Bad Bank (10.07.2009)

今の視点で過去の決定、発言、行動を非難するのは、公明正大なやり方ではない。後から「こうすれば良かったのに。」と、言うのは容易だ。しかし、今のドイツ政府の采配、いつも手遅れになってからやっと行動に移る、は目に余る。幾つか政府の政策の転換例を紹介してみるので、果たしてドイツ政府は「正しく」行動、決定しているのか、読者の皆様に判断してもらいたい。

ご存知の通り、現在の大不況の原因となった金融危機は2008年の9月に悪化した。これに際して英国政府はすでに11月に消費税を下げるなどの対策を取ったが、ドイツ政府は状態を監視することに決定、大蔵大臣は「政府の優先課題は財政の建て直しにある。」と第二段の景気のてこ入れ政策を拒否した。まるで癌にかかって入院している患者に、「まずは風邪を治すのが先決。」と言って、癌が体中に広がっていくのを、手をこまねいて待っているようなものだった。その後、案の定、癌(不景気)が国中に広まって、ドイツ経済が総崩れの様相を呈してくるとに前言を翻して、第二段の景気のてこ入れ政策を発表した(2009年1月)。ところが、患者(ドイツ経済)はすでに昏睡状態。政府は患者を蘇生させるべく、アドレナリン(財政援助)を次々に注入する。(HRE,Opel Quelle,Heidelberger Druckなど注射を必要をとした企業の数知れず。)こうして大蔵大臣が目論んでいた財政再建は、木っ端微塵になった。それどころか国の2009年度の新しい財政赤字はドイツ史上初の500億ユーロに達し国の財政赤字の総計は空前の1兆7200億ユーロという天文学的な数字に昇ることになった。ちなみに我が祖国日本は、このドイツの財政赤字の3倍、あの破産寸前のギリシャの国家赤字の2倍という、先進国で最悪の財政赤字を誇っている。

不況が広まっていく中、銀行は政府が用意した救済案を申請するのを大いにためらった。国の助けを求める銀行には、取締役員のサラリーの大幅減額、ボーナス、及び株式への配当金の支払いが禁止になる厳しい罰則を課していたからだ。この為、銀行は中央銀行から安い金利でお金を借りると、これを銀行の金庫に仕舞い込んで、企業への融資を断ることにより、金融危機を乗り切ろうとした。結果、融資が受けれず、あるいは融資が突然解約されて支払不能に陥る企業、融資がないので会社の規模を縮小する企業が数多く出てきた。このままではますます不況が悪化、慢性化してしまう。経済専門家は、銀行救済案の申請者に課せられる罰則を軽減するか、米国のモデルにならってBad Bank制度を導入して、不良債権を銀行から買い取るように勧めた。しかし大蔵大臣は、「(銀行が)ミスをしたのだから、その責任を負うのは当たり前だ。」とこの提案を蹴った。こうしてドイツの企業は融資難にあえぐことになり、不況はますます深刻化した。

2008年11月の時点では、ドイツではまだ楽観的で、「2009年の経済成長は0.2~0.6%」と、経済がわずかながら成長すると見る「専門家」が多かった。唯一、ドイツ銀行の経済専門家だけは「2009年には経済成長率が5%低下することもある。」と発表すると、(税収入に期待している)大蔵大臣は、「2009年の経済成長率は1、2%可能だ。」と見解を出し、「経済危機を大袈裟に報道するのは避けるべきだ。」と言い放った。しかし蓋を開けてみれば、状況はもっとひどかった。2009年4月にはその政府が 、2009年の経済成長率をマイナス6%に下方修正した

ここまで来ると物分りの遅い大蔵大臣も、他に方法がないことを悟った。米国の例にならったBad Bank法案は、よりによってこれまで最も声高に批判、反対していた大蔵大臣により国会に提出された 。これ以上の皮肉、かつ、ドイツ政府の先見の明の欠如を証明する事実はないだろう。この法案が7月3日に可決されると、不良債権を一番多く抱えていると噂されているCommerzbankの株価は1日で20%も上昇して、どれだけ多くの紙屑が銀行の金庫に埋まっているかを如実に示した。

不況が深刻化するとドイツでは「第三弾の経済活性化政策を実施すべきだ。」という声が(無責任な野党から)聞かれるようになった。「そんな金はない。」と突っぱねていた大蔵大臣だが、次々と倒産していく企業、業績が悪化して雇用者を解雇する企業が出てくると、また 転進した。こっそり企業の財政負担を軽減する法律を国会に提出して、可決させてしまう。勿論、面子があるから経済てこ入れ政策第三弾とは呼ばないで、「企業の負担軽減政策」と読んだ。

今の視点で政府の過去の間違いをああだの、こうだの非難するのは、公明正大なやり方ではない。しかし、政府(大蔵大臣)は、きっぱりと拒絶した政策を、後から遅ればせに承認するという行動に終始しており、現在の状況を一向に把握してい るとは思えない。嵐の中で船長が方向変換ばかりしている現状を見ると、乗客(納税者)としては気が気ではない。それとも「日本の状況はもっとひど い。この空前の財政赤字を目にして、政府与党が今年9月の総選挙に向けて「(政権を担当する暁には)減税します。」と公言しているのを聞くと、「何処まで納税者を愚弄するのか。」という気分にさえなってくる。


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ここに集められた不良債権は、一体、何処に行くのだろう。

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