。野党と与党が争うならともかく、与党内の争いで、これが水面下で調整されないで、表面化しての争いなので、国民の信頼を失うのにとても効果覿面。例えばベトナム系ドイツ人の厚生大臣(FDP)が国民皆保険の大改革を閣議に提出すると、バイエルン州のCSUの党首、Seehofer氏がこれをこきおろしして、国会で討議される前に闇に葬られてしまった。高度経済成長期であればこうした茶番も許されるかもしれないが、欧州(世界)は未だに経済危機の後始末に苦しんでおり、ユーロ諸国にはユーロ危機というさらなるお荷物に悩まされている。この危機に際して、政府がこの問題と取り込む代わりに、政権内でお互いの政策を潰すことにしのぎを削っているので、国民が政権に対して支持を拒むのも無理はない。

こうした政府の醜態を見た大統領は、「政府の行動には幻滅した。」と明言した。大統領はそもそも現政権の推薦で大統領に就任している。その大統領が、現政権を公に非難するのだから、その憤りはかなり大きなものだったに違いない。しかし、この政府批判は政権内で反大統領ムードを作り出した。「折角、大統領に推してやったのに、そのお礼がこの批判か!」というわけだ。このギクシャクした関係の中、大統領は中国を訪問した。表面上は上海で開催中の万博を視察して、両国関係の絆を強める事が目的だが、裏にはドイツ製品の売り込みの目的があった。今やドイツの車メーカーは、ドイツ国内よりも中国にて多くの車を販売している。将来、この傾向にますます拍車がかかることは目に見えているので、選挙に敗北して早期に退陣する心配のない中国の首脳と逢って、「(ドイツ製品を)よろしく。」をしておくのは、得をすることはあっても損になることはない。中国首相にしても、ドイツも大領領と逢っているシーンをテレビで報道でき、イメージアップに繋がる。

無事に終えた中国訪問からドイツに帰国する途上、大統領はアフガニスタンを(初めて)訪問して、ドイツ兵に激励の言葉をかけることにした。最近、相次いで死者が出た後だけに、必要な措置だと判断したようだ。この訪問はわずか2時間ではあったが、「大統領、ドイツ兵にその功績に感謝する。」という見出しを作り、アフガン訪問は成功したに思えた。ドイツに帰国する飛行機の中で、大統領はこの視察に同行した記者にインタビューを与えた。おそらく現地で見た状況に幾分、感銘を受けていたのだろう、このインタビューで「ドイツのような輸出国は、その製品の輸出経路の安全を、必要ならば軍事力を用いても、確保する必要がある。」と言ってしまった。これは戦争嫌いのドイツでは、受けが悪かった。とりわけマスコミが忠実にこのインタビューを引用しないで、「大統領、ドイツの利益の為に戦争を擁護する。」とやった。大統領は輸出経路の安全を求めただけで、「ドイツの利益ためなら、戦争もやむを得ない。」と言ったわけはないが、政府を批判する機会を待っていた野党にはちょうどよい攻撃目標となった。

大統領への批判はあらゆる方向からやってきた。緑の党などは「戦争政治」を行っていると非難、さらにはアルツハイマーに罹って早期に大統領から辞任したLuebke氏と比較した。大統領への非難が上がると通常は、大統領を推している政府与党から援護射撃があるもの。ところが大統領の政府非難で気分を害していた為、大統領を孤立無援で雨の中に一人で置き去りにした。これに怒ったのか、それとも野党の中傷に傷つけられたのか、あるいはその両方か、Koehler氏は辞意をマスコミに伝え、その前に一応、仁義を切って辞任の意向をメルケル首相に伝えた。ここで始めて、「今、辞められては困る。」と首相は悟り、なんとか大統領を翻意しようと頑張ったが、すでに「矢は撃たれた後」だった。翌日、記者会見をして辞意を表明する大統領の表情は険しく、「大統領の地位に対して尊敬が欠如した非難の為、辞意を決断した。」と語った。

