Untauglich(兵役不適格) (18.06.2014)

担ぐ兵隊の身になれば、装備は1kgでも軽いほうがいい。最初担いだときにはそれほど差を感じないが、30Km、40Kmも歩くと体の芯に応える。「そんな弱気で国防が勤まるか!」と兵役の経験がないアマチュア右翼思想家は渇を入れたくなる。偉そうなことを言う前に、まずは30kgの背嚢を担ぎ、フル装備で一晩一緒に行軍してもらいたい。行軍と言っても、舗装された道路を歩くのではない。山道を歩くのだ。最後まで行進して、「銃はもっと重くなくっちゃ!」と言う人は一人も居ない。だから新小銃がこれまでの7.62mmから5,56mmの89式になった際、兵隊の間では熱いまなざしで、「我が部隊に導入されるのはいつか!?」と期待していた。今では標準装備になっている筈だ。

ドイツ軍でも7,62mmの標準小銃G3の代わりに、1997年から5.56mmのG36が導入された。Natoが新規格を導入したが故である。では、何故、Natoは新規格を導入したのだろう。これは何も兵士の負担を減らす為ではなく、別の戦術上の利益があった為と言われている。G3では7.62mの弾丸(薬莢が付いているものではなくて頭の弾頭)は8gあり、初速は800m/s。G36の5,56mmの弾頭はわずか3.5gで初速は780m/sだ。物理の時間に習った運動エネルギーの計算方法を覚えていなくとも、G36弾頭が持つエネルギーはG3の半分以下であることがわかる。すなわち弾丸が標的、すなわち人間に当たっても、致命傷にはなりにくい。負傷させるだけだ。しかし負傷兵は後方に移送されなければならない。これにはさらに2名の兵士が必要なので、一発の命中弾で敵兵3名を前線から排除でき、「戦術的優位性」がある筈だった。

この理論でNatoでは新規格が採用されてわけだが、実際に戦場で使用すると別の問題が浮上してきた。すなわち弾丸の運動エネルギーが少なくて、障害物に跳ね返されてしまうのだ。敵兵が壁の後ろに隠れている場合、日本のマンションのような薄々の壁なら別だが、丈夫な壁には歯が立たない。さらには射程距離が200mを超えると命中再度が下がった。運動エネルギーが少ないので、距離が伸びると重力や風などの環境に影響されやすいのだ。自衛隊のように射撃練習が年2回、それも外界から遮断された射撃場で200mの距離から20発程度しか撃てない場合、誰も問題には気が付かなかったし、気づいても、「精神力が足らん!」と兵隊の集中力がその理由とされた。

呑気な自衛隊と違ってドイツ軍ははアフガニスタンにも実戦投入された。すると「待ってました!」とドイツ軍は、ドイツが誇る軍需産業ケックラー&コッホ社(以下H&Kと略)の新型小銃、G36を持参した。"Das Gewehr ist die Braut des Soldaten。”(銃は兵士の花嫁)とドイツ軍では言われていたが、結婚生活が始まると夫婦間の仲がすぐに悪化した。タリバンの攻撃を受け反撃すると、5分もしないで自衛隊員が1年で消費する以上の弾丸を使用する。だから150発の連射でも命中精度が下がらないことが小銃採用の条件になっているのだが、はるかにその手前で命中範囲が拡散を始め、「当てにならない。」と兵士が次々に苦情を上げた。さらにはアフガニスタンのような暑い天候の下では銃が熱くなり、ろくに撃っていないのに命中精度が下がるというのだ。

この苦情は本国に伝えられ、ドイツ軍の"Erprobungsstelle"(兵器試験所)で検査されることになった。すると確かに銃身が熱くなると、命中範囲が拡散する事実が確認された。しかし何処に問題があるのかわからないため、アフガニスタンで敵の攻撃にされされているドイツ軍に連射を避けるように勧告。さらには銃が高熱になって命中再度が下がると、銃が肌の温度に下がるまで待つように勧告をした。タリバンに攻撃されている場面でどうやって連射を避けるのか、熱くなった銃の温度を下がるまでどうやって生き延びるのか、これは通達されなかった。自衛隊であれば40発しか弾薬の携行を許されず、その後は古き良き銃剣突撃して兵士は二階特進するので発生しない問題であったが、タリバン相手に銃剣で的に突撃する気が無いドイツ軍では、大きな問題だった。

