Komasaufen (08.01.2010)

昔は水道なんて便利なものがなかったので、飲料水を確保するのは死活問題。欧州では水を「浄水」する為に、添加物を加えてこれを醸造(アルコール消毒)して飲んでいた。数千年の間に体がこれに適応、アルコールを体内で分解する機能ができあがって、微弱なアルコールでは酔っ払わない体質になった。一方アジアでは、飲み水を浄水する際は、お湯をわかして(熱湯消毒)葉っぱを入れ、茶にして飲んだ。だからアルコールを分解する機能が備わっておらず、アルコールを摂取すると、すぐに顔が赤くなったり、ビール一杯(日本の)くらいですっかりご機嫌になってしまう。だからドイツ人と飲み比べなんか、しない方がいい。女性でもかなり「イケル」ので、アジア人では太刀打ちできない。

この結果、酒文化というか、酒に関する世間の態度(意見)も大きく異なる。例えば日本では酒は趣向品と考えられ、法外な酒税が課せられているが、ドイツではビールは「液体食料品」なので、たったの19%。具体的に見てみれば日本では1リットルのビールに222円もの酒税が課せられるが、ドイツでは安いビールなら1リットルが1ユーロ(税込み)で買えてしまう。つまり1リットルあたり26円程度の税金で日本の1/8。この結果、ビールはVolvicの水と差ほど変わらない値段である。又、日本では酒(アルコール)は贅沢品であるため、ビールを昼食の際に飲んだりすると、「昼真っから。」などと小言を言われる。しかしドイツではビールは液体食料品なので、ごく当然の事、昼間から飲んでも何も言われない。「じゃ、ドイツに言ったら、ビールをガンガン飲んじゃおう!」なんて考えていると、取り返しのない失態をさらす事になる。

冒頭で述べた通り、ドイツ人は少々飲んだ程度ではまったく酔わない。だから酒を昼間から飲むものOK。日本のようにいい年をした大人が酔ぱらって終電でひっくりかえったり、千鳥足で歩いている光景をドイツで見ることはない。だからドイツの会社に就職して、その歓迎会などで酒を飲む機会があると「酒は飲めないので。」と嘘を言ってでも、酒は遠慮した方がいい。日本のように「無礼講」とか、「酒の席の事なので」という習慣はないので、つい、自分のお祝いなので羽目を外して騒いでしまうと、就職初日にして出世の道は断たれてしまう上、「だらしない日本人。」と、陰口をコソコソ叩かれることになる。日本に旅行したドイツ人が、「日本人は酒を飲むと前後の見境をなくして、路上で大騒ぎをしている。」と、シーラカンスでも見てきたように驚いているが、これはドイツ社会では酔っ払うのはご法度な為。ドイツで就職される方は、くれぐれもこの点を忘れないようにしてください。

逆に高校生や大学生が酒に酔っ払うのはある程度、寛容されている。ドイツの高校の修学旅行ではトルコや(ドイツ人の大好きな)マヨルカ島に行くが、ここでは引率の教師の暗黙の了解のうちに、高校生が親の監視を逃れたのをいい気に大酒をかっくらっている。トルコのホテル経営者もドイツから高校生が修学旅行でやってっくると、バーの酒がからっぱになるまで飲むので、たっぷり酒を用意して待っている。こうした酒は往々にして自作品。つまり工業用アルコールを買ってきて、空き瓶にオリジナルの酒と混ぜたとんでもない代物。いくらアルコールを分解する機能が備わっているドイツ人でも、工業用アルコールには叶わない。また若気の至りで、前後の見境なく一気飲みするので、修学旅行先にて急性アルコール中毒で死亡する例が後を絶たない。これに比べれば、日本の修学旅行生が行う枕合戦などはかわいいもの。

ドイツ人の若者の酒乱は、何も修学旅行先や休暇先に限られたものではない。将来への不安感からか、それとも両親がだらしなく子供を教育できないからか、あるいはその両方が原因で、学校に行かず昼真っ赤らアルコールを煽っているケースが急増している。その結果、すでに小中学生のうちにアルコール依存症になり、病院送りになるケースが度々報道されると、「これではいかん。」という事で、未成年へのアルコールの販売が禁止された。この法律により売り上げ減少を心配したドイツの酒場経営者は、若者に向け安価な「飲み放題パーテイ」を主催、これが空前の大ヒット!酒場は若者であふれ、事前に申し込みをしないと入場できないほどの大盛況振り。誰かが金儲けのいいアイデアを出すと、これを真似する輩が出てくるのは自然の常。こうしてドイツ中の酒場で「飲み放題パーテイ」が開催されるようになった。こうしたパーテイはドイツ語でFlatrate-Trinken(飲み放題)、あるいはKomasaufen(昏睡になるまで煽る)と呼ばれ、毎晩、急性アルコール中毒で倒れる若者が相次いだ。

日本ならこうした愚行を行うのは男性が主だが、男女平等のドイツでは昏睡になって病院に収容される女性の数が、男性の数を上回っている。女性のほうが体重が(大抵は)軽いので、同じ量の酒を飲んでも男性よりもノックアウトになり易い為か、それともドイツ人女性の理性は、男性のそれよりもさらに低いので、見境なく飲んで倒れる数が多いのか、事実はわからない。ドイツ政府はこうした若者の理性に訴えても無駄と悟ったようで、酒場での飲み放題を禁止するという強行手段に出た。民主主義、自由経済を標榜している手前、特定の商売形態を禁止するというのは問題がないわけではないが、これまでこれに抵抗して訴えたという話も聞かないから、ドイツ社会では一応のコンセンサス(同意)を得ているようだ。

話は横に逸れるが、時々、お客さんを空港などからピックアップして滞在先にお送りする際、すっかり夜になり、道路標識が見えないので、キオスクで道を聞く事がある。昼間にこうした小さな店の前を通ると、閑古鳥が鳴いており、「一体、儲かっているのかな。」と心配してしまう。こうしたキオスクの商売は、日が暮れてから。日が暮れると、どこからともなくアルコール中毒者がゾンビ(古い?)のように続々と現れて、キオスクに吸い込まれていく。道を聞きに店に入った途端、ゾンビに囲まれてしまい、そのアルコール臭には息が詰まった。夜になるとこうしたゾンビに混じって、酔ぱらった若者が気勢を上げながら町を徘徊しており、あまり気持ちのいいものではない。こうした危険を取り除く為、フライブルクなどの地方自治体では、市内中心部での路上でのアルコール摂取を禁止する条例を出した程。これによりある程度、夜間でも歩きやすくなったが、腕力(一発かまして)、脚力(逃げる)に自信のない方は、グループでの外出をお勧めします。

222.jpg
(ドイツ人の)真似をするなら、他の事で真似をしよう。



スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment