下手な企業家 (15.05.2005)

毎年、この時期になるとドイツ人の大好きなアスパラガスが市場に出てくる。80年代からドイツではこのアスパラガスが大人気で、この頃には、スーパーの棚だけでなく、地下鉄の駅、家具屋の入り口、道端まで街中はアスパラガスで埋めつくされる。かなりいい値で売れるので、ドイツの農家はそろってアスパラガスを栽培している。問題は、アスパラガスの収穫。

ドイツではまだ地中に埋まっている白いアスパラガスが重宝されるので、労働者が一本、一本、手で丁寧に畑から採集していく。この中腰の体勢でおこなう仕事は辛い。そのくせ、畑仕事であるから自給が7EURと(ドイツでは)かなり安い。結果として、農家は収穫に必要な労働者が見つからないという猶予のならない事態に陥った。そこで、農家はポーランドから出稼ぎ労働者を大量に呼び寄せ、1ヶ月以上もの間、住み込みで収穫作業を行なっている。

幾ら自給が安いといっても、ポーランドでは月収が700~800EUR程度なので、1ケ月ドイツで働けば、ポーランドの3ケ月分の収入が得られるの。こうして無事、農家はアスパラガス収穫の労働者が見つかり、ドイツ人は大好きなアスパラガスが食べれて、ポーランドの労働者はお金が稼げてみんな満足する結果になるかに見えた。ここで「ちょっと待った!」と言ったのは、他でもない、ドイツの小役人、労働局だ。

ドイツには500百万近い健全な失業者がいるのに、何故、何万人もの外国人労働者が必要なのか。腐るほどいるドイツ人失業者を収穫に派遣すれば失業問題も(一時的に)解決して、さらにおめでたいではないか。そこで労働局は失業者に手紙を送りつけ、「〇月〇日に収穫作業の為に何処何処へ出頭すべし。」と通告した。労働局はかなり乗り気で労働者(失業者)を輸送するミニバスまでチャーターして大挙してやってくる労働者を待った。ところが実際にやって来たのは、当初の予想のせいぜい60%程度。しかも2日目にはその数は半分になり、2日目には数える程度となってしまった。多くの労働者はかかりつけの医者に駆け込んで腰痛を訴え、労働不適格の医者の診断書を労働局に送りつけてきた。結果として、収穫されないアスパラガスが大量に畑に残り、アスパラガスの値段は上昇、ドイツ人は高いアスパラガスに文句を言い、ポーランドの労働者は期待していた仕事がなくなって収入が激減、労働局はバスのチャーター費用で大きな赤字を生んで、国民の大笑いを浴びるという事態になった。

この例が象徴するように、官僚には商売のセンスがない。ドイツ語でも、"Der Staat ist der schlechte Unternehmer."(国は下手な企業家)と言う。これまで肉体労働の経験がない失業者を畑仕事に送って、長続きする筈がない。ドイツで収穫労働者が見つからないから農家は、わざわざ、外国から労働者を雇い入れていたのだ。ところがである、2006年になってまた労働局が失業者をアスパラガスの収穫に派遣するという「暴挙」を行なった。結果は言うまでも無く、失業者は仕事に来ないので、アスパラガスの収穫はされないまま。農家からの抗議に対して労働局は、「2007年はもっと効果的な方法にて失業者を収穫に派遣する。」と発表して農家の怒りを買っている。一体、いつになったら、官僚は失敗から学ぶのだろう。


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アスパラガスを収穫するポーランド人労働者

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ドイツ人の大好きなアスパラガス
        


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