Hitzebahn(-wahn).* (18.07.2010)

真夏、それも本当に暑い日にドイツ鉄道を使って移動するのは、かなりしんどい。車内はサウナ状態で、クーラーが効いていない。他の乗客も何も言わずに黙って汗を流して我慢しているドイツらしい風景がそこにある。「何故、クーラーを入れないのか。」と長く疑問に思っていたが、今回の事件でその謎が解明された。

7月に入ってから猛暑続き。気温は南部では38度を記録。2日ほど気温が下がって、「これで猛暑も終わった。」と思いきや、また高気圧がスペインから張り出して、ドイツを征服、気温がまた37℃まで上昇。幸い気温が40℃を超えた2004年の教訓で、老人ホームなどではクーラーが稼働して、これまで酷暑により死者は(ドイツでは)なし。皆、過去の教訓から学んでいるかと思いきや、ただ一人だけ、過去の失敗から全く教訓を学んでいない会社があった。そう、ドイツ鉄道だ。この酷暑の中、クーラーなし。勿論、窓も開かない構造なので、サウナ状態。10年前から全く進歩なし。そしてこの週末に、この走るサウナは頂点を迎えた。

被害者の話しによると車内の気温が50度を突破。あまりの猛暑に電車の中で気絶する人が出ると、子供の命が心配になって母親がパニックに陥り、走行中の電車のドアのガラスを破ろうと、気が狂ったように窓を叩きだした。これがきっかけになって、電車の中はパニック状態。ビーレフェルト駅で電車が緊急停車すると、救急車が出動して気絶している人を収容して、病院に運び込む大騒ぎとなった。ようやくドイツ鉄道はこの時点でこの電車で乗客を運ぶのは不可能と判断、代わりの電車をビーレフェルト駅に送ったが、この電車もクーラーが効いていなかった。サウナ同然の電車に乗り換えるように指示された乗客は激怒、車掌さんに怒りをぶちまけて、車掌さん(女性)は半泣き状態になった。これほどにドイツ鉄道の学習能力の欠如を示す光景はない。

熱に卒倒した乗客が運ばれる光景がテレビで放映されると、ドイツ鉄道は"ein bedauerlicher Einzelfall"(残念な唯一の事故)と言い張り、「他の99%の電車ではちゃんとクーラーが効いている。」と弁護した。この嘘ほど短命だった声明も、珍しい。このドイツ鉄道の「証言」が報道されると、テレビ局に「私が乗った電車のクーラーが効いていなかった。」という電話が殺到した。この事実を突きつけられたドイツ鉄道は、「エアコンのフィルターの掃除ができていなかった。」と言い訳をしたが、これは不味かった。「ドイツ鉄道は株式上場の為、会社の成績を装飾する目的で必要な整備を怠っているんじゃないか。」と、一斉に疑い出した。不思議なのはバンコクを走るスカイトレイン。灼熱のバンコクで、一瞬「クラリ」とするほどクーラーが効いていて、一瞬にして体温が下がります。この車両はドイツ鉄道同様に、ドイツのジーメンス製。だから製造上の欠陥でない事は明らか。何故か、ドイツ国内の電車だけクーラー効かないようだ。

この謎は比較的、早期に解決。連日の猛暑でドイツ鉄道の電車がドイツ中で緊急停車をすると、もう"ein bedauerlicher Einzelfall"では済まなくなった。ここに至りドイツ鉄道は、「電車のクーラーは気温が32度までしか適応しておらず、これを超えると、機能がダウンしてしまう。」と、やっと真実を告白した。あらためて言うまでもなく、ドイツ鉄道が希望すれば、バンコクを走るスカイトレイン同様に、どんなに暑くても効くクーラーを電車に装備する事は可能だった。でも高いので、安い、機能の弱いクーラーに決定された。傑作なのは、ドイツ鉄道の対処。「今後もクーラーが欠落する事が予想されるので、たくさん水を飲むように。」と駅のホームに無料飲み水を提供してこの夏を乗り切ろうとしている。マラソン選手じゃあるまいし、乗客に「毎駅降りて、水を飲め。」というのは、いかにもドイツ的対応。もっともドイツ鉄道で移動する乗客にとっては、他に選択肢がない。

さて、気絶して病院に収容された乗客、ちなみに修学旅行で旅行中の高校生、の両親が、ドイツ鉄道を傷害罪で警察にAnzeige(告発)を出したので、検察が調査に乗り出している。株式上場を前にイメージダウンを避けたいドイツ鉄道は、「非官僚的な素早い対応」をすると発表、「電車に乗って倒れた人に、無料乗車券を提供する。」と言いした。飛行機の墜落事故を生き延びた乗客に世界一周の飛行機の旅を提供するような対応で、あまり喜ばれるた対応ではない。「転んでもタダでは起きない」ドイツ鉄道は、どうしても株式上場前に乗客数を増やす必要があり、このような対応となったようだ。

この夏(来年でも同じですが)ドイツ鉄道で旅行される方、運がいいと新型の電車に乗れるかもしれません。新型の電車は気温が34度でもクーラーが効くそうです。34度を超えたら、どの電車に乗ってもサウナです。乗車にはうちわを忘れずに。でも、多分、途中で緊急停車して目的地まで行かない可能性が高いので、長距離の旅行はルフトハンザをお勧めします。

* Bahnは軌道という意味。一般ドイツ人がdie Bahnと言うと「鉄道」という意味。ちなみにAutobahnは車が走る軌道という意味で、車専用の道路という事になる。尚、我々日本人にはBahnとWahn(気違い沙汰)の発音の区別ができないので、ちょくちょく聞き取りの問題になります。

227.jpg
移動サウナで卒倒して、


228.jpg
点滴を受けて、


229.jpg
移送される修学旅行生。




スポンサーサイト

Comment 0

Leave a comment