職人魂 (07.01.2006)

ドイツの職人と言えば、マイスター制度で知られているように職人気質で有名だ。しかし、この職人気質は、時として逆効果を招く場合がある。古い話になるが、第二次大戦前に開発されたドイツの戦闘機メッセーシュミット109機は、当時、世界一の性能を誇っていた。この戦闘機をもってドイツ軍は1940年に有名なBattle of Britenの戦いに望んだが、思わぬ苦戦を強いられる事になる。原因は燃料タンクが小さい事。もともと、国内の防衛用に開発された飛行機だから、海峡を飛んでイギリスの上空で空中を戦えるほどの燃料の搭載を想定していなかった。

Me109ができるだけイギリスに近いフランス(当時、ドイツはフランスを占領していた。)の飛行場から飛び立ってイギリスの上空に達すると、20分しか上空に留まれなかった。これでは効果的な爆撃機の援護ができない。さらには戦闘に巻き込まれて燃料を大量に消費してしまうと、基地までたどり着く事が不可能になり、海峡に不時着する飛行機が続発した。普通なら予備の燃料タンクをつけて、この問題を解決するものだが、メッサーシュミットは「そんな素人みたいは仕事はしねえ。職人の技を見せてやる。」と、もっと大きな燃料タンクを搭載する飛行機の設計にかかった。ところが燃料タンクを大きくすると飛行機のバランスが崩れてしまうので、飛行機を設計し直す必要があり、この飛行機が設計されて実践に投入されるまで2年もかかった。結果としてドイツ空軍はBattle of Britenの戦いに敗れる。

時は流れて2004年。ドイツではデイーゼル車から出る煤が癌の原因になるとして煤対策を取る事にした。最も素早く対応したのがフランスの車メーカー。マフラ-に煤フィルターを取り付けて、煤が全く出ないようにした。ところがドイツの車メーカーはどこも「フィルターをつけるなんて、そんな素人みたいな仕事はしねえ。デイーゼルの燃焼過程を改善して、煤がでないエンジンを作って、職人の技を見せてやる。」と画期的なエンジンの開発に取り組んだ。結果としてこの画期的なエンジンは未だに開発中。2005年からドイツではデイーゼルエンジン車には煤フィルターを付けること義務化された(付いていないと車両税が高くなる。)が、ドイツの車メーカーは準備ができていないので、フランスからフィルターを輸入する羽目になった。

この話をジーメンスの開発部門の責任者と話していると、「うちも同じだ。」と言って、次のような逸話を紹介してくれた。ジーメンスでは車だけでなく、車両、軍事、電気製品などあらゆる分野で開発研究を行なっている。ある課題があると、ジーメンスの技術者が集まってこの問題の解決にかかるわけだが、既存の方法を使って問題を解決しようとせず、画期的な解決方法を模索する。結果として研究は何年もかかり、億単位の金を使ってしまう。そこで出来上がった技術は、技術革新とも言えるものだが、あまりに値段が高くなって、誰も買い手が見つからないのだそうだ。「簡単な方法を導入して、誰でも買える値段の商品を作ればいいのに、、。」と、その責任者はぼそりと感想ともらしていた。


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中古車のデイーゼル車を買う際は、煤フィルターが

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備え付けられているか、確認してから購入すべし。


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