目指せ世界一! (20.05.2007)

今月(多分)最後の記事では日本でも話題になった(であろう)ダイムラーベンツのクライスラー売却について。ダイムラーは1998年にクライスラーを3億6千万ユーロものお金を払って購入したのだが、2007年に売却した際の売却額はたったの5千5百万ユーロ。しかもこのお金はすべて売却先にクライスラーの社員の社会保障費として支払う事になっており、事実上、譲渡。これによりダイムラーは天文学的な損益を出す事になった。

このダイムラーの無謀な大冒険は、ちょうど日本の日産が経済難に陥った頃に始まる。当時、膨大な赤字を抱えていた日産は密かにダイムラーに経済援助を打診する。しかし、日産の財政状況を見たダイムラー社は(負債額に驚いて)経済援助を見送る。そこで日産は、話をルノーに持っていく。結果はご存知の通りで、日産はルノーから派遣されてきたゴーン氏の指導の下、会社の整理に成功。この例は自動車業界に大きな反動を与える。

このルノーと日産の合併(成功)により、ルノーはダイムラーを抜いて欧州で2番目に大きな車メーカーに躍進する。これにより危機感を感じたダイムラーの取締役、Schrempp氏は、将来の戦略としてWelt AG コンセプトを発表、車の生産台数で世界一を目指す事になる。手始めに日本で会社の経営危機に陥っていた三菱自動車を買い、韓国では現代自動車、そして米国ではクライスラーを買収する。明らかに「ルノー(フランス人)にできて、ダイムラー(ドイツ人)にできない事はない。」というドイツ人の誇りが背景にあった。

ところが、三菱自動車は幾ら金をつぎ込んでも、一向に生産環境は改善されず、次々とリコールをする羽目に。これを見たダイムラーは金の卵を産むメルセデスのイメージダウンを懸念、「三菱自動車の(欠陥)部品は、メルセデスには一切使用されていない。」と、異例の発表をする。その後、ダイムラーは三菱自動車株を二束三文で手放した。そして、今回のクライスラーの(お金を払う)売却である。これによりダイムラーのWelt AG コンセプトは消散する事となった。

このクライスラー売却が発表されると、ダイムラーの株価は一気に8%も上昇、株主はこの売却をそれでも歓迎したようだ。尚、Welt AG コンセプトでダイムラーに膨大な損益をもたらしたSchrempp氏は、その責任をとってすでに2006年に膨大な退職金をもらって辞職している。欧州の会社の重役というのは、任期契約制。任期中にヘマを犯して早期に首になると、会社は契約違反で罰金を払う義務がある。この為、仕事でヘマをするほど早く退職できて、お金も早く入ってるという利点がある。いい例がドイツテレコム。次々と首になっているドイツテレコムの歴代社長は、たんまりと退職金をもらっている。
          

314.jpg
Welt AGの生みの親Schrempp氏(右)と、Welt AGを投げ捨てた後継者のZetsche氏



       
スポンサーサイト

COMMENT 0