環境先進国 (17.08.2008)

ドイツは宣伝が(日本政府に比べて)うまい。どこかで紛争が起きると、一方には武器を売り込み、(双方に武器を売るとアメリカからチェックが入るので)もう一方にはミサイルの攻撃に耐えるシェルターを売り、早く紛争を終えるようび呼びかけて平和の国というイメージを売っている。先週まで戦われたグルジア紛争で、グルジアの特殊部隊が使用した武器は、ドイツ製だが、誰がこれを問題にしただろう。それどころか、ドイツの首相はグルジアまで飛んで、平和の使者のイメージ売りに熱心だった。そこで、今回はドイツのうまい宣伝の例として、ドイツの環境政策を取り上げてみようと思う。

この記事を書く前にGoogleで「ドイツ、環境保護」のキーワードで検索してみた。真っ先に出て来るのはドイツの環境省のWEBサイトで、「ドイツは環境先進国」と謡ってある。これではいかにも手前味噌なので、他のWEBサイトも見てみるが、「ドイツは環境大国です。」とか、「環境先進国ドイツに学ぶ」というポジテイブな内容の書き込みで一杯。その反対を掻いた書き込みが見つからなかった。しかし、本当にそうなんだろうか。ドイツは宣伝が上手いので、表面(ドイツ政府発表)だけでなく、もっと深く掘り返してみれば別の姿が見えてくるかもしれない。

ドイツで(高い)ガソリンを買うと、デイーゼルのほかにBenzin(レギュラー)、Super(ハイオク)、Super+(ハイオク+)の3種類がある。レギュラーとハイオクにはBiospritあるいはBiokraftstoffと呼ばれる農産物から採取したエネルギー(エタノールや植物油)が5%添加されている。ハイオク+にはこの余計な添加物が入っていないので、当然、エンジンの性能はフルに発揮されるが、税率が高く設定されており一番高いガソリンで、一番売れないガソリンでもある。ガソリンに環境にやさしいはずのBiospritを加えることにより、ガソリンの消費量を下げ、環境を保護するというのが政府の大きな目標なのだが、これは実に怪しげな環境保護政策だった。Biospritはガソリンに比べて燃焼率が悪く、ガソリンよりも有害な排気ガスを出す。これでは環境対策どころか、環境汚染である。又、Biospritは車の廃棄系統(触媒)への負担も高く、燃料ポンプやマフラーは早めに交換を迫られることになる。早い話がBiospritをガソリンに混ぜることの利点がほとんどない。にもかかわらず政府は、石油への依存率を下げることを最上課題として、2009年からBiospritの割合を10%まで上げると政令を出した。

これに大反対をしたのはドイツで大きな影響力を持っている自動車クラブADACだ。ADACによれば、古い型のエンジンは、10%の添加物を処理(燃焼)する能力がなく、エンジンの故障を避けるためには高いハイオク+を入れる事を余儀なくされてしまうとの事。政府は影響力のあるADACのコメントを無視する事ができないので、「車のメーカーから10%の添加物なら問題ないとの回答をもらっている。」と反論。実際、車メーカーは政府にそのような報告をしていたのだが、実はこれは古い車を廃棄処分にさせて、新しい車に買い換えさせる為の戦略だったことが判明すると、政府は歯軋りしながら、この政令を撤回せざるを得なかった。

さらに疑問に思えるのは、Biospritの生産、調達方法だ。通常は、小麦などの農産物を生産している畑をBiospritの生産に切り替える。これにより食物の生産量は減り、ただでも上昇中の食料費を押し上げる結果になる。そのいい例がとうもろこしだ。とうもろこしは家畜のえさになっていたのに、これからBiospitを生産した為、世界中で農産物が不足、2008年は農産物の価格が爆発した。つまり怪しげな環境保護のために、食料品の値段は高騰して、世界中で飢える人が急増したのである。こうした点を考慮すると、Biospritの生産自体が疑がわれる。その顕著な例をひとつ紹介しよう。

世界の酸素の供給源として、又、自然破壊の象徴してブラジルのアマゾンが有名だが、ブラジル同様に、増大する二酸化炭素の触媒機能を果たしているのはインドネシアである。特にスマトラ、ボルネオ島などは大自然が残っており、先進国が排出する二酸化炭素を吸収して、酸素に変えていた。ところが、ここでも自然の大破壊が始まった。この先頭に立っているのが、環境先進国のドイツである。ドイツ国内でのBiospritの(無理やり作った)需要を満たす為、インドネシアの会社に政府の補助金を湯水のように注ぎ込み、ジャングルを切り開いて、広大なパーム(ヤシ)油農園を作らせた。この自然の破壊は今でも続いており、毎年(インドネシアだけで)300余りのサッカー場が収まるほどの自然が破壊されている

その結果、これまで二酸化炭素を吸収していたジャングルがなくなり、Biospritとしてのヤシ油の生産が始まったので、環境汚染は加速している。しかし、環境大国のドイツ政府はそんな事は一向にお構いなく、現地に役人を派遣、やし油の生産量を上げるように要請している。農産物が不足して農産物の値段が上昇しているのに、ドイツ国内の田畑で取れる小麦や砂糖大根からBiospritを生産、足らない小麦を食用に外国から輸入している限り、全く意味のない政策だが、これはドイツだけの問題だった。しかし、ドイツ国内でのBiospritの需要を満たすために、インドネシアの自然を破壊しているのでは、世界的な問題だ。ドイツ政府の行為は、ブラジルで牧畜に必要な土地の確保の為にアマゾンを焼き払っている農家と変わらない。そのような政策を推進している国を、環境先進国とは言えないだろう。


193.jpg
インドネシアのPalm農園で、


194.jpg
採れたヤシの実は、


195.jpg
ドイツのガソリンスタンドで売られています。           


スポンサーサイト

COMMENT 0