戦後処理  (11.02.2009)

今日は、いつかはここで取り上げたいと思いつつ適当な機会があるまで先延ばしにしていたテーマ、戦後処理の問題の取り組み方について紹介してみたいと思う。ドイツは日本と同じような過去の負の遺産を抱えているが、その取り組み方に関しては、天と地ほどの開きがある。例えば著者が通った田舎の学校では第二次大戦などの現代史はおざなりに扱われ、日本(軍)が犯した戦争犯罪についてはほとんど言及されなかった。「どうしても知りたければ、(試験には出ないけど)自分で読みなさい。」という方針が読み取れた。学校で習わないから、「戦争犯罪は無かった。」とか、「あの数は誇張だ。」などという誤謬がまかり通っている。ドイツの学校では、ドイツが過去に犯した犯罪について授業でみっちりと教えられ、遠足で京都や奈良の寺を見て廻る代わりに、アウシュビッツ、ダッハウ、その他の収容所を見てまわる。だからドイツ人はユダヤ人殺害に関して「あの数は誇張だ。」という言い訳、自己弁護をせず、「ユダヤ人殺害は(数に関係なく)戦争犯罪だ。」という態度を取る。この態度には、過去の誤りを直視して、二度とのそのような誤りを犯さないという意気込みさえ感じられる。

こうした教育を受けて育ったドイツ人の政治家の意見は、極右政党を除いて、すべての党で一致している。勿論、ドイツでも学校で授業をいい加減に聞き流していた為、成績が悪く就職先が見つからず、怒りの矛先をユダヤ人(や外国人)に向けているドイツ人(ネオナチ)は居る*。しかし、こうした発言に対するドイツ政府の対処はとても厳しく、こうした発言が公の場所で行われた場合、「国民扇動罪」で書類送検になり、しこたま罰金を科せられる。だからドイツでは学校の教科書でドイツ軍の侵攻が進行などと書き換えられる珍事は起こり得ない。ましてやどこかの国のように大音響で国民を扇動する車が堂々と市内を巡回することなどありえない。話は横にそれてしまうが、ドイツのテレビで放映される日本特集(いつもおかしな場面だけ紹介される。)で、こうした右翼団体の車が堂々と街中を走っている場面を報道されると、日本人として恥ずかしい。ドイツではこういう団体(マフィア)は警察や税務局からの査察を恐れて、表向きには存在することがでず、すべて地下にもぐっている。それが日本では堂々と大手を振って行動できるのだから、ドイツ人はこれは「発展途上国」の証拠だと確信してしまう。これに比べれば、まだ国会で国会議員が殴り合いをしている光景(台湾)の方が、我慢し易い。

ドイツの政治家が、どのような態度で極右問題と取り組んでいるかを明確に示す事件があったので、ここでひとつ紹介してみようと思う。カトリック教会の宗派にPius-Bruderschaftというのがある。ちょうど日本の右翼のような存在で、「ユダヤ人殺害はデマだ。」などと、いろんな問題発言を起こしてきた。ドイツ国内ではこうしいた発言はご法度なので、ドイツ支部ではこのような発言は聞かれなかったが、海外支部では反ユダヤ、反イスラムの態度を度々の問題発言で明確にしてきた。この為、カトリック教会から破門宣告を受けていたが、今の教皇が勅命にてカトリック教会の門戸を開いてしまった

言うまでもなく今の教皇はドイツ人である。つまり、ドイツ人がユダヤ人殺害を否定している宗派に恩赦を与えたのだから、イタリア国内では大した問題にならなかったが、ドイツでは非常に大きな問題になった。ドイツでは政治家だけでなく、ドイツ国民も一致して教皇の決定に反対の声を上げた。ロシア国内で政府を非難するジャーナリストが次々と銃殺されても、「ロシアの民主主義は、ドイツの民主主義とは違う。」(シュレーダー元首相談)として、ロシア政府を非難することさえしなかったドイツ政府が、この教皇の決定に正式に抗議を入れた。最初は抵抗していた教皇庁だが、信者からの抗議を見て始めて悟ったようで、「ユダヤ人殺害を否定していたとは知らなかった。」と釈明、問題の宗派には、はっきりとこの反ユダヤの立場から離れるように要請した。

こうしたドイツ政府の取り組みがあって、ドイツとイスラエル、ドイツとロシアは友好関係を築いている。イスラエルと周辺諸国との間に紛争があると、紛争の係争国はドイツ政府に仲介を求めてくるほどだ。又、ロシアの欧州内での一番大きな経済パートナーはドイツである。ロシアのガス、油田開発ではドイツの会社が最大の利権を獲得している。これに比して日本は自分勝手な歴史の解釈で、周辺諸国の信頼を得る代わりに、不信感を煽っている。化学品を販売している日系の会社の駐在員によると、販売の交渉の際、中国側は「できれば日本からは買いたくない。」と、正直に心中を打ち明けるという。何故、ドイツにできて日本に同じことができないのだろう。過去の遺産と真っ向から立ち向かう事は、ドイツの例が示すように、結局は日本の得になるのだ。日本に住んで、日本語でしか情報が得られないと、日本の偏った情報しか入ってこない。ここに他の言語を学ぶ意味がある。若い人にはどんどん外国語を習って(留学して)、他国での物の考え方、慣習を肌身で感じて欲しい。日本の考え方の他にも、他国の考え方がある事を知って初めて、日本の考え方がいいものか悪いものか判断できるようになる。これが本当の留学の目的で、言葉の習得は、その手段でしかない。
          
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日本ではドイツの右翼、「ネオナチは日本の見方。」という寛大な意見を見かけることがある。ドイツで右翼に走る若者は、学校の成績が悪く、中学校を卒業できなかった徒党の集まりだ。自分の怠慢を責める代わりに、自分の不遇を外国人のせいにして、自分のエゴを守っている。そういう輩に70年も前に日本とドイツが同盟を組んでいたことを期待しても、無駄。知っているわけがない。ネオナチは、ユダヤ人も日本人も同じ範疇で扱っているので、間違った片思いはしないほうがよい。

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ワルシャワ、ゲットーの子供。ゲット-到着間もない頃は、恵みを期待して道路で食べ物を乞う。すでにゲットーで生活している子供は、誰も食べ物を恵んでくれないことを知っているので、道端で空腹に悩まされて泣くだけ。その後、飢え死にしてやっと苦難から開放された。



 
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