吹くか、神風は。 (28.01.2010)

何事にも表の面があれば、その裏の面もあるもの。2009年に資本主義を破綻の間際まで追いやった経済危機でも、皆が損をしたわけではなく、これにより得をした会社もある。例えばアマゾン。経済危機が最高潮の時は売り上げを落としたが、その後、売り上げが急速に回復した。危機が収まってみると、危機の前に比べ売り上げ(市場占有率)を伸ばしている。これは何も購買者の数が増えたわけでなく、百貨店などで買い物をしていた顧客が、安価で、そして容易なインターネットで買い物をするように、買い物の習慣を変えた為だ。

一番の危機の受益者は、経済危機を前もって「予言」していた経済アナリストだ。経済危機の真っ只中、こうした書籍は売れに売れた。中にはノストラダモスの恐怖の大王並みのかなり怪しげな本もあったが、それでもおこぼりに預かって、売れた。逆にこれを逃した「作家」やアナリストは、ベストセラーを書く絶好の機会を見出した。「次の危機は何処何処でやってくる。」と書くと、それこそノストラダモスの預言書のように、売れるからだ。(別名、「乗せたら騙す」と言われる由縁だ。)大体、世界の破滅と異なり、経済危機は8~10年おきに訪れるので、今のうちに書いておいても損はしない。こうした諸説は、次の経済危機の発信源を燃料危機に置いていたり、中国における不動産価格の下落によるバブル経済の終焉に置いていたり、興味深いものが少なくないが、一番面白かったのは、日本が次の経済危機の発信源になるというもの。

この説を唱えているのはフランス大手の銀行、Société Générale。日本では90年代のバブル経済の破綻による大不況対策として、ゼロ金利を導入、金を市場に注入して景気を活性化しようとした。これを見た投資家は、「ゼロ金利により金が大量に市場に出回り、ハイパーインフレーションは避けられず、ひいては通貨危機を巻き起こす。」と声高々に宣言、円の暴落に賭けた。ところがインフレーションどころか、日本は10年近くデフレーションに落ち込み、1997年に投資家が巻き起こしたアジア通貨危機では、円は下落しないで急上昇、投資家は大火傷を負った。これで懲りたかと思いきや、投資家は日本の毎年増加する国債発行高、お先真っ暗な財政赤字を指摘、「日本経済の破綻は近い。」と、再び円の暴落に賭けたが、21世紀に突入するまで円高が続き、多くの投資家はまたしも大火傷を負った。つまる所、「日本経済破綻説」は何も新しい物ではなく、これまでも度々聞かれたが、日本だけは一般の経済理論が通用しない特例のような存在であった。しかし、この銀行のGlobal Strategy Teamによると、今度は「本当に危ない。」と言う。

そのきっかけは、思わぬ少子化の問題から始まる。日本では世界に例を見ない高齢化社会で、90年代から継続して勤労者の数が減っており、2005年には年金受給者の数が勤労者の数を上回った。この結果として、(低い年金額では生活できないので)年金受給者が貯金を使って生活、貯蓄率が急速に減額している。90年代の日本ではこの貯蓄率は収入の15%に達し、先進国の中でも最も高いレベルでにあった。これが財政赤字の膨張による日本経済の破綻を妨げる、ちょうど天秤の錘のような役割を果たしていた。ところがこの「最後の切り札」である日本人の貯蓄率が2008年にはたったの3%前後にまで縮小したが、財政赤字はさらにその膨張の加速度を増しており、財政赤字高が国民総生産高の2倍という、驚異的数字に達している。ちなみにドイツの貯蓄率は2008年で11%と、先進国ではトップ。又、ドイツの財政赤字高は国民総生産高の66%だから、どれだけ日本がこれまで惜しみなく借金をしてきたか、よくわかると思う。こうしてこれまでかろうじてバランスを保っていた経済のバランスが崩れてしまった。その結果、ハイパーインウレーションは、「来るかどうか。」の問題でなく、「いつ来るか。」の問題だと言う。

一度、ハイパーインフレーションが起こると、これまで日本国民に人気だった国債はその魅力(意味)を失くして全く売れなくなる。インフレで物価が高騰、日本銀行がこれを押される為に金利を10%、あるいはそれ以上に上げると、わずか2~3%程度の利回りの国債を買うと、事実上、金を失うことになるからだ。ご存知の通り、日本の税収入は勤労者の減少と失業率の上昇により、2009年の時点で過去25年で最低のレベルまで落ち込んでいる。この為、日本政府は今、税収入を超える額の国債を発行して、その場しのぎをしている。その国債が売れる限り、まだこのような自転車操業も可能だが、ハイパーインフレーションにより国債が売れなくなると、日本政府は空前の財政難に見舞われる。急場をしのぐ為、日本政府がこれまで常にそのような事態で行ってきたように、政府は家財を売っぱらうだろう。その家財とは、米国政府が発行する国債だ。日本は中国に次いで、世界で2番目の米国の国債の保有国なので、沈みかける船である日本が無造作に米国の国債を売りに出すと、今度は米国の国債の値が暴落、米国も沈船日本丸に巻き込まれて海底に引き込まれてしまう。その結果は言うまでもなく、新たな経済危機で、中国もこの渦に巻き込まれ、世界的な規模で大不況が広がるという。

勿論、日本はこれまで数々の「日本沈没説」を生き延びてきた、他に例をみない国家である。しかしこれまでは低失業率、高貯蓄率、安定した税収入でなんとか危機をしのいできた。しかし、今、この前提がひとつ残らず崩れている。政府がこれに対して処置を打っていれば救われる可能性があるかもしれないが、政府はこうした傾向を見ていないのか、あるいは見ても見ぬ振りをして、国民に減税を約束するという愚行を未だに繰り返している。これがいつまで長続きするだろうか。日本は、今、ユーロの値段を下げているギリシャの2倍の財政赤字を抱えているのに、ギリシャと違って、政府にはこれに対して対策を打つ能力もないし、その勇気もない。現状を見る限り、日本のクレアビリティが格付け会社により格下げされるのは、もう遠い日のことではない。そうなるとユーロと異なって、日本一国の通貨である円は急激に値を下げる。これにより輸出産業は喜ぶかもしれないが、日本政府は高い金利を払って金を借入する事になり、さらに国家財政を圧迫する。

では、一体、日本はどうすればいいのか?まだ間に合うなら日本の税制を、根本から変えなくてはならない。ドイツ(あるはその他の先進国で行われているように)、アルバイトだろうが、フリーターだろうが、賃金には税金と社会保障費(年金、健康保険費用)を課せる必要がある。こうしてフリーターなどという無法地帯を失くし、国民年金、健康保険の財源を確保する。同時に年金の受給年齢を65歳ではなく67歳に上げる。そして一番急務なのは消費税を21~23%くらいまで上げる事。一気に上げると国民がショック死するので、2年おきに3%程度上げていく。さらには日本社会でタブーの宮内庁や防衛省を縮小して、無駄な国費の浪費を辞める。又、首相、閣僚などは自ずから見本となるべく、1年間無給で働いて、国民からコンセンサスを得るべきだ。果たしてこれでも日本の経済破綻が避けられるか、正直に言って疑問だ。確実なのは今の(あるいはその前の)政府に任せておけば、確実に日本経済は破綻するという事。それともまた神風が吹いて、元の侵攻船団を沈めてくれるのだろうか。


今の日本を象徴するに、これほど適した会社はない。
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