Weihnachtsgeld (23.12.2006)

ドイツでも日本のボーナスのような特別賞与があり、11月には給与の他にWeihnachtsgeld(日本語に訳せばクリスマス賞与)という通常は、毎月の給与と同額の)特別賞与が支払われる。今回、ドイツのテレビ製造メーカーであるLoeweが、会社に勤める1000人ものすべての従業員に通常の枠組みを超える太っ腹なクリスマス賞与を特別支給して、大きな話題になった。

Loeweは、テレビ製造メーカーとして、これまでアナログ式(ブラウン管)の高級テレビを製造してきた。しかし、伝統にこだわるドイツ企業の特徴として、プラスマ テレビやLCDテレビの開発を怠った。テレビの代名詞とも言えるブラウン管は、なにを隠そう、ドイツ人技師、DR.Braunの発明によるものだから、ドイツ人は特にブラウン管のテレビに愛着があったのかもしれない。これとは逆にLCDテレビは日本企業、特にシャープが先駆者だが、開発当初は、LCDテレビはアナログのテレビが出す画質に匹敵する画質を出すことができなかった。その上、大きな画面は製造が難しく、しかも製造コストがとても高く、将来性があるとは思えなかった。だからアナログテレビを製造していたLoeweは、画質の劣るLCDテレビの開発など、必要なしと判断した。(Loeweだけに限らず、ドイツ企業は将来の商品の開発に非常に鈍感。)

ところが、日本企業のLCDテレビの開発により、毎年、画質は向上して、画面も大きくなり続け、販売台数が増えるにつけて値段も下がってきた。この傾向を見ていても、頑固一徹なドイツ企業の多くは、「LCDテレビなんてのは、本当のテレビじゃねえ。テレビはブラウン管で作るもんだ!」と、自社の製品の優秀性だけを信じて、LCDテレビの開発を拒否した。

実際、2000年、2001年の頃までは、Loewe社製のアナログ高級テレビがよく売れて、会社は何も心配する必要がないかのように見えた。ところが2002年頃から、LCD/プラスマテレビの販売台数が急激に伸び始め、逆にアナログテレビはLadenhueter(いつまで経っても売れない製品を指していう言葉。)として、売れないまま店に陳列されている事が多くなった。その後、売れないテレビを手放したい小売店が、アナログテレビの大安売りを始め、アナログテレビの値段の崩壊が始まった。この前までは800EURもしたアナログテレビが300EURで買えてしまうのだから、メーカーにとっては痛手だった。この値段の崩壊により、ドイツの伝統を誇る電気製品製造会社GrundigやSchneiderは破産の憂き目に合う。

同業者の破産を目の当たりにしたLoeweは急遽、LCDテレビの開発に乗り出すが、LCDテレビの技術は1日、2日で開発できるものではない。そこでLoeweは、世界で最先端の技術を持つ日本のシャープに助けを求める。シャープはLoeweの株式の30%を保有することで技術投資の話がまとまり、Loeweは工場を整備してLCDテレビの製造、販売を始めた。しかし、売れないテレビを抱え、設備投資でお金は出て行く一方。会社の業績も悪化する一方で、2003年には会社は破産の瀬戸際まで追い詰められる。この時、会社を破産から救う為、従業員と会社の間で1月分の給与の「お預け」が合意された。「お預け」した給与は、「将来、会社の業績が改善したら、利子を付けて払う。」という事になった。
 
その後、厳しい2003年をなんとか乗り切って、2004年から序に新製品のLCDテレビの販売を開始して、テレビの販売台数を少しずつ、だが着実に増やして行った。その甲斐があって、やっと2006年には会社が黒字になることが明らかになった。そこで会社は預かっていた社員の給与を、今回、なんと25%もの利子をつけてクリスマス賞与として支給したわけである。このニュースは、会社と従業員の信頼関係を象徴する、近年稀に見る「サクセスストーリー」として、新聞、テレビで大いに報道、賞賛された。

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Loewe社を破産から救ったLCDテレビ(中身はシャープ?)


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