ジョイント ベンチャー (12.10.2006)

Siemensは、2005年にそれまで赤字を抱えて「会社の問題児」であった携帯電話部門を台湾の家電会社BenQに売却した。売却と言っても、ジーメンスはこの譲渡による赤字、3億5千ユーロを計上したので、ただ同然の値段だったに違いない。ところがドイツ国内ではこの売却は、新しい社長の優れた手腕と高く評価された。ところが2006年9月末になってBenQが会社の破産を宣告、BenQで働くドイツ人労働者3000人が職を失う事となり、政界、財界を揺るがす大ニュースになった。

このSiemens-BenQ、携帯電話事業の破綻は一見、携帯部門をSiemensから事実上引き継いだBenQのマネージメントの失敗と思われるが、本当の原因は別の所にある。ジーメンスはすでに2001年に携帯事業の将来を見切っていた。携帯部門は設立以来赤字続きで、毎年、ジーメンスが他の分野であげる利益を食いつぶす穀潰しとなっていた。しかし、将来を見切ったと言っても4000人を超える社員を抱えているから、これを首にすると会社には膨大な退職金を支払う義務がある。そこでジーメンスはこの社員を金がかからないで、又、会社が非難されないでお払い箱にできる妙案を考え出した。

その方法とは携帯部門の売却である。会社が所有するパテントを餌に魚を呼び寄せ、まんまと食いついた会社にただ同然で売る。その後、この会社が破産しても、その責任はジーメンスにはない。もし、この他社が豪腕を発揮して会社を再生すれば、それはそれでよし。可哀想なのは、計算高いドイツ人にまんまと騙されたBenQだ。この1年間で8臆ユーロもの赤字を出す事になり、メキシコ、台湾にある工場を閉鎖。そして、今回の破産宣告で一手に悪役をジーメンスに変わって引き受けることとなった。

破産の原因は、この携帯部門がジーメンスが報告していた赤字額をはるかに超える赤字を出していた為だ。BenQはジーメンスの数字を信用して4億ユーロの投資額を用意していたが、その倍の額を投資しても到底足らなかった。これ以上にお金を投資しても黒字になる見込みはなく、会社を処理する事にした。ジーメンスの社長は、BenQの破産宣告後、記者会見を開いて「BenQを訴えてやる!」という演出も忘れなくきっちりおこなった。が、世の中そんなに甘くはなかった。

今回ジーメンスが取った手段は、ドイツのマスコミは舞台裏までお見通し。マスコミは「ジーメンスは汚い仕事をBenQに押し付けた。」と報道して、ジーメンスにまんまとはめられた台湾企業をかばった。職を失う事になる労働者の怒りもBenQではなく、ジーメンスに向けられた。また、今回の一件ではまんまとドイツ人にしてやられたBenQだが、この破産宣告は経済界に歓迎され、ニュースが伝わるとBenQの株価は一気に高騰し、株式市場が設定する上昇枠のリミットに達し取引が終了した。
          
編集後記
足かせになってた携帯部門を売却したジーメンスは、別の携帯電話会社、ノキアとのジョイントベンチャー、ノキア ジーメンス ネットワークを開始した。この事業も携帯部門に劣らぬフロップで、設立以来、赤字続き。元来、エリクソンの独断場であったこの事業への参入は、未知への投資だった。蓋を空けてみれば、エリクソンに追いつく何処か、中国からの競争相手、Huaweiにも太刀打ちで着ない有様であった。我慢のならないジーメンスは、2012年1月、会社の新体制、つまりドイツ国内で2900の、企業全体で17000人の解雇を宣告した。これによりドイツ国内には5つの事業所が残ることになったが、残りの事業書が閉鎖されるのも時間の問題であろう。
          

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Siemens-BenQ、及びSiemans-Nokia事業と次々に新事情を開拓したジーメンスの社長、Kleinfeld氏。今は米国のアルミ製造会社、アルコアの社長に納まってる。



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