破局へまっしぐら! (24.07.2009)

ドイツでは「国は下手な企業家」と言われている。どこの国でも共通する事情だと思うが、政治家(や官僚)は、(自分の金ではないので)採算性を重視せず、選挙民に受けるかどうか、あるいは工事を請け負う会社からの賄賂に拠って決定を下す。いい例がドイツ鉄道やドイツ郵便。(多分、軍隊もこの範疇に入る。)必要もない人材、しかも使えない人材を大幅に抱え、首にする事がでないので、定年退職するまで給与を支給、退職後も高額の年金を支払い、会社の大幅赤字に貢献しているのが、税金なのでどうでもいい。改善する意思に欠け、民営化されるまで赤字経営を続けている。だから政府が会社を経営するのは極力避けるべきなんだが、それでも政府が企業家として介入して大赤字を出すケースが後を絶たない。

ここで何度か取り上げた通り、ドイツの州政府は地方空港を建設すれば、フランクフルトやミュンヘンなどの大空港から客を奪い、住民に空港での仕事を提供できて地元の活性化に大いに貢献して、かつ空港が収める税金により、州政府の財政再建に貢献してくれると「捕らぬ狸の気の皮算用。」。(最近流行のドイツ語ではwin-win-situationと言う。)そこで数億ユーロも大金(税金)を投資して、空港を建設、運営を開始してみると、大手の航空会社は利用客数が少ない地方空港を利用しないで、利用客の多い、フランクフルトやミュンヘン空港を引き続き使用する事を知って愕然とする。(何故、空港を建設する前に調べないのか?)こうして空港は完成したが、新空港に着陸するのは閑古鳥くらい。例えばHof-Plauen空港は、バイエルン州の最北部、バイロイトの北のHofという誰も知らない、人口が5万人にも満たない田舎街に作られたが、路線はフランクフルト空港までの国内線のみの寂しい内容で、1日3便しか出てない。しかも週末は完全にお休み。これで採算が取れるわけもなく、毎年1億ユーロを超える赤字を出している。大体、少し南に下った所にニュルンベルク(国際地方)空港があるのに、その隣に空港を作って、黒字経営になるとでも思ったのだろうか。Hofの街は人口から言えばちょうど、郷里の岡山の倉敷市ほどの人口。(山奥にある)岡山(国際)空港でさえかなりの地方空港なのに、さらに倉敷市に空港を作って、これがペイするわけがない。このツケを払わされるのはバイエルン州の住民である。

空港というと乗客が払う空港使用料で儲けていると思いがちだが、実際には空港内の施設、法外に高い駐車料金、レストランや免税店の敷地の店舗料、広告、そして貨物で儲けている。特に貨物は「金のなる木」で、貨物路線だけで空港は(ライプチッヒ空港のように)黒字を出すことができる。利用客が多いのに赤字経営の例を挙げるなら、Rheinland-Pfalz州、フランクフルトの西、マインツとトリアーの中間にあるHahn空港。利用乗客数だけでみれば4百万弱の利用客数で、ドイツで11番目の「大空港」、みなまで言えば岡山空港の3倍もの利用客数であるが、それでも大赤字を抱えている。(日本で新たに建設された数々の地方空港は黒字経営なんだろうか?)そもそもこの空港は不便な所にあるので、エアラインに人気がなかった。そこで空港を利用してもらうべく、空港使用料を大割引して航空会社を勧誘した。その甲斐あってアイルランドのライアン エアーに使用してもらうことになったが、かっての軍事空港の伝統を引き継いで、空港内には店舗はほとんどなく、駐車場も1日、2.5ユーロと安価の為、収入が少なく、赤字から抜け出せない。面白いのはこの空港の経営者が、フランクフルト空港を経営している会社(Fraport AG)である事。自社の主要収入減であるフランクフルト空港の横に、米軍が撤退して不要となった軍事空港を買い入れて、儲かると思ったのだろうか?何はともあれ、Fraport AGは赤字から脱出する為、利用客一人に付き3ユーロ(激安)の空港使用料を徴収すると発表した。ところがライアン エアーが「そんな料金を取るなら、他の空港を使用する。」と、脅しに出た。唯一の客を失っては元も子もないのでFraport AGは、空港使用料導入を見送った

