プロファイリング (11.01.2011)

ドイツで飛行機に乗る際、嫌なのが身体検査とパスポートコントロール。いつ行っても長蛇の列。おまけに外国人はドイツ人よりもチェックが厳しいので、不愉快な思いをする事が少ないない。携帯しているノートパソコンを爆弾と疑われ爆発物のチェックを受けるので、余計に時間がかかってイライラ。意地の悪い検査官に当たると、携行しているカメラとレンズをすべて鞄から出して、ちゃんと機能するか実演するように求められてしまう。丁寧な口調で言われればおとなしく従うものの、往々にして命令口調で言われるので、休暇の初日にして口論になる事が少なくない。私は、「チケットを見ろ。米国じゃなくて、これからタイに飛ぶんだ。テロなわけがないだろう。」と言い、検査官は「テロは行き先には関係ない。」と正当な理由を挙げるのの、もう腹が立っているので理性が効かず、「お前、日本人のテロリストを見た事があるか?」と、食ってかかる。しかし、米国の空港チェックインの光景を見ていたら、「まだドイツはマシ」だった。

テロリストが下着や靴に爆弾を詰め込んでまんまと搭乗に成功(しかし爆破に失敗)した経験から、米国の空港検査官はあらゆるところを触ってくる。これを平気で受け入れている乗客には、感心するばかり。と、思っていたらやはり腹を立てている乗客が居て、「こんなチェックは、乗客に不愉快な思いをさせるだけ。大体、これまで体のチェックで、一度足りともテロリストを発見した事がないじゃないか。」と、これまた正論を述べていた。実際の所、身体検査でテロを防げると思うのは、甘い。テロリストが本気になれば、Duty Free Shopで買えるアルコールを利用して機内で火災を起こしたり、携帯電話などに埋め込んだ少量のプラスチック爆弾で、衝撃に弱い箇所に大きな損害を与える事は可能だ。しかし西欧では、この身体検査をあまりにも重視しており、今度は人体スキャナーを空港に導入しようとしている。このスキャナーの有効性を実証するものとして、拳銃をズボンに押し込んで撮られた映像が紹介されていたが、今時、拳銃をズボンに押し込んで飛行機に搭乗しようとするテロリストなどいない。とは言っても、「これで体中を触られる事がなくなるので、不愉快な思いをしなくて済む。」と、思っていたら、このスキャナーで取られた映像が「個人の尊厳を傷つける。」として、この人体スキャナー導入はドイツでお流れになった。体中を触られる方が、個人の尊厳を傷つけると思うのだが、ドイツ人の考え方はよくわからない。リベラルなオランダでは人体スキャナーが導入された。

これに我慢ならないのが、このスキャナーの製造元。折角、テロ対策で大儲けできると思ったのに、映像が良すぎて採用されないことになったからだ。この為、スキャナーされた映像をフィルターに通し、一昔前のテレビゲームのような姿で人物を表現する事により、ドイツの空港への導入を期待したが、甘かった。ドイツ人は核エネルギーや、遺伝子組み換えにアレルギーを持つ国民だ。「人体スキャナーは癌を誘発する!」として、まだ導入もされていないのに抗議行動が始まった。しかしながら空港管理会社自体、この人体スキャナーの導入にあまり積極的でない。というのもこの人体スキャナー、1台、14万ユーロもする。メルセデスのEクラスの新車が2台買えてしまう値段である。フランクフルトのような大きな空港なら数台の導入が必要になる上、これまで使用しているコントロール人員を減らすわけにもいかないので、空港運営費用が大幅に上昇する。当然これは空港使用料としてチケット代金に上乗せされるので、2011年から導入されたチケット税(長距離フライトでは片道45ユーロ)も加わり、チケット料金の大幅な値上げにつながる。これが原因で乗客が減少する、つまり会社の利鞘が減少することを空港管理会社は恐れている。

