A380 低空飛行 (09.10.2006)


以前ここで取り上げたが、AIRBUS社は世界最大の旅客機A380の製造上の問題、厳密に言えばハンブルク工場でのケーブルの施設で大きな問題を抱え、会社創立以来の危機に陥っている。エアバス社は今年の6月に製造上のトラブルを認めたものの、2006年納入分の飛行機の納期は遵守できると保障した。ところが10月になると、2006年内の納入は不可能で、最低でも納期が1年は遅れることを発表する羽目になった。これによりA380を注文していた航空会社は他の旅客機を調達する必要に迫られ、シンガポール航空などはエアバス社のライバルであるボーイング社に旅客機の注文をするなどして対処、ボーイング社にしてみれば一石二鳥となっている。

又、飛行機などの売買には厳しい納期が設定されており、納期を1日遅れただけで、エアバス社は契約違反金を航空会社に支払わなければならない。納期が1年以上も遅れる事によりエアバス社は、今年と来年で5億ユーロも損失することになった。このニュースが知れ渡るやエアバス社の株価は続落、6月の製造上のトラブルの発表から、なんと30%も株価を落としている。この責任をとってエアバス社の社長、Streiffは親会社EADSに辞表を提出したらしく、辞任の発表は時間の問題となっている。

エアバス社は製造工場をフランスとドイツに二分するという戦術上の誤りを犯した。フランスで組み立てた部品を特赦な飛行機でわざわざドイツまで運んでケーブルなどを設置、またこれを飛行機に積んでフランスまで輸送、そこで最終組み建てを行うという作業効率の悪い方法を選択した。これはエアバスの親会社EADSの株を所有するドイツとフランスへの配慮で、両国に均等に工場を設けて仕事を提供するという政治的目論見から下された判断で、経済的な判断とは全く関係がなかった。

この政治的決断で大やけどをしてから、エアバス社のドイツ国内の3つもの工場の存在意味が疑問視され、2つの工場の閉鎖も検討されている。もし、この工場が閉鎖されることになれば(会社を救うには他に方法はないかもしれないが)又、何千人ものドイツ人が失業することになる。今後、親会社のEADSが今後もフランス、ドイツ政府への政治的配慮で会社の運営方針を決定していくならば、エアバス社の未来は暗いと言わざるを得ない。

編集後記
不思議なことに、2008年あたりからエアバスはボーイングに対して、反抗を開始した。ここで書いた通り、欧州中に散在していた工場を整理、部品の輸送経費を下げることにより、生産性が高まった。これに加えて今度は、ボーイング社がドリームライナーで大きな失敗を犯した。新型飛行機の開発遅れが原因になって、エアバスに注文が流れ始めた。2009年にはエアバス社はボーイングを飛行機の受注数で追いついて、2010年以降、ボーイング社を完全に追い抜いた。当時のエアバスの醜態を知っている人間にとっては、「目を疑う光景」である。ちなみにStreiff氏の辞任後、エアバスを建て直したエンダース氏(ドイツ人)は、その功績を認められて、EADSの社長に就任した。
         

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ハンブルク工場へ輸送されるA380

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問題になったハンブルク工場でケーブルの設置


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