Unbelehrbar! (17.01.2008)

この星一徹のような頑固一徹の表情、きっと見覚えのある方も多いのではあるまいか。そう、ドイツ鉄道の社長Mehdorn氏だ。この メドン氏の大活躍で、2007年の春先に始まった賃金交渉が、2008年になってもまだ解決していない。(予言通り。)これまで交渉だけは続けられていたのだが、どちらも「1センチたりとも譲らない。」精神の為、12月になって交渉は完全に決裂した。 メドン氏と労働組合の頭(かしら)のSchell氏は犬猿の仲(Todfeind)で、一緒の席に座ることさえ拒否する始末で、無期限ストはもう避けられないように見えた。ここで(惨状を見るに見かねた産業界から圧力を受けた)政治が介入した。労使間の交渉は交通省大臣であるTiefensee氏が当たる事になり、氏の仲介で極秘の会談が行われた。会談の日時も場所もその会談の内容も一切、外部に出てこないという厳重な警戒ぶりだった。

と言うのも過去、交渉がまとまりかけるとメドン氏が新聞記者にべらべらと交渉内容を明かした為、Schell氏が怒って交渉を決裂させた経緯があった。労使間の交渉がサインされるまで、双方共に沈黙を約束していたのだが、 メドン氏は交渉を有利に導く為に、「労働組合の非道な要求」をメデイアに訴えたのだ。このようなことが再度起きないように、Tiefensee氏は双方に絶対の沈黙を誓約させた。だからと言って メドン氏がすんなりと労働組合の要求を呑むようなら、労使交渉が1年も続くわけがない。ドイツ一の頑固者のメドン氏は9%以上の賃上げをガンとして断った。こうしてTiefensee氏の介入むなしく、交渉は決裂したかに見えた。労働組合は1月からの無期限ストを発表、これに負けじと メドン氏は労働裁判所にストの禁止の訴えを申請した。

ところが、この一件にはメドン氏とSchell氏の面子の他に、交通省大臣であるTiefensee氏の政治生命がかかっていた。Tiefensee氏は(東ドイツ出身の人間を是非、一人は大臣にという理由で)今回始めて大臣に就任したのだが、仕事ぶりがぱっとしないので、閣僚の間でも更迭が噂されていた。そこで今回のこの大任である。この交渉の決裂は、Tiefensee氏の大臣としての終焉を意味していた。この為、Tiefensee氏は再度、 メドン氏とschell氏を秘密の会合に呼び寄せ、氏の監視の下に交渉が再開された。Tiefensee氏にとって、労働組合の要求が妥当なものかということは二の次で、自身の政治生命を救うことの方がはるかに重要だった。なんとしてもストを回避したい(自己の政治生命を救いたい)一心で、 メドン氏をぎゅうぎゅうに締め上げて、賃金11%アップという前代未聞の要求を無理やり飲ませてしまった。

労使間の交渉が10ヶ月の交渉の末、合意に達したと報道されると、このニュースは1月14日のトップニュースを飾った。が、Tiefensee氏は メドン氏の頑固ぶり(Unbelehrbarkeit)を十分に理解していなかった。無理やり契約書にサインをさせられたメドン氏は、憤りで腸が煮え返って夜も眠れなかったらしい。そこで一夜明けると メドン氏は(子供じみた)逆襲に出た。「法外な賃金アップの為、ドイツ鉄道は運賃の値上げをする以外に方法がない。又、人員削減も避けられない。」と記者会見で言ってしまった。ちなみにドイツ鉄度はすでに12月に運賃値上げを実行したばかりで、その1月後にまた値上げをすると言うのである。これは民衆の怒りを買い、選挙が近いので 点数を稼ぎたい政治家も声高にこれに同調した。これに加え、ドイツ鉄道は労働組合員に対して2010年までの雇用の保証をしている。これを一方的に反故にするこの メドン氏の声明は、この雇用契約の明らかな違反であった。これを聞いて黙っているSchell氏ではない。早速、声明を出して、「 メドン氏が組合員を首にするなら、無期限ストしか対抗策はない。」と発表。やっと10ヶ月ぶりに解決したと思えた労使交渉が、また振り出しに戻った。

流石にここまで来ると、政界からはメドン氏の子供じみた対応に非難が集中した。契約書にサインをしておきながら、これを後から撤回するようなことを平然と言う人間を、ドイツ鉄道の社長にしていいのか?というのである。野党は声高に メドン氏の辞任を要求しており、メドン氏は四面楚歌の状況だ。この救いようがないまでに頑固(unbelehrbar)な メドン氏が、この一件で考え直すか、それとも最後まで頑固で突き通して、社長の座を首になるか、まだしばらく喜劇が続きそうな雲行きだ。
          

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unbelehrbar(頑固一徹)

 
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