ドイツ電力市場 (16.08.2007)

今月は国会もお休みで、政治家は首相以下、皆休暇を取っているので、ここで紹介できるニュースの「ネタ」が少ない。そこで今回は、以前も別の場所で取り上げたドイツの高い電気代について再考してみよう。

まずはどのくらいドイツの電気代が高いのか、数字で「白黒」はっきりつけてみようと思う。どの町にもStadtwerkという市営の電力会社があり、日本人はこの市営の電力会社と契約しているケースが多い。デッセルドルフのStadtwerkの電気の値段は基本料金を抜きにして、1kwが18.87セントだ。日本の中部電力なら一人住まいで、月に消費する電力は300KW未満であると仮定して、1kwが16円。1EURを160円として換算すればちょうど1kwが10セントになる。つまりドイツの電気代は、日本の電気よりも89%も高い事になる。これはドイツの電力会社が請求している基本料金(年間70EUR)を入れてない数字だから、実際にはドイツの電気は日本の電気のほぼ2倍もすることになる。

この数字を見て、「何故、ドイツでは電気代がそんなに高いのか?」と問う人は、ドイツに住んでいる人ばかりではあるまい。その最大の原因は、ドイツの電力市場が4つの巨大な電気会社の手中にある事。(市営の電力会社はこの4大電力会社から電力の供給を受けている。)競争がなければ、当然、値段は高値安定する。これまでは電力会社が値段を上げたい場合、州政府にこれを申請、認可を受ける必要があった。ところが政府がそのシステムを廃止、2007年7月1日から電力会社は好きなように電気の値段を決めることが可能になった。この法律が国会を通過して1週間、自宅の郵便受けには7月1日からの電気代の値上げを通知する電力会社からの手紙が届いていた。政治と電力会社の息の合った連帯は他に例がない。

電気代の値上げ申請制廃止の背景には、ドイツの電気市場を開放、電気市場上での取引により、つまり需要と供給の関係で、電気の値段を決めようという目論見があった。しかしこれは見事に机上の空論で終わった。電気を安い値段で売る気のさらさらない電力会社は、このし市場にごく一部しか電気を供給しないのだ。供給が少なければ、値段は跳ね上がる。高くても、Stadtwerkなどは電気を買わないと、客、つまり市民に電気を提供できない。こうした実際には1メガワットに10ユーロくらいしか発電料がかからないのに、電力マーケットでは1メガワットが55ユーロという高値で取引されている。そして、これが最終的に市民のコンセントに届くには、上述のような値段に膨れ上がっている。

これだけでもドイツの電力会社の悪行は許しがたいが、悪行はこれで終わりではない。ちょうど21世紀に入った頃、環境汚染がドイツでは大きなテーマになった。その際に槍玉にあがったのが、二酸化炭素を大量に排出する発電所やごみ焼却場。ドイツでは褐炭を使った発電所が欧州でもっとも多く、大気汚染の源泉となっている。そこでこうした「汚い」発電所等の施設には、それ相応の大気汚染料を払ってもらおうという事になった。この経過に注目していたドイツの電力会社は、素早くロビー活動を開始した。大体、ドイツの経済大臣が、電力会社の取締役に席を置いて、毎月顧問料として膨大な月給をもらっているのだから、このロビー活動は実に効果的。あれよあれよと言う間に、発電所はこの大気汚染料から開放されることになってしまった。

それだけではまだ十分な利益が出ないと考えた電力会社は、(払っていない)「大気汚染料支払いによる経費上昇の為」と称して、再度、料金を値上げしてしまった。こうしてドイツでは、電気代が値上がりをつづけ、もうお先は真っ暗。ちなみに欧州で、ドイツでひとつだけ電気代がドイツより高い国がある。イタリアである。あの政府の内部にまでマフィアが浸透して、公共事業でマフィアが甘い汁を吸っている国だけは、まだかろうじてドイツよりも電気代が高い。ドイツではマフィアはそこまで公共事業に浸透していないが、その代わり、政治家と電力会社が甘い汁を吸うシステムが出来上がっている。

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環境汚染Nr.1の褐炭発電所。


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メフィスト(RWE)に魂を売り飛ばしたドクターファウストこと、(元)経済大臣のクレメント氏。現RWE取締役。
        
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