人体スキャナーを導入しないで、つまり会社の運営費用を上昇させないで、テロを効果的に防止する都合のよい方法はないものか?それがあるんである。テロの本場、イスラエルでは建国から絶えずテロの危険に冒されているが、これまで一人として爆弾を隠して搭乗することに成功したテロリストは居ない。勿論、空港には人体スキャナーなどない。一体、どうやってるんだろう。そこ答えはProfiling(プロファイリング)である。プロファイリングは、米国の連邦警察FBIで犯罪心理分析に用いられている方法で、過去の膨大な犯罪のデータから、犯罪の手口を比較して犯罪者を特定していく方法である。日本のように国民の大多数が日本人で占められている国では理解し難いが、例えばドイツでトルコ系の少女が性的暴行を受けると、犯人は大方、トルコ系住人である。2009年に有名になったこの犯罪でも、犯人はやはりトルコ人であった。ドイツ人の子供が同様の犯罪の被害者になると、犯人は大方、ドイツ人である。2010年に有名になったこの事件でも、犯人はやはりドイツ人であった。このプロファイリングをイスラエルでは空港で採用しており、これまで完璧な成果を上げている。

では、現場ではどのようにこのプロファイリングを行なっているのか。イスラエルのプロファイラーによると、「2~3時間後に自爆することを決意している人間の行動、言動は、自爆を考えていない人間の行動、言動と著しく異なる。」との事だ。具体的な例を挙げてみよう。誰だって休暇に飛ぶ場合、その日に泊まるホテルの名前、場所、一泊幾ら払うか、空港からどうやってそのホテルまでたどり着くか、綿密に調べ上げている。しかし、自爆する人間は、ホテルは必要がない。だからホテルの事など聞かれると、脂汗が流れ出す。ニューヨークに飛ぶ観光客が、泊まるホテルの名前、値段、場所さえも知らないというのはありえないからだ。さらに旅行日程や目的、何処に行く、誰に合う、何を食べるとか、自爆する人間は全く考えていないため、その場で御伽噺を作ることになり、つじつまが合わなくなる。ましてや自爆する人間は、すでに目が据わっており、すらすらと嘘がつける心理状態ではない。面白いことに、御伽噺を考える場合、眼球が左上に動く。何かを本当に思い出そうと努力する場合、眼球は右上に動く。その他、普通の人なら注意しない体の動きを見て、プロファイラーはその人物が本当の事を言っているのか、極度に緊張しているか、あるいはリラックスして質問に答えているか、手に取るようにわかってしまう。こうしてテロリストは、飛行機に乗る前に選別されてしまう。このプロファイリングの欠点は査定に時間がかかる事だが、その効果は覿面だ。

そこでドイツの空港運営協会長であるBlume氏が、「ドイツの空港にもプロファイリングを導入すべきだ。」と理性のある提案をしたが、ドイツではメデイアや政治家からボロボロにけなされている。氏を批判するメデイアや政治家は、「特定の民族グループを差別するプロファイリングは、民主主義とは相容れない提案だ。」と、まるでプロファイリングをヒトラーやムッソリーニと同一視している。しかし非難をする側は、その非難からもわかるように、プロファイリングが一体どういうものなのか理解していない。プロファイリングとは、ドイツ人は素通りさせて、アラブ人、トルコ人などのイスラム教徒だけ検査するという、簡素なグループ分けではない。ドイツに限った事ではないが、物事の表面しか見れない人が勝利して、正論が受け入れられないことがある。残念だがドイツでは今後も空港で嫌な思いをするか、あるいは人体スキャナーが導入されて高い空港使用料を払う事になりそうだ。

尚、話はプロファイリングから少し逸れますが、日本人は海外で運び屋として大人気。まず滅多にチェックを受けないことに加え、人のいい日本人は、預かった荷物を持ってとんずらせず、几帳面に目的地まで届けてしまう。この為、「お礼をするので、この包みを日本まで運んでくれないか。」とか、「税関を抜けるまで、この荷物を持ってくれないか。」などと声をかけられる事がある。去年、似たような手口で運び屋として麻薬を日本に運んでいた女性が、マレーシアで捕まった。麻薬犯罪に甘いドイツなら書類送検と罰金で済むが、マレーシアでは死刑である。いくら小銭が欲しくても、運び屋のアルバイトは自粛すべきだ。タイでは運び屋として雇われた日本人は、雇い主から警察に密告されて、いつも空港で捕まっているが、それでも運び屋を志願する輩が後を絶たない。タイで麻薬保持で捕まると、通常、無期懲役である。ドイツでは隣国のオランダから麻薬を調達するのに、何も知らない外国人を利用するケースがあるので、「お礼をするから、この鞄を運んでくれないか。」という話には要注意。「中身が何であるか知らなかった。」「頼まれただけ。」「私の荷物ではない。」など、言い訳にはなりません。

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荷物や、


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人体スキャンは我慢できても、


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こんな所や、


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こんな所までチェックされたくはない。


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