Raubzug (密漁/密猟/乱獲) (17.07.2009)

ドイツ人にも苦手な食べ物がある。魚の干物と臭豆腐。ドイツ人は魚を捕獲すると鰻だろうが、鯖だろうが、Heilbutt(日本語の名前不明。)だろうが、肴の匂いを消すために燻製にしてしまう。だから干物など、魚の匂いがするものが大の苦手。間違っても日本で珍味の魚の干物をお土産で持参するのは辞めておこう。ついでながら、中国の珍味、臭豆腐も西欧人は大の苦手だ(日本人も苦手)。以前、「俺は何でも食える。」と威張って、タイの屋台でバッタのから揚げを食ったドイツ人が、台湾で臭豆腐に挑戦していたが、見事に吐き出していた。西欧人には生理的に受け入れられない臭いだったらしい。

話を元に戻そう。「魚は健康にいい。」、「日本人は世界一魚の消費量が多いので、あんなに長生きしている。」と宣伝された結果、ドイツでも魚の消費量が増えてきた。最初は英国名産のFish&Chipsのように(冷凍物の)魚をフライにしたもの(Fischstaepchen)だったが、段々、勇気を出して自宅で魚を料理するパイオニアも出てきた。もっともすでに3枚に卸して、皮を剥いだもの(ドイツ人は皮が嫌い。)か、鱗もとらないで単にぶつ切りにした物をフライパンで焼くだけ。ちょうど日本で明治初頭の肉料理の黎明期に匹敵する。それでも魚の消費量は増加する一方で、魚不足が生じてきた。

(当時は)「腐るほど」大量に取れて値段の安かったKabeljauは、この需要を満たすのに、ぴったりの魚。北海はKabeljau漁に沸いて、消費者は安い魚のフライを食べることができた。ところが無尽蔵と思えたKabeljauの数が80年代から激減してきた。それでもそのまま漁を続けていたが、流石に魚が絶滅の危機に陥ると、北海での捕獲が禁止された。しかし、禁止されても漁は続いた。ポーランドやスペインなどでは、漁を禁止したら自国の漁師に代わりになる仕事を提供できないので、違法の漁を見て見ぬ振りをした。又、EUに属していないロシア国籍の漁船は、捕獲禁止地域でKabeljauを大量に捕獲、これを自分では捕獲できないEU諸国に売って大儲けをしている。これで大損をするのは、ちゃんと禁止令を守っているドイツの漁師。こうしてKabeljauは捕獲禁止にも関わらず、未だに捕獲されて絶滅の危機にさらされている。ドイツの会社もこの違法に捕った魚を買い上げて、魚のフライを作り続けているので、無罪ではない。

さらに魚の食材としての人気が出てくると、北海の密漁だけでは到底足りなくなってきた。特に日本料理の人気が広まるに比例して、マグロの人気も急上昇した。欧州では地中海がマグロの漁場として知られているが、ここでは乱獲が続いて絶滅寸前の状態にある。(悪者は言うまでもなく、日本人になっている。)この結果、消費量に捕獲量が追いつかず、マグロの値段が高騰してきた。するとこれまでは缶詰にしかならなかったマグロを密猟して、欧州や日本に売れば一儲けする事が可能になった。こうして世界中のトローラーが捕獲制限のない、あっても誰もチェックしないアフリカ沿岸に集結、片っ端から魚という魚(ちなみに西海岸はロブスターの産地としても有名)を捕りまくった。地元の漁師は成す術なく、鼻の先で自分たちの魚が捕られて行くのを見るしかなかった。数年後には魚はあらかた捕獲されて、地元の漁師は漁に出ても、魚を捕獲できず、生活が困難になってきた。怒った漁師は武器を買い、近辺を通過する船を捕獲して身代金を要求するようになった。こうしてソマリア沖では「海賊」が出現、片っ端から輸送船を「捕獲」しているが、これは西側諸国の自業自得だ

西側諸国は海賊対策としてソマリア沖に海軍の駆逐艦を派遣したが、駆逐艦がパトロールしている横で、赤錆で今にも沈みそうな中国のトローラーが魚を違法に捕獲しているのを静観している。この光景ほど西側諸国のダブル スタンダードを明確に示す光景はない。一方ではソマリア沖の海賊を声高に非難、駆逐艦を送って監視させて、その一方では違法の漁に目をつぶり、原住民の生活の基盤を奪っている。ちなみに、「どうして違法に漁をしているトローラーをコントロールしないのですか。」と記者団に聞かれたドイツの国防大臣は、「海軍に、適した装備がない。」と回答していたが、海賊を撃退できる装備があって、網だけで「武装」しているトローラーを捕まえる装備がないとは、なんとも不思議な回答である。ちなみにアフリカ沖合いで漁をしている中国国籍の漁船は、採った魚を解体、冷凍、梱包して「Made in China」と表示すると、「ぶつ」を買いに来る西欧の仲買人(通常はスペイン人)に洋上で販売、積み荷を移動させると、再度、密漁に向かっている。こうしてアフリカ沖で密漁された魚は、中国産に「化ける」わけである。

