Bye-Bye Mehdorn (03.04.2009)

毎回ここでいろんなニュースを取り上げているものの、なかなかその後の顛末を取り上げる事ができない。そこで今回は、以前にここで紹介した記事の展開について紹介してみようと思う。まず最初は1月前にここで紹介したドイツ鉄道のスキャンダル。このスキャンダルを究明する委員会が設置されて調査が進むと、出てくるわ、出てくるわ、メドン氏が言う「社員の汚職調査」はさらに大規模に、また頻繁に行われている事が判明した。おまけに2008年に泥沼化した労働組合員との闘争で、労働組合員が者煮のコンピューターから送信したメールを削除して、ストへの呼びかけを妨害していたことが明らかになった。これを知らされた労働組合は一致して社長の辞任を要求するが、「法律に触れる事をしたわけでもないのに、何が悪いのかね?辞意?辞めるつもりは毛頭ない。」とメドン氏。流石はドイツ一の頑固者。ところが、今回はこれまでとは事情が異なっていた。

2009年は大選挙の年である。ドイツ鉄道のスキャンダルがあまりに頻繁に新聞のヘッドラインを飾ると、メドン氏を社長に押していたCDUの選挙結果に悪影響を及ぼしかねない。一般市民の間でもメドン氏に対する不満が広まり、世論調査では70%の市民がメドン氏の辞任を適当とみなす結果が出ると、不況への消極的な対処で人気を失いつつあるメルケル首相は、「これ以上の危険は冒せない。」と判断、週末にメドン氏に圧力をかけた。こうして3月30日にメドン氏は、辞職を告げることとなった。面白いのは、通常は批判的なコメントをするメデイアの報道。これまではメドン氏を散々こき下ろしていたメデイアだったが、辞意を表明した者を侮辱するのはふさわしくないと判断したのか、大幅、好意的な報道を行っていた。

ドイツ鉄道は民営化される前は典型的な国営企業で大赤字。社内には汚職が蔓延しており、ドイツ鉄道の民営化は成功するとは思われていなかった。ところがメドン氏はこの万年赤字の会社を立て直し、汚職を(ある程度)追放、(2007年から)黒字出す会社に、8年と経たないで、「立て直した」のである(採算性の悪い路線は廃止、金がかかるだけで収入の増えない路線の修復は棚上げ、ただし値段は毎年大幅にあげていった)。これには荒いほうきでもっての大掃除が必要であり、メドン氏は正に適材適所の人材だったのかもしれない。大掃除が終わって、ドイツ鉄道が株式会社に発展していく過程では、荒いほうきを持った人間は嫌われるようになったが、これに気が付かないで、これまでのようにドイツ鉄道を管理(掃除)して行こうとしたメドン氏は、すでに適材適所ではなくなっており、使い古したほうきのように、もっと決めの細かいほうきと取り替えられることになってしまった。ある意味、気の毒でもある。ただし任期が切れる前の辞職なのでたっぷり退職金が出て、今後は悠々自適の老後を送ることができて、この痛みも癒し安いのではあるまいか。

次のテーマ。1月に政府が閣議決定、2月からドイツで景気対策の一環として導入された車のスクラップ奨励金だが、これは稀に見る大ヒットとなった。当初、政府は用意した補助金は年度末まで足りると考えていたが、すでに4月には底をついてしまうことが明らかになった。そこで政府は破綻しかけている車産業を救うため、このヒット商品の延期を決定、奨励金申請の条件を緩和して、2009年の年末までに奨励金を申請すれば、誰でもこれが受給する事できるようにした(今年は選挙の年)。もっとも奨励金の金額は夏になる前に減額されるらしい。3月末からはこの報奨金の申請はインターネットでのみ可能になったが、減額される前に全額の奨励金をせしめようと、初日には申請者が政府のWEBページに殺到、サーバーがダウンしてしまい、あれから3日たった今日でもまだ完全には回復していないとうい盛況振り。尚、ドイツのニュースによると英国政府に次いで、日本政府もドイツの真似をしてこのスクラップ奨励金の導入を検討しているとか。どこまで根拠のある報道かわかりかねるが、もし本当に日本政府がこの制度の導入を考えているなら、ドイツの事情に詳しい人間を調査に派遣すべきだ。ドイツでは消費税が19%と高いので、2500ユーロの奨励金を払っても、消費者が13000ユーロの新車を買ってくれれば「元が取れる」。日本のように消費税率が低い国では2500ユーロ相当の奨励金を払ったら「ペイ」しない。かと言って奨励金額を削ってしまうと魅力がなくなり、折角の景気対策も不発に終わってしまいかねない。

尚、このスクラップ報奨金の「おこぼり」をほとんど受けてないBMWやメルセデスは、工場閉鎖の危機にまで発展している。VWやよりによってあのオペルが需要に供給が追いつかないので、残業に残業をして車を生産、販売しているのに、BMWは四半期の儲けが去年比で90%も割り込んでしまった。メルセデスも似たり寄ったりの厳しい状況で、週の労働時間を35時間から30時間に減少、すでに労使間の交渉で決定されていた給与アップを12月に先送りする事で経費を節約すると発表した。面白い発展を見せているのはポルシェ。車の売れ行きは減少しているのに、儲けは増え続け、儲けが売り上げよりも大きいという不思議な現象が起きている。これは1月にここで紹介したように、VW株のお陰で、VW株が1000ユーロを超えた際、ポルシェはこれを売りまくって大儲けした。こうしてポルシェは国のスクラップ報奨金の恩恵なくとも、株式取引で得た儲けでこの危機を乗り越えることができそうだ。この離れ業を成し遂げたポルシェのWiedeking社長は2008年に1億ユーロもの給与をもらったが、その価値があったのかもしれない。

最後に3月にここで紹介したドイツの伝統車メーカーOpelの命運だが、すっかり選挙戦のテーマとなってしまった。3月の時点ではCDUの政治家が「オペルだけ例外扱いをする事はできない。オペルは会社更生法を申請すべきだ。」とに発言、オペル及びオペルの下請企業の労働者の怒りを買う。ここで次期首相対立候補のシュタインマイヤー外務大臣がオペルの工場を訪れて、「国はオペルを救うべきだ!」とやった。この結果、3月の世論調査ではCDUは支持率をさらに2%落として過去最低を記録、SPDは逆に過去最低から上昇して支持率を2%上げた。9月の総選挙で勝利して、首相の椅子に座り続けたいメルケル首相は、「負けてははならず。」と、3月末にこれまたオペルの工場を訪問、「政府の金で助けることはできないが、投資家を見つけて、オペルが存続できるようにする。」と、他人のまわしで相撲を取った。オペルの命運は米国の親会社GMが救われるかどうかにかかっているが、親会社が5月末には会社更生法の提供を申請しそうな雲行きなので、オペルの運命も同様に非常にあぶなっかしい。ただ、米国と違ってドイツでは今年が総選挙なので、オペルは選挙戦の主要テーマと化して、救われる可能性は高い。実際、前政権のシュレーダー首相は、倒産しかけていた大手の建設会社に「鶴の一声。」で救援を約束、公的資金をつぎ込んで破産から救い、首相に再選された実績がある。たあだしその建設会社は1年ほど公的資金を使い果たし、結局、倒産した。


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敗北感を隠し切れない表情で会見に臨む。


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