ここまできてFraport AGはやっとこの地方空港で金を稼ぐのは無理だと悟ったようだ。一時は空港の閉鎖も考えたようだが(閉鎖すればフランクフルト空港の利用客が増す)、Rheinland-Pfalz州知事(SPDの党首の座から転がり落ちた)Beck氏は、これを聞いて真っ青になった。州で唯一の空港がなくなってしまう面子の問題と、空港で働いている従業員が職を失い、その鬱憤を9月の総選挙で晴らすことを恐れた。そこで州がHahn空港をFraport AGから買い取るという愚策に出た。空港の買収額が1ユーロという事実が、この空港事業に全く将来性のない事を如実に示しているが、州政府にしてみれば浪費されるのは税金なので、政権さえ確保できればそんな事はどうでもいい。今後、この空港が計上する大きな赤字を清算して空港の経営を維持する為、税金が大幅に投入され、州の財政が悪化するのは避けれない。これでも十分な時限爆弾だが、Beck氏はさらに大きな失敗をかました。

日本なら鈴鹿サーキットだが、ドイツならNuerburgring(ニュルブルクリンク)が、代表的なサーキット場。共通点は、どちらも田舎にあり、アクセスが困難な事。又、鈴鹿サーキット同様に、ニュルブルクリンクでも安全性で問題が指摘され、「もし今後もニュルブルクリングでF1を開催するなら、大幅に改善する必要がある。」と条件を付けられた。そこでドイツの面子にかけてニュルブルクリンクの改修にかかろうとしたが、肝心の金がない。そこでニュルブルクリンクのあるRheinland-Pfalz州が音頭を取って、日本の鈴鹿サーキットのようにレース場の横にテーマパークを建設、レース期間中だけでなく、1年中客を集めて、お金を儲けようとした。人里離れたEifelの山奥に、そんなテーマパークを作って十分な数の訪問者が来るかどうか十分な調査もせず、政治家の憶測だけでGo!サインを出し投資家を探し始たが、そんな危険な冒険に大金を投資しようとする投資家は見つからなかった。こうしてニュルブルクリンクの運命は風前の灯のように思われた矢先、米国からひょっこり投資家が現れた。州政府は大喜びして、ニュルブルクリンクの改修、及びテーマパークの建設にかかった。ところがテーマパーク完成間際になって、この投資家が姿をくらました。この「投資家」はどうも初めからマネーロンダリングが目的だったらしく、スイスの銀行に州政府が要求する金額を預けてお金を洗濯すると、綺麗になった金を引き卸して姿をくらましたのである。破綻しかけたプロジェクトに投資家が見つかったのが嬉しくて、そのバックを調査しなかったのが原因だが、州政府の大事業がマネーロンダリングの手段に利用されたと知れ渡るとRheinland-Pfalz州議会は、蜂の巣を蹴っ飛ばしたような大騒ぎになり、まずははこの事業の責任者である州政府の財務大臣が辞任した

F1の開催も数日後に迫っていた為、不足する資金は州政府が負担して無理やり新装オープンした。州知事のBeck氏は、「納税者には1セントもかからない。」と公言していたが、いつまでこの嘘が通用するか見物だ。州政府はこの大不況の余波で激減している税収入から、赤字空港と赤字サーキットの運営資金を捻出する必要にせまれている。勿論、テーマパークが空前の大人気になり、Hahn空港を利用する航空会社が増えれば、州政府の財政破綻は避けられるが、テーマパークを訪れるべき国民は不景気で金がなく、次回のF1は金不足の為、ドイツでは開催されない見通しである。さらに航空会社は乗客減で路線を削っている中、Hahnへの便を増設するとも思えない。こうしてRheinland-Pfalz州は、政治家が企業家として介入したお陰で、破局に向かってまっしぐらに猛進している。


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Ryanair 経営者のO'Leary氏。その宣伝方法は異色(常識外れ)だが、効果は覿面。



 
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