never ending story (08.11.2007)

先月、エアバス社の誇るA380の最初の1機が、予定より1年半遅れてシンガポール航空に納入された。フランスのToulouseで行われた晴れ晴れしいセレモニーではエアバスの親会社EADSの社長、エアバスの社長、シンガポール航空の社長、共に出席して終始笑顔が耐えなかったが、実際のところ、双方共に、心中は穏やかでなかったに違いない。シンガポール航空にしてみれば、30億ユーロもの大金を払って注文した製品が1年半も遅れるなどは考えられない事態であったが、それでもビジネスマンに徹してセレモニーで笑顔を作っていたのは偉い。

エアバスにとってもこの飛行機事業は、とっくに笑える事態ではなくなっている。ここでも再三に渡って紹介した通り、エアバスは生産上の問題で、次から次へと納入時期を遅らせた。その結果、シンガポール航空とはじめ、エミレーツ航空などに払う罰金が膨大な額面になり、エアバスがA380でお金を儲けるなら、最低でも300機ほど売らないと、これまでに費やした費用を回収できない事態になっているからだ。しかし、これまでA380の注文は二桁に留まっており、この世界で一番大きい飛行機は、世界で一番大きい借金を生む出す飛行機となっている。それでも終始笑顔を絶やさず、世界にエアバス社の新製品を紹介した社長の心中は穏やかではなかっただろう。

だがこれは、エアバスの抱える問題のごく一端でしかない。A380の納期が遅れることを知った重役たちは(会社からボーナスで支給され保持していた)持ち株を株式市場で売りまくった。こうした巨額の富を手に入れてから、A380の納期が遅れを発表した。この発表で株価は一気に下落。一時は40ユーロまじか!と思えた株価が一時は20ユーロを割るまでになった。しかし、これは完全なるインサイダー取引で違反行為。しかしEADS(エアバスの親会社で、巨大な軍産複合体)の重役達には、そんなことはどうでも良かった。ところが、運の悪い事にフランスの検察がこれをどこからか嗅ぎ付けてきて、EADSは検察の強制捜査を受ける羽目になった。ことここに至れり、「もうあかん。」と悟ったEADSの社長は、自分で自分の会社の重役のインサイダー取引疑惑を届け出る事態に。このニュースが伝わると、やっと回復しつつあって株価がまた23ユーロまで下落した。

「これでもう膿は全部出た。」と思っていたら甘かった。米国の軍事輸送機C-130に対抗して、EADSは独自の輸送機で対抗することを決定。A430Mという名の下に、軍事輸送機の開発を初め、完成の目処もたたないのに、注文をしこたま取ってきた。結果は言うまでもなく納期の遅れ。11月5日にEADSが納期の遅れ、及びその結果として2007年の赤字が(これまでのA380による赤字に加えて)さらに1千4百万ユーロ増えそうだと、株主にとっては泣きたくなる様な発表をすると、株価はとめどなく暴落して21ユーロまで下落した。

これでEADSのnever ending storyが終わったと思ったら、それはEADSを過大評価している。エアバスはBoeing社の新型旅客機787に対抗する為に、よせばいいのに、またもや新型旅客機A350を開発及び販売中だ。納期は2016年。賢い読者なら、もう結果は見えていることと思う。現にBoeingが787便の全日空への納入の遅れを発表しただけに、これだけ過去の実績があるエアバスに納期が守れるわけがない。結果は、またもや株価の暴落だ。一体、いつになったらエアバスの重役達は、自分達の能力に気づくのだろう。これではバンコクの地下鉄開通*と同じレベルだ。

*タイ王国の首都、バンコクでは日本の融資で地下鉄の導入が決定。賄賂合戦で一向に工事が先に進まなかった。やっとトンネルが掘れたら、まだ入れる電車が決まっていないので、線路も引けず、地下鉄の入り口をまた埋めるとういう必殺技を展開。この被害もろにくらったのはJAL。地下鉄開通を期待して、郊外に日航ホテルを建設。しかし、とっくにホテルはできても、一向に地下鉄が出来ない。郊外の不便な場所にホテルを作ったので、部屋はガラガラ。一向に地下鉄開通の目処が立たないので、JALは大赤字を抱えてこのホテルを売却。Grand Hotel Bankokと名前を変えて、営業を再開、誰もが昔は日航ホテルだったことを忘れる頃、地下鉄がこっそりと開通した。


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A380 納入セレモニーにて笑う役者達


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エアバスの夢を託した軍事輸送機は投資家の悪夢に


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