Euro Hawk  (13.05.2012)

かって世界の最先端を誇っていたドイツの兵器産業だが、空軍分野はその調達をドイツ政府とフランス政府の援助で作ったEADSの一社に絞ってから、その地位を米国の兵器産業に譲り渡してしまった。21世紀は無人の飛行機が重要な役割を果たしているが、ドイツの兵器産業、すなわちEADSは明らかにこの兆候を寝過ごした。EADSは独自の無人飛行機の製造、販売を目指して研究を進めているが、遅々として進んでいない。煮え湯を飲まされたドイツ空軍は「我が社でも提供できる。」というEADSの口約束を信用しないで、米国のノースロップグラマン社に5機の無人飛行機を注文、今年なってようやく最初の一機がドイツに到着した

無人飛行機、米国は独自の技術のように誇っているが、実はイスラエルの技術である。第四次中東戦争で敵の地対空ロケットに数多くの戦闘機を撃墜され、敗北の寸前まで追い詰められたイスラエルが、次回の戦争に備えて、敵の地対空ロケットの場所をスパイする目的で、無人の偵察機の開発を始めた。1982年のレバノン戦争/侵攻ではこの苦労が実を結んで、無人の偵察機は敵/シリア軍の地対空ロケット基地を偵察、敵の防衛網を戦争初期に無害化することに成功した。これを見た米国が、イスラエルから技術提供を受けて開発したのが、無人飛行機である。

一番有名なのはパキスタンやアフガニスタンで「活躍」しているプレデターだろう。すでに9つもの異なるモデルが開発されており、米国はこのモデルだけでも400機近い飛行機を持っている。あまり知られていないのが、偵察機として開発されたX-47だ。イラン上空でスパイ活動を行っていて、イラン軍に電波をハイジャックされてしまい、イラン軍に捕獲されて有名になった。一番大きい無人飛行機はGlobal Hawkと呼ばれる偵察機で、米国の偵察機U-2の後続機に当たる。かなり大きな偵察機で、大きさは普通の旅客機と変わらない。最新の電子装備を備えており、19000mの高高度からの偵察飛行は言うに及ばず、索敵活動にも使用できる。

ドイツの軍事産業、実は有名なドルニエが2000年頃から独自の無人飛行機の開発に当たっていたが、開発費が高くなりすぎて会社が倒産、この計画はEADSに引き継がれた。ドイツ軍はアフガニスタンへのドイツ兵の派遣で、この無人飛行機が喉から手が出るほど欲しかった。しかしEADSの口約束とは裏腹に、無人偵察機は実用段階に至らず、ドイツ兵士は待ち伏せにあって次々に戦死した。これに我慢できないドイツ軍の調達部は、EADSにノースロップグラマン社からGlobal Hawkを購入、ドイツ軍の専用ペイントを施してEuro Hawkと名前を変え、この無人飛行機を納入するように助け舟を出した。この夢のようなオファーをEADSが断るはずもなく、しかし納入が遅れに遅れて、2010年ではなく2012年になってやっと導入された。ちなみに調達部が払う費用は13億ユーロ、一機あたり2億6千万ユーロ。直接、ノースロップグラマン社からGlobal Hawkの名前で買えば、数億ユーロ節約できだだろう。

とにかくこれで無人偵察機が納入されて、「めでたし、めでたし。」と思っていたら、そこはドイツ。そんなに甘くはなかった。ドイツ飛行監査局から、飛行許可が下りなかったのだ。ドイツの上空を飛ぶ飛行にはパイロットが乗っており、万が一飛行機が衝突コースにある場合、自動的に別のルートを示す機能がついていることが飛行許可の条件であるが、このオイロ フォークは両方の条件を満たしていない。納入が2年も遅れたのだから、それまでに法律の整備/変更をする時間はたっぷりあったのだが、EADS、及びドイツ空軍はこれを見事に寝過ごした。そこで今回初のオイロ フォークのドイツ到着にあたり、予定飛行ルート周辺には飛行禁止令が出されて、他の飛行機が飛んでいない状態にして、やっとドイツ上空の飛行許可が出た。こうしてやっとドイツに到着したオイロ フォークだが、飛行許可がない為、地上に縛り付けられている。稀に試験飛行をする場合は、飛行ルートの四方20マイルを飛行禁止にする必要があり、その上、監視用の飛行機が無人偵察機にお供する必要がある。お陰で経費はうなぎのぼり。いかにもドイツらしい、お粗末な話である。
          
 
オイロ フォーク。只今、飛行禁止中
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