景気後退、底を打つ。 (21.08.2009)

8月13日に発表された統計によると、ドイツとフランスの経済は4月~6月の間に0.3%成長した。(スロバキアではなんと2.2%の成長率)これにより1年続いた(統計上の)、「景気後退(Rezession)は終わった。」と、喜ばしい声が聞かれた。不況がとりわけ激しかったスペインや英国(マイナス0.8%)では、まだ時間がかりかかりそうだが、欧州の「大国」であるフランスとドイツで経済成長率がプラスに転じたお陰で、ユーロが導入されている欧州諸国での経済成長率はマイナス0.1%となり、事実上、景気後退は底を打った。(8月17日に日本の統計が発表されたが、日本でも景気後退にストップがかかり、経済が0.9%成長した事が明らかになった。もっともその後、0.6%に修正されたが。)

「なんだ、たったの0.3%ちょっぴり。」と思われるかもしれないが、1月~3月はマイナス3.5%の経済成長率で、二期目の経済成長もマイナス成長が予測されていただけに、この数字は大きな意味がある。さらには経済アナリストが口を揃えて、「最初にRezessionから脱出する(西欧)国は、米国だ。」と言っていただけに、ドイツとフランスが米国の先に経済回復を果たしたのは注目に値する。

政治家は「政府が導入した景気対策のお陰で、、。」と自画自賛をしていたが、これが原因ではない。原因のひとつは回復した輸出にある。5月から6月にかけてドイツの輸出高は、前月比で7%も上昇した。ドイツの工業製品の競争率の高さが、景気回復に大幅に貢献した。これに消費者の消費に対する意欲が一向に衰えていない事も加わった。原油価格が大幅に下落した為に、ガソリン代に消えていたお金がお財布の中に残るようになり、消費者は喜んでこれを消費した。こうして国内需要が堅調だった為、経済成長率に貢献した。逆に不況から最初に抜け出すと言われていた米国では肝心の国内消費が冷え込んでおり、景気後退脱出を果たすことができていない。2009年の中国の経済成長率は8%と見積もられているが、中国だけで「世界を救う」事はできない。経済力世界一の米国が回復しない限り、世界経済の回復はなく、10月に発表される7月~9月の経済成長率が、今後の指針を示すことになるだろう。

話しをドイツに戻そう。去年不況が悪化した際、中央銀行が大幅に金利を下げて対応した。経済専門家は、「低金利により、通貨が過剰に市場に出回り、通貨の価値が減少、ハイパーインフレーションを引き起こす。」という論と、「いや、購買力が下がっているので、デフレ-ションになるだろう。」と、まるで性善説と性悪性のようにまるっきり反対の説が、どちらが正しいか、しのぎを削った。ハイパーインフレーション派が30年代のドイツを例として挙げると、デフレ-ション派は90年代の日本を例として挙げ、どちらの説にも一理あるように思えたが、どうも後者が正しかったようだ。ちょうど8月に発表された7月の消費者物価指数によると、価格は22年ぶりに下降して、軽いデフレ-ションが起きていることが明らかになった。これは安い金利で中央銀行から金を借りた銀行が、企業に融資をしないで、銀行の金庫に仕舞い込んでいるのが原因。市場に金が出回らないので、デフレ気味になっている。「物が安くなって、いい事ずくしではないか?!」と言われるかもしれないが、インフレーションと異なり、デフレ-ションには効果的な対策がなく、これが慢性化してしまうと日本のように「失われた10年」に見舞われる危険がある。

デフレ-ションが長居するかしないか、これは失業率が大きな影響を及ぼす。失業者が増えれば、将来の不安感から消費者は消費を抑えて購買力が下がる。その結果、商品が売れなくなり、価格が下がり、デフレが悪化する。逆に失業者の悪化が食い止められると、安心感から消費者の購買意欲は増し、デフレはストップされて、インフレに変わって行く。7月のドイツの失業率は6月よりもわずか0.1%増加して、8.2%に留まった。この数字だけ見ると、デフレが拡大して行く危険は回避できそうだが、ドイツ(欧州)では4月~10月は季節労働者(わかりやすく言えば、資格の要らないウエイターや工事現場などの肉体労働者。)の雇用が増大する季節なので、まだ楽観できない。毎年、失業率は11月から飛躍的に増大するので、11月以降、また消費者景気指数が落ち込む可能性もある。これに加えて、ドイツでは被雇用者のKurzarbeit(労働時間短縮/労働時間短縮により減額した給与の一部を労働局が支給する。)が可能で、仕事がなくても、職場をすぐには首にならない。しかしKurzarbeitは最大6ヶ月までしか利用できないので、多くの企業ではそろそろ限界に達しており、早期に景気が回復しないと労働者が解雇されるのは避けられない。こうした背景があって、ドイツではこの冬に失業者の数が大台の400万人に上ると見られている。そんな事になれば、これにより国内消費が冷え込んで、デフレが悪化する危険がある。

幸い、政府がこの1月に決定した公共施設への景気対策がやっと実施されつつあり、建築業界では受注した仕事を捌くため、この冬を通して労働者を解雇しないで済みそうだ。不安なのはドイツの輸出の柱である工作機械部門が、相変わらず振るわない点。工作機械が売れないということは、鉄鋼をもっとも多く使用する自動車業界もまだ峠を越していないということになる。とどのつまり、自動車が売れれば、鉄鋼も売れて、工作機械も売れるわけで、ドイツ政府が中古車の廃車奨励金を出した(その後、世界中の政府がこれを模様した。)のは、意味があったのかもしれない。廃車奨励金は8~9月中に底を着きそうなので、9月以降、果たして奨励金なしでも車がある程度売れるか、それとも販売台数が大幅に減少するか、にドイツ経済の回復がかかっている。


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デフレーションの前兆を示す、落下する物価。


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