前哨戦 (17.09.2013)

9月15日、総選挙の1週間前にバイエルン州で州選挙があった。ドイツの政党に詳しくない方の為に説明しておくと、バイエルン州(州都はミュンヘン)には"CSU”事、Christlich-Soziale Union in Bayernという政党が存在している。この党はこの州だけで政治活動を行っている党で、他の州には存在していない。他の州にはよく名前の似た政党、"CDU"事、Christlich Demokratische Union Deutschlandsという政党が存在している。名前の違いは前者が「バイエルン州」と唄っているのに比して、後者は「ドイツ」と唄っている点。もっとよく見れば、"Sozial"、すなわち社会主義的という名前が余計に付いている点にも気づく。もっともこれは本当に名前だけで、政党が追求する政治とは関係ない。元来この政党はバイエルン人民政党といい、バイエルン王国を吸収合併したプロイセンの中央政府に反攻する目的で結成された。第二次大戦後、その残党が集まって政党を結成、1957年からはCSUと名乗っている。その主張はCDUと同じように企業よりの保守だが、事あるごとに中央政府の決定に反攻するという伝統も忘れずに保っている。

これがバイエルン人に受けた。どのくらい受けたかと言えば、1957年の誕生以来、まさに半世紀以上、政権に就いている。これに匹敵するのはアフリカの独裁者、ムガベと北朝鮮くらい。この党は、独裁者と同じ長期間、議会民主義下で政権に就いているのだ。どのくらいバイエルン人が保守的な国民なのか、よくわかる筈だ。その長期政権にある政党への風向きが、2008年から少し変わってきた。外敵がない為党内抗争に明け暮れて、挙句の果てには党内で気にくわない分子が出てくると探偵事務所を使って私生活を監視させるなど、まるで北朝鮮のような方策を採り始めた。これがメデイアに漏れると、党首の権威が失墜した。「いざ、鎌倉!」」と機を流さず党内では、まるで戦国時代の下克上のように党首の失墜計画が練られて実行に移された。こうして新党首が誕生したが、バイエルン人にはこの下克上は受けなかった。州選挙でバイエルン人からしっぺ返しをくらい、これまで保っていた可半数を失った。結果、弱小政党のFDPと連立政権を組む事を余儀なくされたが、下克上で党首と州知事に成り上がったおじさん二人組はその責任を取らされて、辞任に追い込まれた。明智光秀のような短期の天下であった。哀れ。

こうして向かえたのが2013年9月の州選挙である。これまで数々のスキャンダルが暴露されただけに、野党には形成を逆転して、始めてCSUから政権を奪うチャンスは十分にあった。ところが蓋を開けてみると、バイエルン人民党が再び過半数を獲得する選挙結果となった。一体、野党は何をしていたのだろう。

バイエルン州における初政権を夢見ていたSPDは、CSUのスキャンダルを最大限に利用しなかった。政府与党の政治家が、親族を高級の払われる役職に就けていたことが報道されると、待ちに待ったチャンスがやってきたように思えた。これを地方議会で議題に挙げて、どの政治家が親族を要職に就けているか、事情を調査してこれを公表させる事ができれば、最高の選挙運動になる筈だった。ところが親族を要職に就けていたのは、政府与党の政治家に限らなかった。野党も規模は小さいが、同じような親族優遇政策を取っていた。これが原因で議会では与党の政治家の「節度のなさ」を非難するだけで、地方議員の誰が親族を要職に就けているか、その調査や公開を要求する事を避けたので、長くは選挙民の頭に残らなかった。さらにその後、大洪水が発生して、州知事が被災地を巡察、「州と国が面倒を見るから心配しなくていい。」とやる事で、スキャンダルで失った以上の票を確保できた。

福島原発事故後、筆頭野党に躍進した緑の党だが、よりによってCDU/CSUが核エネルギーからの撤退を決定すると、緑の党に追い風を与えていたその源を奪い取ってしまった。核エネルギーからの撤退をその党の主要プログラムに挙げている政党にとって、党のプログラムを盗まれることは致命的だった。そしてここで緑の党は間違いを犯す。「党のプログラムを盗むなら、こちらも同様の措置を取る。」と核廃廃棄物の処理場問題などのお家芸に集中せず、CDUの向こうを張って「国家財政を立ち直すには増税しかない。」とやった。これまで環境保護をメインテーマにしていた政党がいきなり国家財政の立て直しをその選挙スローガンにして、しかも増税というプログラムでは選挙民に受ける筈がなかった。せめて金持ち税の再導入を主張して、「一般市民のお財布を守れ!」というスローガンにすべきだったろう。「これはマズイかも?」と選挙結果が心配になった党の上層部は、「水を節約する為に、肉ではなく野菜を食べよう。」という奇抜な選挙運動を開始、ニュースのネタにはなかったが、笑われるだけで終わってしまった。

そして与党であるFDPは選挙民に全く受けなった。CSUが要求した"Betreuungsgeld"に徹底抗戦、政府内の野党のように振舞った。これがバイエルン人に受ける筈はなく、蓋を開けてみると3,3%という低得票率で、地方議会から姿を消すことになった。東では人気の左翼政党も、経済状況がいいバイエルン州では全く得票率が伸びず2,1%の得票率で、地方議会進出は今回も無理だった。ここ2年間、あちこちの地方議会で議席を獲得、地方政治でブイブイ言わせてきた海賊党も、2,0%の得票率に終わった。あきらかに党の旬の時期が過ぎ去っている。唯一、SPDだけは先回よりも謙虚な2%ほど得票率を伸ばしたので、「勝った!」と宣言していたが、実際にはバイエルン州における同党の過去3番目に悪い選挙結果であり、威張れたものではなかった。

そしていよいよ来週は総選挙である。伝統的に、「全国選挙ではバイエルン州とは違った結果になる。」という伝統があるが、首相の対立候補であるシュタインブリュック氏が最初から最後まで謝った選挙運動を展開しており、メルケル首相がポーランド侵攻を命じない限り、政府与党、少なくともCDU/CSUの勝利は動きそうにない状況だ。まだこの時点でも、予期しなかったことが起きるのだろうか。


勝者。
bayern (1)


敗者。
bayern (2)


敗者。
bayern (3)


どっちつかず。
bayern (4)

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