Mautdesaster (27.03.2004)

Mautdesasterという新しいドイツ語を作ってしまったのは、この人、運輸大臣のStolpe氏(写真右)だ。ドイツはヨーロッパの真ん中にあるが、ヨーロッパメーカーの工場は人件費の安いチェコ、ポーランド、ルーマニア、ハンガリーに移動してしまっているから、ドイツの高速道路はいつもこれらの工場から荷物を欧州諸国に輸送するトラックで一杯だ。トラックは乗用車に比べ、高速道路をかなり傷めるが、これに対してドイツでは国境でわずかばかりの高速使用料を徴収してきたに過ぎない。しかし2004年5月からのEC統合で東の国々がECに仲間入りして、ますますトラックの交通量が増える事が予想される。そこで考え出されたのがMautgebueren(高速使用料) だ。

日本の高速道路のにように、高速を下りる際に料金を払うシステムでは、出口や入り口で大渋滞が発生するので、ドイツでは使用する走行距離にしたがって使用料が自動的に課されるシステムが導入される事になった。これには高速道路に計測器を備える必要がある。それも隙間なく。そこで次はその工事を引き負う会社を決めるわけだが、公共事業であるから一般公募をする必要がある。そこでドイツはおろか、ヨーロッパ中から応募が集まったのだが、結局、仕事を受注したのは、Tollcollectというドイツテレコムとメルセデスベンツの共同出資会社。なんの事はない、最初っから外国の企業に委託する気なぞなかったのだ。スイスではすでに同様のシステムが導入されていたので、スイスの企業は受注を希望していたが、「仕事が完遂できない場合の罰金を払えない会社からの受注は不可能。」と、ドイツ政府に蹴られてしまった。

肝心の料金システムの導入だが、当初2003年8月から導入されるハズの予定が「システムの調整に時間を要する。」という事で、10月末に延期。10月になると、こんどは12月に延期。「一体いつになったら、導入されるのか。」という質問に運輸大臣は、「12月と言っただろう。」と、尊大な対応ぶり。ところが12月になっても、一向にシステムは機能しなかった。当初は運輸大臣の面子が潰れるだけだったが、大幅に導入が遅れることにより、他の面でも問題が発生した。

政府は8月からの税収入を予想して予算を立てていたから、予算難が心配され始め、国会でも問題になった。あわてた運輸送は、「1月末までに、いつから導入できるか通報すべし。」と、Tollcollet社に最後通報。ところが1月末になっても何の返事ももらえない運輸大臣。面子を救うために、自ら最後の最後の通報期限を自主的に2月末に延期。1週間もたたないで、この最後の最後の通知期限を3月まで伸ばして、最後の最後の最後の通知期限を設定。この最後の最後の最後の通知期限日に、朝まで運輸大臣とTollcollect社が交渉。Tollcollect社は一向に最終期限を明らかにしようとしないし、これまでの遅延に対してもお金を支払うそぶりを見せない。いくら賄賂をもらっていても、もう我慢できない。堪忍袋の緒を切らした運輸相は明け方に記者会見を開き、Tollcollect社に契約解雇の通知をした事を明らかにする。(このときの写真は右)

結局、高速の使用料はこの先、2年間は待たなければならない事態となり、国には億単位の税金が欠ける羽目に。この事件で、大衆の顰蹙を買ったのは運輸大臣の尊大な対応とその無能さだった。スイスに企業からのオファーを「契約が守れない際に、罰金が払えない。」という理由で蹴ったのに、契約を守れないTollcollect社は罰金を払わなくてもいいようないい加減な契約をしていたことが判明した。ドイツ語で『素晴らしい。』『よくやった!』というのをToll!というが、これがTollcollect社の名前と同じなので、冗談でDas ist ja Toll! という駄洒落が流行ったくらいだ。ついでながら、ドイツで今、無能の象徴となったのが、この運輸大臣。ドイツ語で「つまずいて転ぶ」をstolpernと言うので、運輸大臣のStolpeと組み合わせて、"Herr Stolpe stolperte ueber den tollen Tollcollect."という早口言葉みたいな駄洒落まで新聞に載った。ドイツ語の勉強にはなるんじゃなかろうか。

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悩む人

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スピード違反の取締りカメラと勘違いする高速料金計測器


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