ドイツの賭博事情。 (19.09.2010)

ドイツの最高裁判所(Bundesgerichtshof)はカールスルーエにあるが、日本の最高裁に比べて、庶民的な存在だ。というのも、ドイツでは裁判費用は(生活保護受給者の場合)国が払う仕組みになっているので、政府の決定に不服な場合、誰でも最高裁まで政府を訴えることができてしまう。最近の例では生活保護の支給額に不服な家族が最高裁まで政府を訴えて、勝訴。お陰で政府は生活保護の支給額を計算し直す事を裁判所から命じられてしまった。日本では考えられない環境だが、このようなシステムがあるからこそ、政治家が自分達に都合のいいように法律を変える事ができないので、民主主義を支える大きな柱のひとつになっている。

「じゃ、お上の決定に不満だったら、訴えればいい。」と思うと、そうは甘くない。スピード違反で切符を切られ、免停になったドライバーが、車の運転ができないので「個人の自由の束縛」を理由に最高裁まで訴えるという、いかにも自意識過剰なケースがあった。案の定、最高裁は「自分勝手な根拠でドイツの法廷を悪用した。」と判決、ドライバーとこの法廷闘争を手助けした弁護士の双方に11000ユーロもの罰金を課した。こうした例は、何でもかんでも自分の道理を通そうとするドイツ人の悪い例だが、稀に「なるほど。」と感心させられる判決が出るので、ドイツ気質は悪い面ばかりではない。

ドイツはEUに加盟しているため、ドイツの最高裁で負けた場合、あるいはドイツの法律が「人権を侵害している。」と確信している場合、欧州最高裁判所に訴えることもできる。とは言っても、どんな懸案でも欧州最高裁判所に訴えることができるわけではなく、ドイツ(あるいは他の加盟国)内で訴えても、法律で規定されている為「埒が明かん。」という場合、欧州最高裁に訴えることになる。具体的な事例を挙げて見よう。ドイツでは離婚した未婚のカップルの子供の養育権は、自動的に母親が「優遇」される。この為、いくら養育権を父親がドイツ国内で争っても、特殊な事情がない限り、勝てる見込みがない。この為、ある父親が、欧州裁判所に子供の養育権をめぐってドイツの法律の不公平を提訴した。判事は、「ドイツの現行の法律は、父親を不利に扱っている。」と判決、離婚したカップル(夫婦間ではない)の父親の権利を強めた。このように欧州裁判所は、ドイツの最高裁のさらに上をいく権威を、権威分野は限られているが、有している。

ドイツの達人になる(参 Ferienhaus)で書いている通り、ドイツでは宝くじ及び賭博は国の専売だ。ドイツ政府はこの規制を、「国民が賭博に狂って、破産するのを防ぐ為。」と根拠を挙げて正当化、その一方で賭博場の経営者から高額なライセンス料を徴収、されには国の宝くじ(Lotto)にて毎週、数億ユーロも儲けている。同様にスポーツ賭博に関しての規制も厳しく、国営賭博会社、Oddsetのみに「営業権」を与え、競合他社が参入してくるのを阻止している。これに我慢できないのが、EU諸国に無数にある賭博場経営者。ドイツの人口の多さを考えれば、賭博にはまる人口(鴨)も欧州一多い。ドイツ政府が外国の賭博経営者の参入を認めれば、大儲けできるのは目に見えている。そこでドイツ政府の一方的な外国企業の締め出しを「欧州憲法で認めている営業の自由を侵害している。」として欧州最高裁に訴えた。

欧州最高裁は9月8日に判決を出し、「ドイツ政府が国営の賭博業者に賭博を許可する一方で、外国の業者にこれを禁止するのは、EU条約で公認されている商業の自由を侵害している。」と判断。もっと面白いのは次の部分で、「ドイツ政府が、国民が賭博にはまることを阻止する努力をしているとは言い難い。」と、原告の主張をぼぼ認める判決を下した。というのもドイツ政府は「国民が賭博にはまることを阻止する。」と言いながら、宝くじやスポーツ賭博の宣伝を国営番組で大々的に行っており、言っている事とやっている事が矛盾している。この悪事が、ついに欧州最高裁で裁かれてしまった。この判決の結果、ドイツ政府はドイツ国内におけるスポーツ賭博市場を他の業者に開ける事を余儀なくされ、賭博運営会社の株価は判決が出ると同時に大幅に上昇した。

尚、この欧州最高裁の判決は、スポーツ賭博に限定されるので、宝くじに関しては、ドイツ政府が今後も専売を続けることになる。そのドイツ(欧州)の宝くじは、日本のようにすでに番号が記載されているくじを買うわけでなく、自分で好きな番号を記入して賭ける方式。ここは賭博講座ではないので詳しい賭け方は割愛して、この宝くじに関する裁判例を紹介してみたい。宝くじは、一人で賭けるよりもグループで賭けるほうが(わずかながら)当たる確立が高くなるは自明の理。「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる。」である。この為、ドイツ各地にLotto-Gemeindeと呼ばれる一緒に宝くじを購入するグループがある。ドイツに住んでいる人なら郵便受けに、「あなたも1億ユーロ当ててみませんか。」などというお誘いの手紙が届いているのを経験した事だろう。しかしながらこうしたお誘いには、詐欺が数多いので、真面目に取らないほうがいい。本当に1億ユーロ当てる事ができるなら、何も他人に宣伝でしないで、自分で当てて、何不自由ない生活を送っている。それができないので、手紙を送って「あなたも一発、当ててみませんか。」と勧誘、詐欺で小銭を稼いでいるわけだ。とは言っても、このようなグループに登録している人もかなり居り、友人、仕事場の同僚などでグループを組んで、一緒に賭けているケースの方が多いようだ。ただ、「金の切れ目は縁の切れ目」と言う通り、本当に当たりくじを引いてしまうと、大概、裁判沙汰になる。

というのも、こうした宝くじグループで当たりがでると、宝くじを保管していたグループのメンバーが、「俺が個人で買ったくじだ!」と、言い出す事になる。あるいは誰かが宝くじを当てた事を知ると、「俺達は一緒にLotto-Gemeindeを組んだ仲じゃないか。」と、急に友人が増えて、自分の取り分を要求してくる。数百ユーロならともかく、数億ユーロだから、友情なんて全く意味を無くしてしまう。こうした裁判沙汰の判決は、毎回、同じ。つまりLotto-Gemeindeを組んだと主張する者は、その証拠を書面で提出する必要がある。口約束では、Aussage gegen Aussage(意見の言い合い)になり、証拠にならない。こうして当たりくじを運良く保管していたメンバーは、(証拠がない限り)賞金を独り占めすることが可能になる。この為、もしLotto-Gemeindeを組むなら、毎回、ちゃんと書面で記録を残しておく事が大事だ。とは言っても滅多に当たるものではないので、数年も経つといつか忘れてしまい、裁判沙汰はなくなる事がない。


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ドイツの「宝くじ」Lotto。


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