Nicht Kleckern, sondern Klotzen!* (01.12.2008)

不景気になると政府の景気対策に企業の期待が高まる。一部の経済学者に言わせると、「政府の景気対策は効果ゼロ。税金の無駄使い。」という意見もある。確かにドイツ政府が景気てこ入れ政策の第一弾として導入した自動車税の免除は、この範疇に入る。しかし、ドイツには30年代に政府の画期的な経済政策で失業を退治した功績もあり、「あの奇跡をもう一度!」という望みも捨てきれない。しかし今のドイツ政府は、景気後退のど真ん中にあっても「最優先課題は国家財政の建て直し。」という経済の調子が良かった頃の目標を未だに掲げており、「そんな事で大丈夫なんだろうか。」と、いささか心細い。そこでここでは欧州各国の景気対策とドイツ政府の(これまでに発表された)景気てこ入れ政策を比較してみようと思う。

まずは、「飲み込むのが遅い。」として有名な英国。英国は世界で活躍(暗躍)するヘッジ ファンドの本拠地であった為、景気後退がかなり早い時期に明らかになったという利点(?)があるが、猛威を奮う不景気対策として英国政府は、237億ユーロもの景気てこ入れ政策を決定した。その対策の「目玉商品」は、現在17、5%の消費税を15%に(期間限定で)下げるというものだ。だいたい政府というものは、何処の国でも選挙前にならないと、減税しない。にもかかわらず、政府がこの処置を決定したのは、それほど経済状況が芳しくないことが理由になっているだろうが、それにしてもあの行動が遅いことで有名な英国政府が、欧州で真っ先に消費税の減税、しかも欧州で最大の経済てこ入れ政策を国会で可決、導入したのだから立派なもの。

次は今回の金融危機の発信源となった米国を見てみよう。米国経済についての(ドイツの)経済アナリストの意見は一致していて、「売国は真っ先にこの金融危機を克服するだろう。」と言われている。これは米国が真っ先に金融危機に陥ったので、その回復も早いという理屈ではなく、その根拠は米国政府のリベラルな経済政策にある。資本主義の旗手である米国は、経済が軌道から外れるとかなりリベラル(極端)な政策を取る。かってレーガン大統領の時代にインフレが二桁に上った際、米国では公定歩合が14%というまるでBananenrepublik顔負けの政策でインフレを退治してしまった。今回の不景気でも、米国はリベラルな経済政策を取る国の名に恥じない7000億ドルの景気てこ入れ政策を予告している

ところが今度はもっと上手が居た。中国政府は1.2兆ユーロもの景気てこ入れ政策を発表した。中国は世界の工場として世界第二の輸出大国になっている。つまり景気が低迷すると輸出に依存している中国経済の急速な冷却化が懸念される。これを国内需要で緩和するべく、この巨額の経済政策となっている。なれば当然、世界一の輸出量を誇るドイツでは、中国を上回る経済政策は不可能だとしても、英国程度の経済政策を期待したいところだが、ドイツ政府は40億ユーロの経済てこ入れ政策を発表して経済界をがっかりさせた。** 破産しかけたIKBの救済だけでドイツ政府はすでに10億ユーロもの大金(公的資金)を投入しているのに、景気てこ入れにはたったの40億ユーロしか予算がないという。この額面は、英国が導入する金額の1/6、米国の1/135で、中国の1/230である。ちなみにこの額は国内総生産高のたったの0.15%。これを経済的(ケチ)と謂わずして、何と呼ぶべきか。

この経済てこ入れ政策を発表した大蔵大臣のSteinbrueck氏によれば、「今回の景気後退がどのくらいドイツ経済に影響を及ぼすか明確にわかっていない以上、これ以上の経済政策は必要ない。」との事。早い話が、「火がまだくすぶっているうちは、消防隊を派遣する必要はない。」というわけだ。火事が大火事になってから消防隊を派遣しても、一旦、勢いを得た火事はそんなに簡単に消せるものではないのだが、無駄に使う水(金)がもったいないらしい。しかし、実際には他の理由もあるのかもしれない。ドイツ経済は極端に輸出に依存しているので、減税で国内需要を少々活性化した程度では、不景気は克服できない。しかし諸外国で景気が回復すれば、ドイツの経済(輸出)は自然に回復する。そこで、自らはお金を使わないで、各国政府が発表している経済活性化政策にて、需要(ドイツ製品への注文)が回復するのを期待しているようだ。早い話が、「人事を尽くして天命を待つ。」ではなく、「座して天命を待つ。」ということになる。又、ドイツでは総選挙が2009年10月なので、今、減税政策を施行しても10月には忘れられてしまう。それよりは2009年9月まで待って、この時点で選挙の公約として減税を唄う方が得票につながるとも思っているようだ。なんとも身勝手で、頼りない方針である。

ドイツの左翼政党にかっての東ドイツ政府の協力者として働いていたという容疑をかけられているGisiという議員が居る。彼の過去の「業績」はともかく、氏は事態を短い言葉、で的確に要約できる政治家として(も)有名だ。氏はこのドイツ政府の消極的な態度を非難してNicht Kleckern, sondern Klotzen!と演説を締めくくり、ドイツ国民の喝采を受けた。ここに氏の演説をリンクしておきますので、興味のある方はどうぞ。一番面白いのは最後の部分なので、時間のない人は最後の部分だけでも、是非、聞いてください。

* なかなか日本語に訳し難いが、「小出しにするのではなく、一気に吐き出せ!」といった感じのドイツ語で、いろんな場面で引用されるドイツ人の好きな慣用句のひとつ。

**ドイツ政府は130億ユーロの経済政策を発表したが、これは「2010年が終わるまでにこれだけの公共投資をします。」というもの。2008~9年に計画しているのはたったの40億ユーロ。2010年が終わる頃には、今回の経済危機、不況も回復されているだろうから、火事が消えてしまってから(すべて燃え尽きた後で)水をかけても意味がないと思うのだが、ドイツ政府だけは別の考えらしい。


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世界経済を救う事ができるか?頑張れ中国!

 
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