成功する企業買収  (15.09.2008)

今回は2ヶ月ほど前にここで紹介した企業買収について、その後の発展を紹介してみたい。最初はコンチネンタル社の買収について。同社は敵対買収こ必死に抵抗したが、如何せん、時期(相手)が悪かった。相手に30%を超える株式を握られてからの買収には対抗する術もなく、コンチネンタルはシェフラー一家に買収された。社長は潔く負けを認めて辞任を表明した。当初の予測では世界で第3の規模の自動車部品メーカーの誕生となるはずだったのだが、2007年の販売高で計算すると、世界第3ではなく、世界で一番大きな自動車部品メーカーが誕生した。これによりシェフラー一家の本社のある田舎町Herzogenaurachは、Adidas、Pumaに加え、3つ目の世界企業が誕生することになり、この町は好景気に沸いている。失業率は低く、町の財政はこれらの企業(とその従業員)が払う税金で潤い、人も羨む地方自治体になった。日本で言えば、トヨタの本社のある豊田市みたいなもの。

2008年は株価低迷の年。株価が低迷を続けているので、他にも買収の対称になっている会社がいくつもある。その中でもっとも劇的な買収劇&防衛劇を展開しているのはAWDによるMLP買収だ。AWDとMLPは共に財産管理を提供している会社で、ライバル関係にある。MLPは以前は彗星のように会社が拡張して、DAXに上場されていたが、急に拡張した会社の例に漏れず、その後、会社の運営が悪化、DAXから降格して今はMDAXに上場されている。AWDの特徴は、なんと言ってもその社長のMaschmeyer氏に尽きる。氏はドイツで一番大きな財産管理会社を築くことを目指して28歳の若さでAWDを築くと、独力で会社の業務を着実に拡大していき、ドイツどころか、欧州でも有数の財産管理会社を築いてしまった。

ただしその方法は、法律違反すれすれの怪しげな方法であり、良心のかけらもないその商売方法には非難も多い。そのマシュマイヤー氏の現在の目標は、ドイツでの保険市場の占有率を拡大する事。これに邪魔なのが、一時の規模を失ったとはいえ、まだまだ大きなMLPだ。この障害を克服するには、同社を買収してしまえばいいのだが、ドイツの法律では敵対買収を未然に防ぐため、3%の株を所有したなら、その旨、届け出る義務がある。しかし、たった3%しか取得していない状況でこれを発表してしまうと、買収対象の企業は自社の株を確保して、敵対買収が不可能になる。この法律の抜け穴をうまく利用したのが、コンチネンタルの買収劇で見事な手腕を見せたシェフラー女史だ。女史は複数の取引先銀行にその目的を言わず、コンチネンタルの株を買わせた。勿論、銀行名義で2.9%まで。これらの株があわせて30%を超えてから、買収のオファー(王手!)をしたので、コンチネンタルの社長が怒って徹底抗戦したのも無理ない。

マシュマイヤー氏にとって、この買収劇は「天からの恵み」だったに違いない。MLPの大株主とコンタクトを取ると、株式市場の閉まっている夜中にこっそりと株を大株主から買い取ってしまった。翌日、株式市場がオープンすると、マシュマイヤー氏はMLP買収目的で同社の株を27%保有したと発表した。MLPにしてみれば、「寝耳に水」。即日記者会見を開くと、MLPの社長はマシュマイヤー氏の「汚い手段」を非難、こうした法律すれすれの買収に対して、徹底抗戦すると告げた。実際の所、これをやられると、買収をかけられた会社には事実上、「王手!」状態で、あまり対抗手段がない。しかし、まるっきり手段がないわけでもない。株式会社運営の教科書にも書かれている通り、敵対買収に合った場合、会社が発行している株の数を倍増して、買収先が保有している株の保有率を下げる防衛手段がある。もっともこの方法を取ると株価が暴落して、会社の存在の危機になりかねないので、諸刃の刃でもある。だからコンチネンタルのような大企業はこうした対抗手段を取れなかった。しかしMLPはまさにこの教科書に書かれている対抗手段を取った。お陰でこの敵対買収は座礁して、水面下での取引(話し合い)が行われている。

