国民栄誉賞 (20.10.2008)

先週、ドイツ政府はたったの1週間で4800億ユーロにも上る銀行救済法案を国会で通過させ、大領領の承認(サイン)を得て、法律を設定してしまった。おそらく(戦後の)ドイツ史上、最も早く成立した法律だろう。なぜそんなに急いだかと言うと、何処かの銀行がHREのように支払不能になるのを未然に防ぐ為。これにより10月20日以降、銀行はこの法案に沿って政府から金銭的援助を受けれることになった。ただこの救済法案、条件(罰則)が厳しく、これを申請するのは、余程金に困ったの銀行だけだろう。もし株式市場に上場している銀行がこの法案の適用を申請するなら、それは会社更生法の適用を申請するに等しく、株価の大暴落を起こして逆効果になりかねない。ただ、すでにこの救済を申請すると公に声明を出しているバイエルン州のLB等、株式市場に上場していない銀行にとっては救済になる。果たしてこの救済措置がどれほどの効果をもたらしたのか(あるいはもたらさなかったか)、いずれここで取り上げるとして、今回はこの金融危機や政治の出来事に追われて紹介できなかった出来事を紹介してみたい。

いつ終わるとも知れない話題を提供してくれるのは、ドイツとフランスの合作であるEADS社である。EADSの一部門に航空機事業(エアバス)があり、新型旅客機の開発で大きな問題に直面しているのはここですでに何度も紹介した通り。しばらくエアバス社の活躍について紹介しなかったので、「ちゃんと仕事をやっているんじゃないか?」と心配された方もおられるかも知れないが、心配はご無用。スキャンダル、問題に次ぐ問題で、いい加減、紹介するのが面倒になっていただけの事。話題が多すぎてどれから手をつければいいのか、、。とりあえず、思い浮かぶ順に紹介していこうと思う。

EADSの社長にForgeardというフランス人が就任していた。社長だから、当然、社内の事業の発展(の遅れ)については、よく知っている。氏は2005年の時点で、すでにA380の開発が大幅に遅れており、計画通りに飛行機を完成(納入する)させる見込みがない事を知っていた。しかし、これを法律で定められている通り発表してしまったら、(自分が保有している)会社の株価が暴落してしまう。そこでForgeard氏はまずは社内で重役にこれを知らせると、重役達が保持している株を売却して利益を確保した。その後、大株主のメルセデスなどにこっそり内部情報を漏らして、株を売ぱらう事を暗示した。それから2~3ヶ月経って氏は、飛行機の完成が大幅に遅れていることを発表、株価は当然大きく暴落した。

その後、氏は大金を手にして引退、悠々自適の生活を送っていたが、フランスの株式監視員会から報告を受けて調査をしていた検察は、2008年5月に氏をインサイダー取引の廉で逮捕してしまった。EADSは言うなれば、フランス(とドイツ)の国営企業だ。その(元)社長が逮捕されてしまったのだから、検察にはよほどしっかりした証拠があったに違いない。そうでなければ、政界から圧力がかかって、この一件は闇に葬られていたに違いない。社長がこのていたらくだから、会社の内情は推して知るべし。以下に新聞のトップを飾った記事だけを紹介してみよう。

まずは契約から18ヶ月も遅れてシンガポール航空にやっと納入されたA380。この飛行機の緊急時の退避に使われる「滑り台」を膨らませるガスがしばらくすると分解されてしまい、役に立たなく事が判明。そこでエアバスは70回目のフライト毎にガスの交換を必要とすることを、シンガポール航空に遅ればせながら通告した。これに(納入式典ではまだ笑顔を作っていた)シンガポール航空の社長が喜んだはずがない。飛行機は「飛んでなんぼ。」のものである。飛行機が12時間の長距離飛行から戻ってくると、2時間後には新しい乗客を乗せて飛び立つ。これを繰り返すことにより、航空会社はやっとお金が儲かる。逆に地上待機(整備)している時間は、ただのロスでしかない。それなのに、たったの70フライト毎に整備が余計に必要になるのだから、これはさらにこの飛行機、ひいてはシンガポール航空の採算性を悪化させることになる。

その後、記念すべきA380の二機目がエミレーツ航空に勿論、遅れて)納入された。エミレーツ航空はこの新型機をニューヨーク路線に導入する予定だったが、A380はドゥバイ到着後、電気系のトラブルで一度も飛ぶ事ができず、地上待機を余儀なくされていた。エアバス社は、30人の技術者を至急ドゥバイに派遣したが、「多分、ニューヨークに着いた時点で壊れるだろう。」と的確に判断、ニューヨークにも30人の技師を派遣、A380の到着を待っている。(そんな飛行機にだけは乗りたくないものだ。)

米国空軍が、新しい給油機(179機)の公開入札を行った。大方の予想を外れて、この巨額の契約を獲得したのは、エアバス社だった。「なんだ、エアバスもやればできるじゃないか!」と新聞、ラジオ、テレビのトップを(今度は)ポジテイブな記事で飾り、株価は1日で8%程も上昇した。ところが(これまでのこの会社の功績を忘れて)手放しで喜ぶのは浅はかだった。まず公開入札で負けたボーイング社が議会に抗議したが、これを聴く人はあまり多くなかった。ところがその後、エアバス社が「納入の際に提示した値段は、計算間違いでした。」と(情けない)声明を出すに及んで、米国空軍も流石にボーイング社の抗議を受け入れて、公開入札をやり直すことを決定。ところが抗議を入れたボーイング社は、新しい飛行機ドリームライナーの開発で大きなトラブルに見舞われており、他の事業への余裕がない。そこで、「新しい公開入札を6ヶ月先に延ばして欲しい。」と声明を出し、公開入札をする企業が入札の時期を逆に指定するという異例の事態。ところが米国空軍は議会の圧力に負け、このボーイング社の要求を呑んでしまう。これによりエアバス社が、この契約を入札する可能性は事実上なくなった。

上述のエアバス社のこれらのトラブルは、これから紹介するトラブルに比べれば、まだ「マシ」な方。エアバスが開発している軍事上輸送機A400Mだが、この9月に(まずは)納入が6ヶ月遅れることが判明した。エアバス社の(新しい)社長は、この飛行機を注文している各国政府に手紙を書いて、「納期遅れの為に発生する違反金の支払いを(赤字経営で苦しいので)、反故して欲しい。さもなければ、この飛行機の製作は不可能である。」と脅迫とも嘆願とも思える手紙を書き送った。エアバス社のこれまでの立派な業績を見る限り、この飛行機の製作、納入に関して今後のエアバス社の「話題提供」には大いに期待できそうだ。

ちなみにドイツ政府はこうしたエアバス社の数々の功績を称えて、エアバス社の社長Camus氏にBundesverdienstkreuzという勲章を贈った。(冗談ではなく、本当に。)一体、どういう選定基準を採用したら、エアバスの社長に勲章を贈ることが可能になるのか非常に興味のある所だが、この勲章を氏と一緒に受領した他の受章者の心中は、おだやかではなかったに違いない。

編集後記
案の定、米国空軍の給油機の注文は、ボーイング社に決まった。形だけの公開入札など行わないで、最初からボーイング社に受注した方がよほ手間隙を節約できだだろう。

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問題その一A380。


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問題その二A330。


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問題その三A400M。

        
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