嵐がやって来る! (24.06.2014)

5月、かってない猛暑が日本を襲った。連日30度を超える日が続き、35度を超える町も珍しくなかった。天気予報は連日、「熱中症に注意してください。」と繰り返しているのに小学校で運動会や屋外での体育の授業が実施され、生徒が相次いで熱射病で倒れた。校長先生が言うには、「十分に対処していた。」と言うが、本当に対処していれば熱中症にならなかったので、責任逃れの言い訳に過ぎない。これが枠にはまった日本の集団教育の特徴で、「35度を超える天候なので、運動量、運動時間を減らす。」という枠にはまった考え方しかできない。

その正反対なのがドイツ。ドイツでは屋内の気温が午前11時に25度を記録すると、午後の授業が禁止されており、学校は12時で終わる。これを"Hitzefrei"と言い、生徒の何よりの楽しみのひとつだ。こうした考え方は日本人にはできない。日本では辛抱と根性を鍛えることが重視だが、ドイツでは周辺環境を優先する。この考え方はスポーツの分野で顕著だ。今でも日本は過酷な環境下で精神力を鍛える。例えば、「水を飲ませない。」という意地悪で世界に通用するスポーツ選手を鍛えられると真剣に考えている。ドイツでは運動能力をフルに発揮できる環境下で科学的に鍛える。世界選手権などの競技の場でどちらが勝っているか、改めて言うまでもない。

そのドイツでも6月になって気温が35度を突破した。6月としてはかってない高気温で、新記録を樹立した。気温が急に上昇すると、水蒸気が上昇、これは雷雨となって豪雨をもたらすが、今回は前線の動きがこれに加勢、20年振りの嵐をデユッセルドルフとその近郊にもたらした。日本に住んでいると、「ドイツには台風が来なくていい。」と思ったら、その代わりに欧州には"Orkan"と呼ばれる嵐がやってくる。「嵐と言っても台風よりはマシでしょ。」と思ったら甘い。ちなみに日本では風速は秒速で表記されるが、ドイツでは誰にでも分かりやすい時速で表記される。東京で記録される台風による瞬間最大風速は40m/s程度で、時速に直せば144km/h。今回の嵐ではデユッセルドルフで瞬間最大風速が144km/hを記録したので、立派な台風並みの風力だ。台風の場合は数日前から上陸が予測できるが、"Orkan"はその予測が難しく、台風よりも始末が悪い。

今回もいきなり夕方に"Orkan"が発生して、その激しさは気象官をあっとさせた。2時間で2万回の落雷(1秒に2.7回!)を記録したので、カメラを構えて無造作にシャッターを押せば、落雷の決定的な瞬間が撮影できた。アーヘン近郊では1時間に53リットル/平方メートルの降雨を記録、雨水が集まる場所は冠水した。カッセル方面ではゴルフボール大の雹が雨あられと降り、車の屋根を凸凹にした。突然の嵐に驚いた男性が路上でショックで死するほどのもので、高圧電線が切れてこれに接触した自転車(嵐に自転車なんか乗るものではない。)に乗っていた男性は感電死するなどして、5名が命を失った。高速道路では270kmもの渋滞が発生、この嵐に不意を付かれた。消防車が冠水した地下室の水のくみ上げや救助で呼ばれたが、その場所に行くまでに大木が根こそぎ倒れており、文字通り道を切り開きながらの出動となった。ニュースを見ようにも各地で停電、市民は文字通り真っ暗闇に取り残された。

翌朝になって、ようやく嵐がもたらした損害の規模がわかってきた。道という道は倒れた大木でふさがれており、電車は翌日になっても運行を止めたままだった。線路をふさいでる大木をチェーンソーで切り、送電線を倒れた木から解放、切れた電線を修復するまでに数日かかる見込みだ。ドイツ鉄道は乗客にタクシー券を出したが、折角の儲け時に「商品券」を受け取る運転手は少なく、「現金ならいいよ。」と言われる始末だった。街中、交通の要所を障害物から除去するまでに4日かかった。大きな車両が通れるようになるとドイツ軍の工作部隊が出動して、山道などに倒れている大木を片付けていった。

最近ドイツを襲った嵐では2007年の"Krill"が、損害規模で過去最悪だった。"Krill"は北海で吹き荒れたので、ドイツはおろか近隣諸国でも被害が大きかったが、今回の"Ela"はドイツに集中していた。ドイツ国内における損害規模では"Krill"を超えると言われており、嵐による大災害となかった。テレビやラジオのニュースで"Orkan"が来ると警告を出したら、「なんだ、たかが嵐か。」と高をくくらないで、すぐにその対抗措置を取ろう。お子さんがいる場合は、お子さんを呼び戻し安全を確保する。車は大木が倒れてきたらぺしゃんこになるので、車は有料駐車場、それも雹で凸凹にならないように屋根のある駐車場に移動、車で移動中に嵐がやってきたら、無理して家に向かわず、運転を中止して安全を確保しよう。冠水する事があるので、地下ではなく一階以上の駐車場がいい。ちなみに倒れた木に車を潰された場合は、修理には車両保険が必要だ。しかしこれに加入している人は少ないので、泣き寝入りになりかねない。嵐の警報が出たら、一晩車を駐車場に避難させて20ユーロ払った方が断然安い。


2時間に2万回の落雷を記録、
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木は根こそぎ倒されて、
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車はぺちゃんこ。
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