Wir sind Weltmeister. (28.08.2009)

ドイツ人は世界一(Weltmeister)という言葉が大好き。輸出高世界一(中国に追い越された)だとか、ビール消費量世界一(一人頭。チェコに追い越された。)だとか、サッカーワールドカップ、優勝数世界一(ブラジルに追い越された)だとか、真面目な事から、つまらない事まで、いろんな世界一を集めて喜んでいる。だからドイツ人に「一人頭の国民生産高はドイツよりもシンガポールの方が上。」と指摘すると、「そんな事があるものか!」と、口から泡を飛ばして事実を受け入れるのを拒否されてしまう。このように、ドイツ人の多くは「ドイツ(人)は世界一」と自負しており、外国に負けるというのは我慢ならない。つまらないことでも。ところが「コピーするしか能がない民族」と嘲っていた日本人が、ハイブリットエンジンを開発したのには、驚いた。ドイツ人の反応は、面子を潰された人間がいつも反応するように、「デイーゼル エンジンの方が優れているので、ハイブリット エンジンなんて要らない。」と現実を受けいれるのを拒否した。ところが、こっそりとハイブリッとエンジンの開発に入ったのは、ここで(世界に冠たるドイツ)で、2年ほど前に紹介した通り。その甲斐あって、今回ようやくハイブリット エンジンを搭載したドイツ製の車が販売されることになった。

今回メルセデスに搭載されたハイブリット エンジンはBMWとの共同開発で、日本車(トヨタ)とは異なりリチウム バッテリーを使用している。この為、「世界初のリチウム バッテリー搭載のハイブリットカー。」と宣伝していたが、このバッテリーは20馬力しか発揮できない小さなもので、トヨタのハイブリット車のように、バッテリー駆動で走る事はできない。通常の走行時に、ガソリンエンジンを補助するだけ。しかもこの電気駆動装置は75Kgもあるので、ハイブリットにより燃費は改善されず7.9リットル/100kmに留まる。(理想的な環境下で計測しているので、実際にはこれによりも高い消費になる。)それならハイブリッドの付いてない、メルセデスが開発した排気ガスのクリーンなデイーゼル車(S350,232PS)を買えば、3000ユーロも安い上、燃費は7.8リットル/100kmと、ハイブリットよりも燃費効率がいい。二酸化炭素の放出量もハイブリットの186グラム/100kmに比して、199グラム/100kmと、環境面でも大差ない。つまる所、「ドイツ最初のハイブリット車!」という以外、何のメリットもない車である。勿論、そんなことを正直に書いては車が売れないので、「環境に優しい、ドイツ初のハイブリット車」という文句を使用している。

もっともドイツの車メーカーも、これに気づいているようだ。少し前までは水素を原動力として駆動するエンジンが将来のエンジンとして注目されていたが、水素蓄積と水素生産にまだまだ問題があり、一般に販売される車の駆動力としては近い将来、実現化しそうにない。しかし、原油価格の暴騰(エネルギー庁は2013年には原油の消費量が生産量を上回り、原油価格が暴騰、エネルギーショックにより、次の経済危機が発生すると指摘している。)は時間の問題なので、中期的にこれを解決する動力源が必要になる。そこでやっと注目を浴びるようになったのが、これまではヒッピーな乗り物としれ冷淡視されていた電気自動車だ。ドイツの自動車メーカーは今、躍起になって電気自動車の開発を進めており、これが市場に導入されるまでの「つなぎ」としてハイブリット車を導入したようだ。ところがここでまたしても日本人に先を越されてしまう。

「ハイブリットの屈辱」を晴らすべく、ドイツの車産業が電気駆動の自動車の本格的な開発に入った矢先、日産自動車と三菱自動車が2010年から一般市場向けの電気駆動自動車の生産に入り、2012年から販売を開始すると発表した。こうしてドイツ人の誇りであるドイツの車産業は、「ハイブリットの屈辱」に続き、「電気自動車の屈辱」を味わう事となった。これを見たドイツ政府は、「産業だけに任せてはおけん。」と判断、日本は言うに及ばず、米国、中国の車産業に対抗する為、ドイツ製の電気自動車とそのインフラ設備の開発に5億ユーロもの税金を投入すると発表した。ドイツ政府はこの産業へのてこ入れで、2020年までに100万台の(できればドイツ製の)電気自動車の登録を目指し、ゆくゆくは電気自動車生産で世界一を目指すというもの。新しいものが「ウケル」日本と異なり、ドイツの消費者は経済性、早い話、「元が取れるかどうか」を重視するので、電気自動車の環境整備と税控除が、ドイツで電気自動車が売れるかどうかを左右することになるだろう。ちなみに現在登録されている電気自動車の数は、ドイツ全土でたったの1452台。

ドイツ政府の目標は高いが、ドイツは電気自動車競走ではすでに「負け組み」だ。米国ではオバマ大統領が電気自動車の開発と、そのインフラの整備に24億ドルの金を投資すると発表しており、ドイツ政府の3倍以上の予算を組んでいる。皮肉な事に、GMの電気自動車開発はドイツのオペルが担っているので、米国の技術なのか、ドイツの技術なのかはっきりしない。またこれが原因か、GMと米国政府はオペルの売却をストップしようと模索しており、ドイツ政府との間で懸案問題となっている。現在、電気自動車開発で世界の先端を行くのは中国だ。中国政府はすでに11年前に電気自動車の開発に大金を投資しており、中国では電気自動車がすでに一般に販売されている。おそらく電気自動車の生産、及び登録台数では世界一だろう、人口が多いだけに。この分野で中国よりも10遅れてスタートしたドイツの自動車産業が、どこまでこの遅れを短縮できるだろうか。メルセデスは今年中に電気駆動のスマート(最初は1000台)の生産を開始すると発表しており、ポルシェ買収でトヨタを追い越せ!と飛ぶ鳥を落とす勢いのVWは2013年から電気自動車の販売を計画、一番出遅れたBMWは2015年から電気自動車の販売ができると期待している。(宣伝で街路を走っているミニはまだプロトタイプ。

電気自動車の生産販売で、欧州の先端を行っているのは、よりによって欧州最大の産油国でお金持ちのノルウエー。自分はガソリンを大量に消費する車に乗っているのに、選挙民への受けを狙ったカリフォルニア州知事が、とても厳しい排ガス規制を導入すると発表すると、フォードはノルウエーにある子会社に電気自動車の開発を一任した。ところがカリフォルニアの州議会でこの案が否決されると、フォードは「将来の見込みなし」として、この会社を二束三文で手放した。先見の明のあるノルウエー政府はこの会社を財政的に支援するばかりではなく、将来に備えてインフラ設備の投資に着手した。その甲斐あって、今、ノルウエーで電気自動車を買うと、路上駐車場にはきちんと充電柱が立っており、無料で駐車できるだけでなく、無料で「満タン」にする事ができる。このノルウエー産の電気自動車は2万ユーロ(邦貨で280万円)と決して安くないが、「ガソリン代」が浮く上、自動車税が免除されるので、「元の取れる」経済性のいい車だ。2008年の生産台数は5000台。生産台数が増えていくに行くつれて値段も下がっていくだろう。是非、日本政府もノルウエーの真似をして、電気自動車のインフラ設備の整備に投資してもらいたい。



新しいSクラスとMクラス(写真)は、
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ドイツ初のハイブリッドエンジン搭載。
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