さて、ドイツの法律では、大統領が辞任すると30日以内に新大統領を選出しなくてはならない。戦前のようにヒンデンブルク大統領が死去したので、ヒトラーが首相と大統領を兼ねて総統に就任したように、「メルケル総統」というわけにはいかない。ドイツはちゃんと過去の失敗から学んで、首相と大統領は兼任できないようになっている。こうして政府は、日本政府同様に、新しい大統領と財政赤字対策の大問題を1週間で、「解決」する必要に迫られた。当初、政府は労働大臣で秀逸な頭脳を持つvon der Leyen女史、あるいは大蔵大臣を大統領候補に考えていたが、前者は(また)FDPからの反対でボツ、後者は「Bellevue(大統領の居城)で一体、何をするんだ。(何もする事がない。)」と(正直に)告白したので別の候補を探すことになった。こうして落ち着いたのが、「害のない人物」(退屈とも言う)として知られる現ニーダーザクセン州知事のWulf氏。ヴルフ氏は心底ではメルケル首相を追い出して、自身が党首兼首相の座に就くことを夢みていたが、この陰謀に加わっていたBaden-Wutremberg州知事のOettinger氏は城(州知事のポスト)を取り上げられ、EU議会に参勤交代させられた。同じ仲間のNRW州知事のリュトカー氏は(ここでも紹介した通り)、州選挙で敗戦、実権を失くした。最後の陰謀仲間として残っていたヘッセン州知事のコッホ氏は、政治にやる気をなくして辞意を表明すると、ヴルフ氏は孤立無援化した。そこに「大統領をやってみないか。」という提案が来ると、二つ返事で了解した。

残るは財政赤字対策。ここでもドイツ政府は日本政府同様に、「増税」という言葉を避け、「税制改革」にて財政赤字に対処すると発表した。具体的には生活保護を受けている人への補助金のカット、子供をもうけた夫婦への補助金を減額、ドイツ発の航空チケットに対しての課税、核エネルギーへの課税などである。こうして800億ユーロを節約するという。ドイツでは人口の10%にあたる裕福層が国の総財産の60%を保有しているが、これは裕福層が税金を支払わないで済む制度が目白押しの為。それどころか金持ちは所有地を「休耕田」と申請すれば、何もしないでEUから補助金が出てるので、お金が増える一方で笑いが止まらない。ところが中間層への負担は増え続け、平均取得は減少を続け、貧困層へ転落するケースが多い。こうして裕福層と貧困層の隔たりが広がる一方だが、今回もツケを払うのは、その中間層と貧困層で、裕福層は一切犠牲を要求されていない。

この税制改革案に対しては、野党だけではなく、与党からも非難の声があがった。実際の所、CDUは裕福層への増税を考えていたが、国民皆保険改革を闇に葬られたFDPの「仕返し」に遭い、この案はボツになった。FDPの仕返しはこれだけで済まず、倒産をかろうじて逃れたオペルへの財政援助に関して、「国はオペルの建て直しに対して、保証を拒否する。」と経済大臣が記者会見にて発言したが、どうもメルケル首相には事前に相談されてなかったらしい(仕返しだから、当然と言えば、当然)。この経済大臣の発言を聞いた首相は自ら記者会見を開き、「オペルの件ではまだ最終決定はされていない。」と、つい数時間前の経済大臣の声明を100%否認した。面子を潰されたFDPは、月末の大統領選挙でヴルフ氏への投票を拒否して、野党が立てた大統領候補に投票すると言い出す始末。まさに子供の喧嘩。困ったのはヴルフ氏だ。与党がかろうじて過半数を確保しているから大統領候補になる旨承知したのに、これでは大統領選挙に敗れて、「ただのおじさん」になりかねない。そこでヴルフ氏は、「大統領選挙の結果を見てから、州知事の地位をどうするか決める。」と言い出した。

もし月末の大統領選挙で本当にヴルフ氏が敗北するような事になれば、連立与党の終わりとなるかもしれない。そうなれば久々の大スキャンダルなので、ドイツの政治に興味のある方は、ワールドカップのサッカーの片隅で、ドイツの大統領選挙の行方を注視しておいてください。


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怒りの辞任会見をするKoehler大統領。


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現ニーダーザクセン州知事で大統領候補のWulf氏。


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SPDと緑の党が押す大統領候補 Gauck氏。


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