情けは人の為ならず (24.11.2012)

年末は慈善事業のハイシーズン。ドイツではクリスマス(ドイツ人の一番大切な祝日)ムードも手伝って、この時期はお財布の紐が一番ゆるくなっている。これを狙って、あらゆる所、テレビ、ラジオ、街頭で募金を呼びかけている。改めて言うまでもなく、ドイツにもいかがわしい慈善団体が多い。困難な状況に陥った女性を助けると証して募金を集めていた団体の所有者は、70万ユーロを自分のポケットに入れた。裁判で5年の有罪形を宣告されたが、70万ユーロを5年で割れば1日383ユーロ、真面目に働くよりも割がいい。刑務所を出れば、外国に隠して行方不明になっている70万ユーロが待っており、悠々自適の余生を送る事ができてしまう。その他にも、ドイツ人の大好きなテーマ、動物愛護で募金を募集した詐欺者はちゃっかり60万ユーロも稼いだので、将来の心配はない。皆まで言えば、子供救済基金、ハイチ震災者救援基金、タイの洪水被害者救済基金など、一儲けする機会は目白押し。

また詐欺が実証されていない慈善団体でも、いかがわしいのが多い。10万ユーロの募金を集めて、1000ユーロ何処かに寄付するだけで、「慈善団体」と名乗る事ができてしまう。慈善団体は売上税から解放されているので、残った金がまるまる収入になる。「バレる前にお金を隠さなくっちゃ!」とまとまったお金を海外に送金しても、「プロジェクトのため。」と言えば、税務署も納得する。このように詐欺を培養する環境が揃っているので、ドイツでは慈善事業を装った詐欺が後を絶つ事はない。もっとも通常は、募金詐欺を働いているのは、募金を迫られるまで名前を聞いた事がない団体ばかりなので、ある程度見分けがつく。困ったのは著名な名前を信用して募金したのに、それが業者の儲けに使われているケースだ。

ドイツでは街角に"Altekleidersammlung"あるいは"Kleiderspende"と書かれた大きなコンテナが置かれており、いつも溢れるばかりの古着で一杯になっている。ここに古着を寄付する人は、「貧しい人の助けになれば。」と慈善の心から寄付している人が多いが、寄付した古着が何処に行くのか、「ひとつ調べてみよう。」という人は少ない。悪く言えば、「寄付をした後は、野と慣れ山となれ。」という考えである。しかし、ここはドイツである。銀行にせよ、保険会社にせよ、あるいは病院にせよ、頭から信用してしまったが為に財産や健康を失った人は数知れず。ある程度の不信感を抱いて「損」をする事はない。

一度、古着の回収に来ている車を見たら、そのまま通り過ぎないで、車を観察してみよう。赤十字ではなく、全く別の会社の名前が車のボデイに書かれていることに気づくだろう。この時点では、「赤十字は古着の回収を業者に依頼しているのだろう。」と勝手に善意の解釈をしてしまう。古着を集めている業者、実は、赤十字とは全く関係のない専門業者である。最大手はSoex、などの業者が赤十字などの慈善団体から名前とロゴを使用する権利を購入している。コンテナに大きく書かれている著名な慈善団体の名前とロゴは、何も知らない消費者を釣る餌である。こうして古着をタダで集めると、巨大な仕分け倉庫に運び込まれる。ここで最上、上、中、下と仕分けられる。最上物はドイツ国内で販売される事もあるが、大概はそれぞれ1kgのパッケージに詰められると、アフリカの仲買業者に販売される。どのくらいこの商売がボロイ商売であるか、数字を挙げて見よう。赤十字のロゴのお陰でSoexは毎年8万5千トンもの古着を回収、5千8百万ユーロもの売り上げを出している。

「人の助けになればいい。」という無垢な希望を利用して金を稼いでいるだけならまだいい。本当の問題はこれから始まる。アフリカのタンザニアだけでも毎月2万トンの古着がコンテナに詰められて到着する。仲買業者はドイツから届いた古着を小売業者に販売、小売業者は古着を街頭で販売する。問題はその値段だ。Tシャツが1ユーロ未満で売られており、何処を探しても、立派な古着がこれほど安く買える店はない。「貧しい人が服を安く買えて、いい事ずくめではないか。」と考える人も居るが、そんな値段で服が買えてしまうので、誰も国内で生産された値段の高い服を買わなくなる。その結果、タンザニアにあった繊維工場は軒並み潰れてしまい、ドイツからの古着がアフリカ諸国で失業率を上昇される結果になっている。

「なら、古着の輸入を止めればいい。」と思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。欧州政府は開発援助資金の交付と引き換えに、欧州からの輸出品、補助金で安く生産された鶏肉、粉ミルクから古着まで、が制限なく輸入される事を要求している。さらにはこの商売で甘い汁を吸っている産業から、政治家に賄賂が支払らわれている。政府が次の選挙で負けて、新しい政府が出来上がると、おいしいポストは新しい政府の息がかかった人物に替えられる。又、クーデタが起きたら、明日から収入はなくなる。だから今、自分がおいしいポストにある今、地位を利用してできる限り資産を蓄えようと考える。当然、現地の政治家が欧州からの輸入を制限することはなく、問題があっても一向に改善される事はない。

ドイツで古着を寄付する場合、この事実を頭の隅に置いておこう。一番いいのは、生活保護者や浮浪者に衣服を無料で提供している団体に直接、衣服を寄付することだが、ここでも結局は業者に販売されないという保証はない。慈善事業といえど所詮は飯の糧を稼ぐ手段であり、大方のケースでは結局、金儲けが目的なのである。


元手ゼロ。
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