給与交渉 (26.07.2007)

ドイツに就職して(いろいろ驚くことはあるが)おそらく一番予想外なのは、お給料交渉。ドイツではお給料は毎年自然に上がっていくものではなく、毎年、雇用者と交渉してお給料アップを手に入れる。このため、(わかりやすいように極端な言い方をすれば)自分の売込みが苦手な人は、幾ら仕事を着実にこなしても、お給料は物価の上昇率よりも低いままに終わってしまう。逆に仕事はできなくても、自分を売り込むのが得意な人は、お給料が着実にお給料が上がっていく。

大きな会社や特定の職業グループの場合、労働組合の代表が雇用者団体の代表と給与アップを交渉する。この交渉で取り決めされた内容は、会社に関係なく、職業グループすべてに適用される。この労使間の交渉は、日本でも稀に見受けられるが、ドイツほど大規模ではない。この団体交渉では明らかに、被雇用者側に利点がある。例えば、ドイツで一番大きな鉄鋼労働団体(IG Metal)では、 雇用者を毎回、無期限ストで脅かしている。このストが実際に実行されると、鉄鋼の生産が止まるので、ドイツの工業生産の中心である車の製造は言うに及ばず、金属を加工する業界、それに鉄鋼をこれまで運送していた会社まで仕事が止まってしまう。だから、ドイツでは組合の力が強く 、人件費が値上がりを続け、その結果として、ドイツ製品は内容、品質に関係なく、価格が高くなっている。

この労働単体の賃金交渉で、今、ドイツで話題になっているのがドイツ鉄道(DB)だ。 ドイツ鉄道にはおよそ14万人が従事してる。これは駅のホームをパトロールする警備員(駅はとても泥棒が多い)や、カウンターでチケットを売っている職員、及び車両の運転手、乗務員を含む数だ。ドイツ鉄道は、この前までドイツ国営企業であったが、数年前に民営化した。しかし、元々大赤字の国営企業だったから、民営化しても資金難にあえいでいる。この為、路線の改善は全く進まず、未だに30年代に引かれた線路をそのまま使用している。当然、そんな老朽化して線路の上を高速で走る事はできないから、車両が老朽化して部分に差し掛かると、ものすごいノロノロ運転に移行する。きっとドイツで鉄道旅行をされた方は、何も無い場所で電車の速度が落ちたので、「もう次の駅に着いたのかな。」と錯覚した経験をお持ちだろう。

そんな状態だから、14万人もの職員に大幅の給与アップをするわけにはいかない。何せ社員が多いから、わずか1%の給与アップでも、会社には5億円程度の経費アップになる。ところが間の悪い事にDB*は2008年から、株式会社への以降を予定している。(本当は2007年に予定していたが、成績が悪いので延期になった。) 株式上場となれば、上場時の株価はとても大事。だから上場前にストなどされては、会社は大きな損益を出す上に、大きなイメージダウンになる。何とかしてストを回避したい思いのDBは、今回の「春闘」で、ストで脅す労働組兄の恐喝に負け、前代未聞の4,5%の給与アップを約束する羽目になった。 これでストが回避されたと思いきや、流石はドイツ、そう甘くはなかった。

車両の運転手及び乗務員が独自の労働団体GDLを立ち上げ、DBに対して破格の(Sage und Schreibe)31%の給与アップを要求してきた。流石、ドイツ。DBの社長はあきれて物も言えないが、GDLは大真面目。上場前のDBをストで脅すほど、これほど効果的な時期と方法はない。これを見て取ったGDLは、ドイツの歴史上かってなかった要求、31%の給与アップを思いついたのである。GDLはこの要求がはったりでないことを証明する為に、8月7日以降からの無期限ストを予告している。8月初頭といえば、日本から留学にやってくるお客さんの一番の多い時期。こんな時期にストをされたのでは、これまで綿密に行った手配が水の泡になってしまう。やっぱりドイツは凄い!

*DB
元来、DBはDeutsche Bahn(ドイツ鉄道)の短縮形だったが、あまりに電車の遅延が多く、会社のイメージが悪くなった。そこで、数年前にDBはDie Bahnと名前を変えた。 ただ、名前は変わっても、中身(遅延)はそのまま。


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ストだけでは足らず、客の妨害をするDBの労働組合員



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