この機会に、先回書き損ねたCommerz BankのDresdner Bankの買収について紹介してみたい。この買収は、Commerz Bankにとってドイツ国内での地位を確立させて、ドイツ銀行に対抗できる銀行を作り上げる事ができるという戦術的目標があった。以前、AllianzはDresdner Bankの買収に210億ユーロを払ったが、今ならその半分以下の大バーゲンでDresdner Bankを買収できる絶好の機会でもある。しかし猛威を奮う金融危機の為、そのバーゲン品さえ買う金がないのが玉に瑕。そこでCommerz BankはAllianzに対して現金ではなく、Commerz Bankの株でこの費用を払おうとした。これに一番喜ばなかったのは、Commerz Bankの株主だ。Commerz BankはDresdner Bankの買収の為に、株の数を倍増しなくてはならず、そんな事をすれば、すでに暴落して底値にある株価がさらに暴落する恐れがある。そんな中、中国開発銀行(china development bank)が、「現金で高価買い取ります。」と言い出したので、Commerz Bankの株主は大喜びした。しかしこれに本当に大喜びしたのは、Dresdner Bankの社員だった。ドイツにお住まいの方ならご存知の通り、Commerz BankとDresdner Bankは、ほぼ同じ支店網を持っている。往々にしてCommerz BankとDresdner Bankは、同じ通りにある「お隣さん」だ。この両行が合併してしまうと、同じ銀行の支店は二つも必要ない。当然の成り行きとして、Dresdner Bank支店は閉鎖に追い込まれ、社員は首になる。特にDresdner Bankの(大赤字を出した)投資部門、Dresdner Kleinwortは閉鎖されてしまい、ここで働いている行員は一人残らず首になる。しかし、中国の銀行がDresdner Bankを買うと話は違ってくる。中国開発銀行は顧客獲得の為、すべての支店を保持して、個人客の獲得に乗り出すだろう。またAllianzにしても、かって270億で買収した銀行を70~80億のはした金で売るよりは、中国人に100億ユーロを超える現金で売ったほうが余程よかっただろう。このため、Dresdner Bankの中国への売却の可能性が非常に高いと推測された。

ところが蓋を開けてみると、Dresdner BankはCommerz Bankに98億ユーロで売却が決まった。よりによって銀行員としてのキャリアをDresdner Bankで積んだCommerz Bankの頭取は、Dresdner Bankの名を抹殺して、Commerz Bankの名前に統一すると発表、これにより何千人もの銀行員が職を失う事となった。このニュースが伝わると、Commerz Bankの株価は予想通り10%以上も暴落、新たな底値を更新した。金融危機で現金が喉から手が出るほど欲しい親会社のAllianzが、現金払いが可能な中国人ではなく、何故Commerz Bankを売却先に選んだのか、不思議に思われて仕方ない。これには、ドイツ政府が一枚絡んでいるようだ。ドイツ政府はこの買収劇の前に、ドイツ企業が外国の投資家に買収されることを禁止する法律を国会で成立させた。この法律は、ドイツ企業が今の安価な株式市場の為、外国の投資家に買収され、ドイツの技術が外国に「盗まれてしまう。」のを防ぐ目的があった。この大急ぎで国会で可決された法律から見て取れるように、ドイツ政府はドイツを代表する銀行が中国人に買われてしまうのをよしとしなかった。そこで当初予定された売却額を70~80億から、98億にあげさせて、Commerz Bankへの売却を示唆した。
          
このドイツ政府の(隠れた)介入は、人種偏見と見られても仕方ない。ここでも紹介した通り、ドイツのCiti Bankがドイツ銀行ではなく、フランスの銀行に売却された際、ドイツ政府は一切介入しなかった。しかし、中国人がドイツの銀行を買おうとすると、政府が介入してきた。以前ここで紹介したIKB売却の際でも、中東、アジアからのオファーを拒否して、米国の投資家グループに売却されたことを考慮すると、これは偶然の成り行きでなく、明らかに白人を買い手として優遇している構図が見えてくる。


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Contiをただのタイヤ製造会社から、自動車部品製造会社に育て上げたWennemer氏。


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この顔見たら要注意。マシュマイヤー氏のトリックで老後の蓄えを失った国民は多い。

        
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