ドイツ鉄道

何度かここで紹介しているドイツ鉄道(以下DBと略)の活躍、またもや社長のメドン氏が、相も変わらず面白い話題を提供してくれた。これだけ話題提供に熱心な会社はEADSくらいしか見当たらない。今回のスキャンダルも、これまでのスキャンダルに決して劣らない一流物。ドイツ滞在者だけで楽しんでいてはもったいない。是非、日本の方にも楽しんでもらいたい。

ドイツの企業では大から小まで、汚職が蔓延している。著者が旅行代理店に勤めていた頃、セールス行った日系企業では担当のドイツ人が、商売の引き換えに個人的賄賂を要求してきた。(横に座っている)日本人マネージャーがドイツ語を解しない為、会合の場で堂々と賄賂を求めてくるその度胸には、シャッポを脱いだ。比較的小さな取引でこの有様だから、でかい企業の内情は推して知るべしだろう。DBのような大きな会社では、線路の修理をどの土木業者に依頼するか、新しいバーンカードの宣伝をどの会社に依頼するか、会社内で使用するコンピューターを何処から買うか、とにかく自分の立場を利用して一財産築くチャンスがとても多い。DBのトップでもこの慣習は把握していたが、証拠が無い限り、社員を首にする事ができない。そこで証拠を調達する為、外部の探偵事務所に調査を依頼したのだが、この探偵事務所がかなり曲者。この会社(Network Deutschland GmbH )は、かっての東ドイツのStasiで働いていた諜報員が壁の崩壊後、西ドイツで作った会社で、言うまでも無く諜報サービスを提供している。この会社はその諜報の腕に関してはかなり定評があり、ドイツ テレコムや大手のスーパーなど、ドイツを代表する企業から数多くの依頼を受けていた。

DBがこの会社に社員の汚職を調査する為、この会社に仕事を依頼したのはもっともな話。このニュースがマスコミに漏れると、「汚職の疑いがあって内部調査をしただけで、何も違法なことはしていない。」とDBは、正当防衛を試みた。ところが、次第に調査の実態が明らかになってきた。それによると調査の対象になった社員の数が数千人に昇り、「流石にこれはやりすぎではないか?」、との声が大きくなってきた。この時点ではまだDBも「(大量調査は)必要であった。」と弁護、事情に詳しい評論家も「DBでは牽引電車が盗まれたこともあり、内部の汚職は特にひどく、この処置もある程度理解できる。」というコメントを出していた。ところが翌週にはなると調査をされた社員の数が数千人から、数万人に昇り、理解を示す人は少なくなった。これを幸いに、野党がメドン氏の辞職を要求してきたので、まだ国営企業であるDBに対して直属の上司にあたる交通大臣のTiefensee氏は、「隠し事をしないで、これまでに行った調査の内容をすべて公開せよ。」と要求した。流石にやりすぎたと悟ったメドン氏は、社員に対して公式にこの行動を詫び、「これ以上、このスキャンダルが広がる事は無い。」と宣言した。

ところがこれでスキャンダルが収まるどころか、さらに悪化した。翌週には、DBは数万人ではなく、173000人の社員全員とその家族に対して、それも再三にわたって調査をしてきたことが明らかになった。再三にわたって面子を潰された交通大臣は、「メドン氏のこれまでの釈明は、とても満足できる物ではない。」と直接に非難、「社長の椅子が危うくなったメドン氏は、社員に濡れ衣を着せて首にしたが、そのくらいでは政界からの圧力を交す事ができず、今、窮地に陥っている。問題の焦点は、「誰がこの大規模の調査を指令、許可したのか。」という点だが、メドン氏は「そこまで知らなかった。」、と釈明している。これほどの大規模の調査を社長が知らないで、どこかの部署で勝手に行えるわけもなく、メドン氏が関与していたのは間違いない。しかし頑固親父のメドン氏が、「はい、私が指示を出しました。」と言うわけもなく、今、社内で犠牲者探しに賢明。又、政界でもこの問題児を処分してしまいたい所だが、メドン氏の契約は2010年に切れる。これ以前に解雇すると、国は膨大な契約違反金を払わなければならない。そこでかろうじて首の皮が一枚繋がっている状態だ。

DBのイメージをさらに悪くしたのは、運行中に電車の車軸が折れて電車が脱線した事件。電車を製造しているジーメンスから車軸の安全性に関して一向に返事が来ないので、車両の数を減らして、又、スピードを落として安全運行する羽目になり、遅れが相次いだ。頭にきたメドン氏は、DBのこれまでの歴史で最大級の電車の注文(800台)を、ジーメンスではなく、ジーメンスのライバル会社であるカナダの企業に流して、復讐した。ドイツの(半)国営企業が、つまり税金を使っての注文を、ドイツの企業を避けて外国の企業に行うのだから、これは異例の出来事だ。これが効いたのか、ジーメンスは製造上の誤り(強度不足)を認め、車軸の再生産に入った。つまり、ドイツで走っているICE車両、下手をすればジーメンス製の車軸を総入れ替えする事となり、電車の運行プランの回復が、今年の夏まで遅れることとなった。この為、夏前にドイツに留学されて、ドイツ国内をICEで移動される場合、電車の遅れを十分に計算して、移動のプランを立てる事をお勧めします。

追記。DBの株式上場のどさくさに紛れて、DBの取締役員が自分たちへの特別ボーナスを企画した一件だが、「経済不況の2009年にDBを民営化、株式市場で運営資金を募るのは危険。」と、メドン氏と交通大臣の意見が始めて一致。株式上場は2010年以降に延期され、取締役員へのボーナスも棚上げとなった。


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ベルリンに着くと歓迎してくれるBombardier社の宣伝。



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