景気後退 (16.11.2008)

これまで「間違いなく来る。」という人もいれば、「ドイツには来ない。」という人も居て、意見が真っ二つに分かれていたのがドイツにおけるRezzesion(景気後退)だ。状況がはっきりしないので、株式市場が不安定になっていたが、11月13日にドイツの第三期の経済成長率が発表されて答えが出た。ドイツの経済成長率は、第二期のマイナス0.4%に続き、第三期もマイナス0.5%の経済成長率、つまり二期連続マイナスの経済成長率を記録して景気後退がamtlich(公式)になった。いい点は、これで景気後退(不景気)が来るか、来ないか、という不安がなくなった事。悪い点は、これから企業の業績がますます悪化、結果として失業者が増えていく事だ。そこで政府は(来年の総選挙も考慮して)景気対策を発表した。

ドイツ政府の景気てこ入れ政策の第一弾は、環境にやさしい新しい自動車を購入したら、自動車税を節約できるというもの。この景気てこ入れ政策は、あらゆる経済団体、専門家から「全く役に立たない。」と非難されていたのだが、工場閉鎖にあえぐドイツの自動車及び自動車部品メーカーの嘆願が功を奏して、国会を通過、法律となった。大体、景気が悪く、失業の心配をしている人に、「今300万の新車を買えば、税金が2万円節約できます!」と言っても、説得力はないだろう。しかし、それでもこの法案を通する必要があるほど、自動車(及び部品)業界は厳しい状況にある。

ここでも紹介したのでご存知の方も多いドイツ政府の銀行救済案だが、政治家が残業と早朝出勤をして記録的な速さで法律を施行したのに、破産寸前であるHREを除いて、2週間経っても(LBなどの公的銀行を除き)誰も申請しないといという不評ぶり。あまりの人気のなさに怒ったに首相は、「使ってもらうために、作ったのだから使いなさい。」と何度もアピールをするのだが、ドイツ銀行の頭取の言葉がダモクレースの剣のように、国の助けを申請する銀行の上にぶら下がっていた。このタブーを最初に破って国に助けを求めたのは、大方の予想通りCommerz Bankだった。金曜日の夕方に、「来週Commerz Bankが救済案の申請をしそうだ。」とのうわさが広まると、Commerz Bankの株価はまた大暴落。多分、これで頭取も救済案を申請しやすくなったのかもしれない。月曜日に政府に救済案の提供を申請したことを発表すると、株価は(今度は)上昇した。

その他にはたったひとつのプライヴェート銀行が、この救済案を申請したに過ぎない。数週間で用意した救済額を使い果たしてしまった米国と違って、ドイツでは未だにこの救済案は人気がなく、まだ政府の用意したお金はたんまり残っている。ここにドイツの自動車会社は目をつけた。BMWにせよ、メルセデスにせよ、顧客の自動車購入を融資するために、独自の銀行を抱えている。そこで、この銀行を使って政府のお金を借用、日本製の車に先を越されたハイブリット車と電気自動車の開発費に充てようとした。

ドイツの大企業に特有の現象だが、ドイツ企業はあまりに誇りが高いので、原油の値段が上昇を続けても、これまでの路線を変更するのをかたくなまでに断り、ガソリンとデイーゼル車の開発、販売に専念した。日本の車メーカーがハイブリット車の販売を開始すると、「我が社のデイーゼル車の方が優れている。」として、一向に真面目に取らなかった。(こっそり研究開発を始めたが。)ところが、ガソリン代が1リットル240円を超えると、その優れている筈の自動車の売り上げが激減した。そこでしぶしぶハイブリット車と電気自動車の開発を本格的に始めるのだが、時遅し。経済危機の影響でガソリン代が安くなっても消費者は将来の不安から車の購入を控えるようになり、必要な開発費が欠けることになった。そこで、これまでの怠慢を棚に上げて、すべて経済危機のせいにして、国から補助金をせしめようと考えた。

とは言え、ドイツにもちゃんと先を見ている企業家、発明家が要る。特にこの傾向はドイツの中小企業に強い。Rufという車のチューニング会社が、世界初の電気駆動のポルシェ911を開発した。電気駆動にもかかわらず204馬力、最高速度225km/h、一回の充電(家庭のコンセントから)で250~320km走破できるというから、ガソリンエンジンと比べても遜色ない。社長のRuf氏によると、「電気駆動のポルシェを作ろう!」とプロジェクトを立ち上げた当時は笑い者になったらしい。車にうるさい人に言わせれば、「スポーツ車はエンジン音が魅力なのに、電気駆動にするとまったくエンジン音がないので、そんな車は誰も買わない。」と、もっともな理由があった。にもかかわらず、研究開発を進めた氏の決断は正しかった(ドイツ人は頑固なので周囲の意見に左右されない。)ガソリンの高騰、経済危機が悪化するにつれて、環境にやさしく、維持費のかからない自動車が求められるようになったが、ドイツの大企業が国からの補助金でこれから始めようとした事を、中小企業がすでに開発してしまった。

又、この一行に収まる気配のない金融、経済危機だが、危機が長引くにつれていろんな方面に影響が出て来ている。例えば、以前はここで着実な商売をしているとして紹介したポスト バンクだが、Leemann Brothersにかなり投資しており、最後の最後までこの銀行が倒産するとは思わなかったらしい。Post Bankは最後までお金を投資したままで、結局4.5億ユーロの損失を計上することになった。あのルフトハンザも原油価格の高騰に対処する為、Leemann Brothersを通して外貨の変動に対応していたのだが、銀行の倒産により思わぬ損益を計上する羽目になった。ところが中にはKriesenmanagment(危機管理)のしっかりした銀行もあるもので、Deutsche Bankは、唯一のドイツの銀行として第三期の決算で黒字を計上した。どうも去年の金融危機の悪化時点で腐っている、あるいは腐りかけている米国への投資の処理を、損益を承知で指示したようだ。当時は、誰もLeemann Brothersが倒産するとは思ってもいなかったのに、Deutsche Bankだけは危険を読み取って、Leemann Brothers関係の投資も含めて米国関係の投資はすべて処理していたのだから大したものだ。

編集後記
経済危機が終焉して、その後の後片付けが始まった。米国では金融危機を起こした下手人探しが始まり、Goldman Sachsなどの投資銀行に限らず、Citiグループなどの銀行にも、目がくらむような罰金を課されることになった。これにはドイツ銀行も例外ではなかった。ドイツ銀行の「先見の明」を当時は褒めたが、実際には、ドイツ銀行は不良債権を販売した張本人であった。不良債権を販売した張本人だから、これが紙屑になる事を真っ先に知っていたわけだ。


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一件、「普通」のポルシェですが、


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電気駆動です。


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