尚、中国の漁船はアフリカ沖だけではなく、南アメリカ沖でも大活躍している。ここで取っているのは主にサメ(のヒレ)。絶滅の危機に瀕しているにもかかわらず、賄賂に弱い南米の役人を手なずけると、堂々とサメを捕獲、まだ生きているサメからヒレだけ切り取ると、断末魔の苦しみでもがいているサメをそのまま海に放り捨てている。一度、この光景を見れば、「今日は高級フカヒレスープよ!」などど浮かれて、スープを注文する気はなくなる。又、台湾では(多分、中国でも)ジンベエザメが食材として人気がある。この為、マレーシア沖合いでは、捕獲禁止にも関わらず密漁が盛んである。日本も鯨を捕獲している*手前、他の国を非難できた立場でないが、(鯨と違い)絶滅の危機に瀕している動物を、ただ金儲けの為に見境なく捕獲するのはえげつない。

又、密漁は何も海に限ったことではない。インド、タイやミヤンマーの山奥では虎の密猟が後を断たない。虎の○○○○や骨は中国では精力剤として抜群の人気らしく、折の中で虎を育てると、屠殺して、精力増強剤として販売している。それだけでは中国、台湾の需要を満たせず、ドイツの動物園やサファリパークでも虎の数が増えると、これを屠殺して、中国に輸出している。しかし野生の虎の○○○○は、折の中で育った虎の物よりも効力があるとされ、野生の虎の密猟につながっている。ドイツのテレビ番組でジンベエザメや虎の解体作業が報道されると、「中国や日本では、、。」と、日本も同罪とされているので、あまり気分が良くない。翌日、ドイツ人に会うと「日本人は虎の○○○○を、、。」と、非難されるからである。「テレビの嘘だよ。」と言っても、虎が解体される光景を見ているので、信じてもらえない。21世紀の今日、動物を殺さなくても、バイアグラ、チアリス、レビトラ(Bayer社、ドイツ製)など、幾らでも方法はあると思うのだが。精力(享楽)の為に、絶滅に瀕している動物を殺すのは、実にえげつない行為だ。

折角ここまで書いたので、別の乱獲についてもここで指摘しておきたい。ドイツではチーク材の椅子やテーブルを庭やバルコニーに置くのが流行っている。以前はプラスチック製の椅子だったが、ドイツ人の大好きなBaumarkt(日本で言えば、ホームセンターを合わせたようなもの。)で、木製の椅子が安く販売されると、皆、隣人に見せつける為にプラスチックの椅子を捨てて、チーク材の家具を揃える様になった。家具に加工された木材が何処で、どの様に収穫されたのか、関心を持つ人は少ないないが、これらの家具になっている木材はカンボジアやラオスで違法に切り倒された木材だ。カンボジアの経済はベトナム人に握られているが、カンボジアの役人は賄賂に弱いので、ベトナム人の木材業者の好き放題だ。ラオスに至っては陸軍の将官に賄賂を送って、軍隊の監視の下、堂々と国立公園で木材を切り倒して、ベトナムに輸出している。この結果、ドイツ人(他の国でも同じだろう)のエゴを満たすために、アジアで森林が破壊されている。

密漁、密猟、乱獲に効果的に対応する方法はひとつしかない。それは我々消費者が値段だけ見て、「これ安~い!」と感激して購入するのではなく、どこでどのように収穫されたものなのか、意識して品物を買うことだ。サメの無残な死に方を見ていれば、浮かれてフカヒレスープを注文する人は少なくなるだろう。フカヒレが売れなければ、密漁しても儲からないので、密漁は自然と減少していく。又、消費者が違法な手段で捕られた品物を買わなくて済む様に、政府は原産国の表示を義務化して、これをちょくちょく試験調査する必要がある。ドイツでは食料品に関しては原産国の表示が義務化されているが、是非、これを他の分野にも広げて欲しい。

* 日本はちょくちょく捕鯨で世界から非難されているが、非難の対称とされているのは、その理由である。日本政府は「科学的な調査の為」捕鯨をしていると主張するが、こうして捕獲された鯨の肉がスーパーで売られているので、欧州人に言わせれば、「商用捕鯨」、つまり詐欺としか見えない。こうした汚い方法を(自分達は別の問題で同じ方法を採用しているくせに)欧州人は嫌う。又、IWC(捕鯨監視委員会)の会員に捕鯨に興味のないアフリカ諸国を加盟させて、過半数で合法的に捕鯨禁止を解除させようとする「努力」も、「日本は汚い手段を取る。」として非難される絶好の理由になっている。

1986年に捕鯨禁止が導入された際、日本がこれに同意したのは、「鯨の数が回復するまで捕鯨をストップする。」という条件だった。その後、日本は20年もこの協定を守ったのに、IWCは「捕鯨のストップではなく、全面禁止を目指す。」と目標をすり替えた。だからアイスランドやノルウエーは「約束が違う。」としてIWCから脱退した。ところが村八分を恐れる日本はIWCに残って、ここでなんとか過半数を得るべく無駄な努力を重ね、その一方で「調査捕鯨」をしているので、日本のイメージは悪くなる一方だ。今も昔も、島国の日本人は「空気を読む」センスがない。約束を破ったのはIWCなんだから、日本は堂々と論拠を挙げるべきである。こう書くと捕鯨賛同者のように聞こえるかもしれないが、著者は捕鯨が禁止されても個人的にはどうでもいい。しかし、日本代表の下手な交渉を見ると歯がゆくて黙って見ていられない。西欧人と戦うには、西欧人の使用している武器(論拠)で対抗する必要がある。交渉には肩書きで選ばれた田舎役人ではなく、西欧式の論拠で喧嘩のできる人間を派遣すべきである。


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中国の珍味 臭豆腐。


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英国の誇り Fish & Chips
 

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ドイツの珍味 魚の燻製




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