Bahnsinn * (04.11.2008)

この所(面白い)出来事が多くて、毎週更新しても、とてもすべての出来事を紹介できない程。見出しだけでも紹介してみると、欧州議会がシュトラースブルクで開かれる度に、売春婦が付近都市からこの町に大結集、ホテルが大繁盛していることに(女性の)欧州議員が正式に抗議を出した件など、国家によって売春を合法とする国(議員)と違法とする国(議員)の違いがわかって微笑ましい。あるいは、ドイツで最も裕福な女性として有名なKlatten女史が、スイス人のジゴロにひっかかり、750万ユーロ恐喝されてしまった件など、細部まで紹介できれば案外、好評を得るかもしれない。ただこうした事件はあまり品がないので、今回はドイツ鉄道(Deutsche Bahn)のスキャンダルについて取り上げてみようと思う。

最近、ドイツに来られた方は否応無く気づかれたかもしれないが、ドイツの誇りICEは総点検中だ。ここでも7月に紹介した通りICEが時速300kmで走行後、車軸が折れて電車が脱線した。当初ドイツ鉄道(以後、DBと略)は、緊急停止レバーを引いて事故を防いだ乗客を、車軸が折れた原因の張本人にしたてあげようと、警察にAnzeige(被害届け)を出し、この犯人探しを始めた。ところがこの犯人が休暇中にDBで旅行中のDBの職員であることが発覚すると、DBはこっそりAnzeigeを取り下げた。その後、ICE車両(第三世代の新しい車両)はすべて車軸の点検を受ける為、運行を停止した。その結果、電車の多くが欠落して乗客の不評を買ったが、時速300kmで走行中に車軸が折れて脱線するよりは、検査の為に電車が欠落する方がいいと(ドイツ人らしく)合理的に判断、苦情はあるにはあったが、日本のような大騒ぎにはならなかった。

その後、検査では他の車両の車軸に亀裂が見つからなかったので、DBは車両の運行を再開した。ただし、連結する車両の数を少なくしたり、最高速度を落として走行するなどの安全策を取った。これが幸いした。10月の定期検査では、点検車両の車軸に亀裂が見つかり、7月の事故は一回切りの例外ではないことがはっきりした。しかし、ここで車両をまた検査に送るとダイヤが大幅に乱れて(来年の株式上場を前に)、イメージの失墜は避けられない。そこでDBは車両を製造しているジーメンスにテクニカルサポートを求めるが、ジーメンスは「弊社の製品は最新の技術を駆使して製造されています。」というまさにドイツらしい(自社の製品を褒めるだけで、責任を回避する)回答を送ってきた。そこでしぶしぶDBは車両を自社負担で精密検査に送ることにした。すると相次いで車軸に亀裂が見つかってしまう。結果、DBは車軸の総点検を行うことを決定、これにより数多くのICE車両が脱落、ダイヤは現在でも大幅に乱れている。尚、この検査は2009年2月まで続くので、当分の間は通常の運航に戻る事はなさそうだ。又、検査が終了しても、肝心の問題、車軸の欠陥がなくなるわけでもないので、この問題はDBが株式市場に上場されても当分は続きそうだ。

この問題が議論されている真最中に、ある新聞がDBのトップが株式上場のドサクサにまぎれて取締役員全員のお給料を(手前味噌で)20%アップ、さらには株の上場価格次第で社長のMehdorn氏に140万ユーロものボーナスを払うことを内定したと報道すると、これまでは電車の遅れに我慢していたドイツ人も流石に怒った。労働組合は、先の労使交渉で14%の給与アップしか勝ち取れなかったので、「次回の給与交渉では最低20%+ボーナス支払いを要求する。」と声明を出す。また、市民の怒りの大きさに驚いた交通大臣のTiefensee氏は、「この件は寝耳に水。」と声明を出し己の責任を回避すると、秘書官を「DBの取締役に対するボーナス支払いについて大臣への連絡を怠った。」として即日クビにした

ところがその後の調査で、Tiefensee氏はすでに8月にこのボーナス支払いについてクビにした秘書官からすでに連絡されていたにもかかわらず、何も措置を取らなかった事実が出てくると、非難の矛先は交通大臣に向けられた。大体、氏の評判は以前から芳しくなかった。元々、実力で大臣についたのはなく、「東ドイツ出身の大臣が内閣に一人も居ないと、東ドイツ住人に悪い印象を与える。」というのでLeipzigの市長であった氏をいきなり交通大臣に祭り上げたのだから、無理もない。ドイツ国内でテロの危険性が高まり、駅が標的になる可能性が討議された際、「(何もする事がなくて、大量に存在している)失業者を駅の監視に使えばいい。」と発言して笑い者になったりと、やはり国政レベルの政治を担当できる器にない事を度々証明している。そして今回は自身の責任を回避する為、秘書官を人柱としてクビにしたのであるから、立派な政治家だ。(氏がクビにした秘書官は今回が3人目。)

当然、野党からは氏の辞任を要求する声が高まっているが、氏は9月になるまで何も知らなかったと言い張り、DBの取締役に「ボーナスを自発的に諦めなさい。」と圧力をかけ始めた。ところがDBにしてみれば8月にこれを決定した時にはOKしたのに、今になって白紙に戻せとは朝令暮改にもほどがある。おまけにボーナスが出ないなら、DBのイメージなど二の次。そこでMehdorn氏はテイーフェンゼー氏の言動を非難するという逆襲に出て、みっともない身内の争いを展開している。テイーフェンゼー氏は、まだ(同じ東ドイツ出身の)Merkel女史の後ろ盾もあり、大臣の席に納まっているが、今後の事態の発展次第では辞任に追い込まれかねない状況で、大臣の椅子はまだまだ揺れ続けている。

*Wahnsinnをもじった造語。Rinderwahn(狂牛病)で知られる通り、Wahnは気違い、狂気の様を表す形容詞。Wahnsinnはその名詞で狂気沙汰という意味。

凸凹コンビ。


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