keine Kohle* mehr (05.12.2007)

EU(欧州共同体)は、新しい形の帝国主義、的確に言えば植民地主義だ。その目的は盟主の利益追求。具体的な例を挙げてみよう。アフリカのスーダンで道端に立っている埃だらけのスーパーマーケットを覗くと、棚は欧州から輸出された製品で一杯だ。逆にスーダンで生産されたものは、ほとんど見かけない。例えば牛乳。スーダンの酪農家が生産する牛乳は、(物価、人件費がが安い国だから)欧州から輸出された牛乳よりも安いと考えそうだが、実際は逆。欧州産の牛乳の方が安く販売されている。何故、そんな事が可能かといえば、欧州から輸出される牛乳及び乳製品にEUが補助金を払って、無理やり価格を下げているからだ。こうしてスーダンの酪農家を破産に追い込み、欧州からの援助漬けにしている。その一方で、欧州で不足する物資、地下資源を安く買い漁っている。本来なら地下資源だけ輸入するものだが、これでは赤字になってしまう。これを回避する為に、欧州の酪農製品を安く輸出して、現地の産業を破壊するわけでなる。これを植民地主義と言わずに、なんと呼んだらいいだろうか。

逆に欧州の酪農家は膨大な補助金をいただくことができて笑いが止まらない。極端な例を挙げてみると、飛行機の機内食。ルフトハンザに乗られた経験がある方なら、必ず食事にヨーグルトが付いてくる。実はこれも補助金の対象。フランクフルトを発つ日本行きの飛行機に乳製品を積めば、事実上、乳製品の輸出となる。そこでルフトハンザは乳製品の「輸出高」に応じてEUから補助金をせしめる事ができる。これは何も日本行きだけではなく、EU外へ飛ぶフライトはすべて対象になるから、年間億単位の補助金をいただくことができるのだ。だからルフトハンザの機内食に乳製品が欠ける事はない。

これだけでも馬鹿馬鹿しい税金の無駄使いだが、その極めつけ(die Kroenung)は、石炭産業に支払われる補助金。その額なんと300億ユーロ。邦貨にして5兆円。この巨大な補助金は、ドイツで必要性がないのに無理やり生産される石炭の値段を抑える為に、又、炭鉱労働者の給料を支払う為に支払われている。勿論、ドイツで石炭の生産を止めて、オーストラリアから輸入した方がはるかに安いのだが、そうなると何万という炭鉱労働者が失業してしまい、結局は失業保険を払うことになる。それは政治家にとってはどうでもいいのだが、これを実施した暁には炭鉱労働者からの支持を失い、政権を失ってしまう。これをなんとしても避けたい(ルール工業地帯で長年政権を握っていた)SPDは、毎年300億ユーロもの補助金を払い続けてきた。

この補助金漬けの石炭産業の現状に呆れた野党の政治家が冗談半分に、「炭鉱労働者に給料を払って、Mallorca**に定年になるまで休暇に送った方が安くあがる。」と言ったくらいだ。そうすれば、せめてオーストラリア産の安い石炭を買うことができるので、ドイツ産の高い石炭に補助金を払う必要がなくなる。しかしそんなことをしては、「なんで炭鉱労働者だけ優遇されるんだ。俺だって定年までMallorcaで過ごしたい。」と他の職業団体からの不満が出てくるのが目に見えているので、この案は惜しくも実現されなかった。

しかし石炭のエネルギーとしての地位はとっくに石油に奪われ、ルール産業地帯には不況の嵐が吹き荒れている。この不況に何も対抗策が打てない政府に、労働者は失望する一方。その結果、21世紀になってSPDは政権を明け渡す羽目になった。新政府はガタガタの財政を立て直す為、炭鉱の段階を追っての廃坑を決定。国会では石炭産業に対する補助金の是非が改めて問われる事となり、2007年11月の最後の日に参議院(Bundesrat)でも補助金の停止が可決され、ようやく馬鹿げた補助金の支給が2018年にて終えることが決定。ドイツの炭鉱の歴史もこれで終わりを告げることとなった。

* Kohle は石炭という意味だが、口語では「お金」という意味になる。

** 日本人に一番人気のある海外旅行地と言えば、今も昔もハワイだが、ドイツ人にとっての「ハワイ」はMallorca島。毎年300万人を超えるドイツ人がこの島に観光にやってくる。 ちなみにタイを毎年訪れる日本人の数が、(過去最高で)100万人程度だから、その3倍もの数である。ドイツの人口(日本の2/3)を考えると大変な数だ。だからドイツ人はMallorca島を外国と考えないで、「ドイツの17番目の州」と呼んでいる。これは60年代にドイツの国会議員が「スペイン政府にお金を払ってMallorca島を買い取るべきだ。」と(真面目に)国会で提案したことにこの呼び方は由来している。

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巨大なシャベル(?)で採掘されるBraunkohle

 
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Steinkohleと呼ばれる黒い石炭の採掘現場


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