計画倒産 (25.10.2005)

2005年10月に130年の伝統を誇るフィルム会社、Agfaが倒産した。5月から会社更生法の申告をして企業の建て直しを計ったが、適当な買い手が見つからなかったという公式発表になっている。

Agfaの近年の歴史を見てみると、アグファはドイツの有名なケミカル及び薬品起業であるバイヤーが1999年に同社を株式市場に上場、アグファを独立させた。当時はまだフィルム写真の最盛期で、130億ユーロのも黒字を計上しており、アグファは日本で言えば富士フィルム、米国で言えばコダックフィルムに相当する大会社だった。

富士フィルムは独自のデジタルカメラを開発してデジタル化の時代にうまく乗ったが、職人気質のドイツ企業ではよくあるように、「デジタルカメラなんてちゃらけたものは、本当のカメラじゃねえ。本当の写真は、フィルムで撮るもんだ!」と自社の製品に自信過剰であった為、時代の波に完全に乗り遅れた。5年後には利益が文字通り半減、これでは会社がいつ赤字になるか、簡単にはじき出すことができる。そこでアグファは採算の悪いフォト&映画部門を投資家グループに二束三文(たったの2百万ユーロ)で売却した。
 
投資家は、何も慈善事業をする為に企業買収をするわけではない。買収した会社をばらばらにして売っぱらう事により、利益を出すことを目的としている。この目的を達成する為、アグファの写真部門を買収から5ヵ月後に倒産申告を出した。去年のフィルムの売り上げがまだ600億円もあったことを考えれば、実におかしな倒産だった。アグファの倒産がニュースになると、「アグファのフォト部門を買収したい。」という申し出があったにも関わらず、「売ってもいいが、アグファのパテント使用を禁止する。」というアグファの親会社からの返事が、このオファーを潰した。
 
これによって2000人近い人間が職を失い、その家族、取引業者などを含めれば、1万人近い人が生存の崖っぷちに立たされる事になった。手遅れになってやっと会社内部にデジタル部門が作られて、自社のデジタルカメラが完成間近だっただけに、従業員はまさに晴天の霹靂、いきなり通勤のラジヲで会社の倒産を知る羽目になった。

現在でもアグファ フォトという会社が存在しており、小さな規模でデジタルカメラを販売しているが、これは倒産したアグファ フォトとは別会社。アグファのパテントを保有していた親会社が経営難に陥り、そのパテントを幾つかの会社に身売りした。このパテントを購入した会社が、アグファ フォトの名前で細々とデジタルカメラの製造、販売をしているに過ぎない。、
          
編集後記
2012年にはかって世界で最大のフィルムの売り上げを誇ったコダックが倒産した。皮肉な事に、同社の倒産のきっかけを作ったのは、コダック社の開発したデジタル写真技術だった。自社で会社した技術であるにもかかわらず、あるいはこれが原因で、一般大衆向けの製品の開発を怠った。優れたフルフォーマットのセンサーの技術を有しているのに、大衆向けのセンサー、カメラの生産、開発を行ったのがその原因だ。日本企業はコダックのパテントから学んで、消費者向けの安いカメラ、センサーの開発、製造に集中、ついにはコダックを追い抜いてしまった。日本企業も己の技術、(過去の)業績を自慢していると、コダックの二の舞になりかねない。これを教訓を得て、尊大な態度で韓国、中国企業を見下す態度はきっぱりと捨てるべきだろう。
          

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計画倒産?消えていくドイツの伝統企業



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