その後、1年近く試験を続けていた試験所は、「問題は銃ではなく、弾薬に有った。」と結論を出した。ある弾薬製造会社から届けられた弾薬を使用すると銃身が熱くなり、命中度が下がる。しかし他の製造所から届けられた弾薬で検査をすると、命中精度の低下は確認されなかったという。この報道を信じる軍関係者は多くはなかった。というのも、特定の会社が製造した命中精度を下げる弾薬と、別の会社が製造した命中度を下げない弾薬の違いについては、何もふれていなかったからだ。さらにはまだこの問題が解決されていないのに、(前)国防大臣はこの小銃を7700丁、1800万ユーロもの注文をH&K社に出した。命中精度の問題で検査中にも関わらず、その武器の追加注文を取る事実は、H&K社の政治影響力を証明する。ドイツ政府としてはドイツの目玉輸出商品である"made in Germnay"の兵器のイメージを下げたくない。そこで欠陥は銃ではなく、弾薬にあったとしても納得のいく配慮である。

この一件はNatoの新規格5.56mmの弾丸の弱点を露呈させた。ドイツでは狩猟に使用される銃は最低、6.5mmが最低とされている。これ以下のサイズの弾丸では、標的に怪我を負わせるだけに終わり、無駄に動物を苦しめることになる。そこで致命傷に至ることが可能なサイズとして、6.5mmが最低とされている。精密度が要求される狙撃銃、ドイツ軍はG22を採用している、言わずもがな、7,62mmである。命中精度と貫通力を求めると、どうしてこの弾薬が必要なのだ。実戦(戦場)では、射撃場のような環境ではなく、大方障害物が存在する。その戦場において、射程距離が短く貫通力の小さい弾丸を使用するのは、疑問が残る。

ドイツ軍のもうひとつの悩みは、「錆びるヘリコプター」だ。ドイツ海軍はエアバス社*にSea Lion"(海のライオン、あしか)を18機注文した。その理由は、「オランダ海軍も採用している。」だったが、オランダ海軍がソマリア沖で海賊対策に導入すると、ヘリがあちこち錆び付いてしまった。「海上で使用するので仕方ない。」と製造元は言うが、海軍のヘリコプターとして宣伝しているヘリが海上で使用して錆びてしまっては、お粗末としかいいようがない。ところが問題はそれだけでは済まなかった。ヘリのナビゲーションシステムが機能しないのだ。ヘリのような不安定な乗り物は、ナビゲーションシステムが命綱だ。そのナビが昔のウインドウズのようにクラッシュダウンしてしまっては、危なくて実戦はおろか訓練でも使用できない。実際、ドイツ陸軍がアフガニスタンでこのヘリを負傷者の搬送に使用しているが、ナビゲーションシステムが機能しないので、飛べない事が多い。運よく機能して離陸すると任務中に機能が停止、乗員、負傷者に生命の危険があったという。

兵器を政治的配慮から調達すると、こういう結果になる。日本でも兵器に関しては、あまり選択肢がない。基本的に国産で、これが無理な場合は米国産だ。日本の戦車部隊は仮想敵国甲が北にあるので、北海道に集中している。当然、シベリア型の天候下でも使用できる環境にあるかと思えば、そうでもない。しばらくエンジンをかけていないと、エンジンが起動しない事がある。むき出しの燃料パイプが寒さに負かて凍りつくのだ。実戦を考えていない訓練だけの軍隊なので、「春になれば解けてエンジンがかかるだろう。」で丸く収まる。安部政権は自衛隊を実戦に投入したくてウズウズしているが、いざ実戦に投入されると、ドイツ軍が体験しているようなさまざまな問題が露呈する。これが訓練主体の軍隊と、実戦経験のある軍隊の違いだ。精神力では技術上の問題は解決できないのだ。**
          
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独仏共同事業の軍需産業EADSは、「軍需を会社の名前にするとマズイ。」と判断、民間航空機を製造していた子会社、Airbusを会社の名前に採用する事にした。こうして社名はEADSからエアバスに変更された。

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自衛隊で、「支給品のサイズが合わない。」と言うと、「日本の軍隊では、体を支給品に合わせるものである。」と陸曹から回訓をいただいた。

ア タ レ!
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