ein bedauerlicher Einzelfall (23.12.2008)

ドイツの郵便事情はよろしくない。もっとも日本のような安全(優秀)な郵便システムは(韓国、台湾などを例外として)、世界に例を見ないので、日本の郵便事情と、ドイツの郵便事情を比較するのは過酷かもしれない。そこでドイツの郵便事情をタイの郵便事情と比較してみよう。タイに着いた際、バンコクの空港からドイツへ絵葉書を出した事がある。休暇を過ごして帰国、6週間ほどして絵葉書を出した知人に会うと、「絵葉書をありがとう。昨日、届いたよ。」と言われた事がある。つまり空港の郵便局から、ドイツへ行く飛行機に手紙を積むまで実に6週間もの時間がかかった事になる。それでもまだ届いてだから、たいしたもの。一度、バンコクの郵便局から日本に送ったお土産は、途中でタイ人に食べられてしまってついぞ届かなかった。ドイツの郵便事情は、これとよく似ている。

日本からドイツに荷物を送ると、フランクフルト空港までは無事に着く。(日本側の仕事は完璧なので。)ドイツに着いた荷物は、飛行機から貨物を降ろす作業員(自給7~8ユーロのお給料で働いている低取得者層)の厳しいチェックを受けることになる。金目の物が入っていそうな封筒はその場で開封、中身はツナギの作業服の中に消える。中身を抜いた為破損した小包は、「ドイツに届いた際に破損していました。」というステッカーを貼って配送に送る。運良く空港で作業員のチェックを逃れた荷物は、次は配達員(自給5~7EURの超低所得者層)の厳しいチェックを受ける。金目の物、腹の足しになる物、自身及び家族に会うサイズの服などが人気で、こういう品物は抜かれてしまう。そこで小包は届いたが、中身が足りないということが結構、頻繁に起きる。日本の両親に「○○はちゃんと入れてくれたの?」と責任を問う事になるが、日本から荷物を送る際、まさかそんな事が起きるとは思ってもいないから、証拠がない。当然、泣き寝入りになる。そこで当地では(ドイツ人は)、小包を送る際、蓋をする前にデジタルカメラで証拠写真を撮ってから(壊れそうな物が入っていると、発送時に壊れていなかった証明になる。)蓋をして、再度、証拠写真を撮影、その後、郵便局に持っていく。流石、ドイツ人。

ドイツの郵便局は客からの苦情があると、" ein bedauerlicher Einzelfall"(滅多に起きない一回限りの珍事)として、処理するが、実際にはかなりの苦情が出ているようだ。特にボン周辺では荷物の中身が抜き取られる事件が多発、郵便局は下請けの配達業者を変えたが、5~7EUR/時間のお給料しか払わない限り、事情が大きく改善される事はないだろう。そこで、ドイツ(日本)から荷物を発送される場合は、証拠写真を撮り、保険をかけることをお勧めします。ドイツで荷物を発送する場合、Paeckchen(小包)ではなくPaket(小荷物)扱いで郵送するといいだろう。Paketで送ると郵送料はより少しだけ高いが、自動的に500ユーロまで保険がついている。

こうしたein bedauerlicher Einzelfallが、個人の郵便物で起きている限りは、ドイツの郵便局としても、「滅多に起きない。」で済ますことができた。が、いつもうまくいくとは限らなかった。マインツで荷物の配送をしている職員が、お腹がすいたので片っ端から荷物を開封していった。するとクリスマス時期らしく、荷物のひとつにクリスマスケーキが入っていた。ありがたくケーキを頂戴。腹は満腹になったが、小包は空になったので、別の小包に入っていた中身を幾つか取り出して、これを収納。「荷物は最初から破損していました。」のステッカーを貼ると、何事もなかったようにあて先に届けてしまったのである。

普段ならこの事件は、ein bedauerlicher Einzelfallで済まされていたことだろう。ところが今回は事情がちょっと異なっていた。ケーキを食って空になった小包に中身も確かめずに詰め込んだのは、LB Berlin(ベルリン州銀行)が支店に郵送した顧客のデータ(CD)だったのである。そして肝心の(?)クリスマスケーキの受取人は、Frankfurter Rundschauという新聞社だった。つまり銀行の顧客のデータが、新聞社に(ケーキの代わりに)届いてしまったのである。これを見た新聞社は驚くと共に、狂気した。先のテレコムやSKLの顧客データの違法販売に続き、今度は銀行の顧客のデータが「明らかに」違法に販売されているのだ。(少なくともそう見えた。)そこでFrankfurter Rundschauはこの大スクープを「銀行顧客のデータ、販売さる!」と報道、ドイツ中で大騒ぎになった。

この件は警察沙汰になり、警察が調査に乗り出す。証拠として警察が注目したのは、銀行顧客のデータが入っていた小包。これを見た警察は頭をかしげた。小包に張られた伝票を見ると中身は「クリスマスケーキ」と書かれている。何かの冗談だろうか?差出人の名前、電話番号が伝票に明記されているので、ここに電話をすると「銀行のデータ?そんな馬鹿な。送った時点では確かにクリスマスケーキだった!」と証言。なれば、クリスマスケーキは、郵便局から新聞社に届く過程で、銀行のデータに化けたことになる。警察の目はこれを配送した配送員に向けられ、配送員を事情徴収、事の大きさに驚いた配送員は「腹が減ったので、小包を開けてクリスマスケーキを食った。ばれないように、他の小包の中身をこれに移し変えた。」と自白。これにて今回の事件は一件落着、クリスマス前に巷に明るい話題を提供した。


ドイツのクリスマスケーキ。ドレスデン産が本家とされている。日本のクリスマスケーキの方が格段にうまい。
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