再生エネルギーの増加を止めろ! (06.07.2014)

日本では8月の電気代が下がるという。発電に使う原材料、石炭や天然ガスが安くなった為だそうだ。ドイツでは電力会社と値段と期間を決めて契約をするので、契約期間中に原材料が高騰しようが、安くなろうが、値段が変わることは無い。(電力会社がそれでも値上げすると、契約を解約できる。)さらに言えば、過去20年で電気代が安くなったことはないので、「電気代が安くなる?」と期待しないほうがいい。期待をしても、裏切られるだけだ。

にも関わらず6月末に政府が"EEG-Umlage"(再生エネルギー助成金)の改革を国会で決議すると、「これで少しは電気代が安くなる?」と淡い希望が芽生えた。というのも、「これ以上の電気代の上昇を抑える。」と、新政府がこれまで野放しになっていた「"EEG-Umlage"を改革する。」と言い出したからだ。今、この"EEG-Umlage"により、3500キロワット消費している平均的な家庭では1キロワットにつき6.24セント、年間218ユーロも分担金を払っている(これに高い電気代が加わる)。このまま再生エネルギーの生産が上昇すれば、数年で300ユーロを超えてしまうだろう。正直な話、危険な原発が無くなって嬉しいが、このまま再生エネルギーの為に金を払い続けるだけの経済的な余裕はなくなってきた。そこで電気代の値上げの原因となった助成金制度を政府が見直す事となったわけだ。これにより電気代は安くなるのだろうか。まずは改革内容を見てみよう。

これまで通り再生エネルギーが増えれば、さらに多額の助成金が必要になるのは自明の理。そこで再生エネルギーの増加が制限されることとなった。これまでは毎年7500メガワットも増えていた風力と太陽エネルギーの増築は、その1/3、2500メガワットに抑える事になった。補助金目当てに目標以上に発電量が増えないように、風力発電の補助金は8,9セント/kwに減額される。太陽発電の補助金は、個人の自宅の屋根に載せる10Kwpまでのソラーパネルでは19.5セントとこれまでと変わりないが、いずれ次の機会で減額されるだろう。(ただし日本のように「電気を買い取ります。」と政府が決定したのに、電気会社が、「買い取りを拒否します。」という珍事態は有り得ない。政府の決定に電気会社が抵抗できるのは、電力会社が政治家をコントロールしている日本だけの現象だ。)設置が遅れている海上での風力発電に至っては、2020年までに6500メガワットの発電量を目指し、18セントの高額な補助金が今後も支払われる。

次に政府は自家発電した電気にも"EEG-Umlage"を課すことにしただ。「そんな馬鹿な!」と叫びたくなるが、これにはちゃんと理由がある。電気を大量に消費する会社、例えば自動車会社などの製造業は、広大な敷地にソラーパネルや風力発電を設置、自前の電気を使用している。というのもソラーパネルを使えば、大体10セント/kwで発電できるが、送電線を使って電気を送り、コンセントから使用すると30セント/kw、なんと3倍になる。この高い送電料を節約するために、ドイツの工場では自前の発電を行っているケースが多い。しかしそれでは送電線管理している会社は、金をかけて送電線を引いたのに商売あがったりである。そこで自家発電の再生エネルギーにも、送電料として"EEG-Umlage"が課されることになった。当然、全額ではなく"EEG-Umlage"の30%である。もっともこれは新規の自家発電に対して課されるもので、すでに存在している施設には課されない。又、自宅で発電して使用する10Kwpまでのソラーパネルに限り、今後も"EEG-Umlage"は課されない方針だ。

一番厳しい制限は、"Biomasse"(日本語ではバイオアガス。植物、動物が作り出す有機物)を使った発電にかけられることとなった。日本では「家畜の糞から発電できるなんて素晴らしい。」と絶賛の声しか聞かれないが、世の中そんなに甘くない。メタンガスが発生する過程で強烈は硫黄臭が発生する上に、メタンガスは二酸化炭素の23倍もの地球温暖効果がある。環境を守るために化石エネルギーの使用を避けるのに、メタンガスで環境を破壊してしまっては本末転倒だ。そこで今後の増築は年間たったの100メガワットに制限される上、助成金も減額されるので、政府はこの分野では事実上、現状維持を目指している。このような制限で再生エネルギーの増築を抑制する事により、政府は再生エネルギーへ払う補助金を、現在平均である17セント/kmから12セント/kmまで下げる方針だ。さらに2017年からは再生エネルギーへの助成金を廃止(すでに設置されている施設に対しては、これまで通り助成金が出る。)して、施設の構築費用を必要経費として計上できる税制の優遇措置だけにする予定だ。

さらにこれまでの電気代の高騰の主たる原因だった、産業への格安電気料金も改善されることとなった。本来は電気を大量に消費する、外国企業との値段の競争にさらされている企業に対してのみ採用される筈だったが、実際にはゴルフ場から遊園地まで、法人であれば誰でもこの格安電気料金を申請する事ができた。検査がなかったのだ。産業から政治資金をいただいている与党は、このまま制度を維持したかったが、EUが「ドイツのエネルギー政策はドイツ企業への隠れた補助金であり、健全な競争を妨げる。」とイエローカードを出した。そこで政府は渋々この点も手を加えることにした。今後、補助金で安くなった電気を利用するには、製造高に対しての電気代の割合が16%を超えることが条件になった。さらにこれまでのように、「"EEG-Umlage"は無料!」ではなく、認定された会社も"EEG-Umlage"を最低20%は負担する。こうして安い電気を受ける資格のある会社の数が激減する上に、完全に免除ではないので、一般消費者への負担は抑えられる筈だ。

では電気代はこの改革で安くなるのか?"Wohl kaum."(有りえない。)だろう。すでに設置されている施設に対しては、これまで通り補助金が出るからだ。さらに再生エネルギーの構築のスピードは落とすが、それでも今後も構築されていく。すなわち毎年、もっとたくさんの補助金が必要になる。これでは"EEG-Umlage"の上昇率をしばらく押さえ込むのが精一杯だ。100歩譲って来年、この改革のお陰で"EEG-Umlage"が減少したと仮定してみよう。しかし今、北海に建設している(そして大幅に遅れている)風力発電施設で発電された電気を南に送るため、ドイツ中に送電線網を張り巡らす必要がある。その費用は送電料として電気代に上乗せされる。さらに今後、長期的に見て石炭、天然ガスの値段は上昇するだろうから、発電にかかるコストは上昇する。結果として、"EEG-Umlage"は上昇しなくても、設備投資や原材料が上昇するので、電気代が安くなることはない。せめてこれまでのような電気代の上昇率を押さえる事ができれば、御の字だろう。



始めて減少するEEG-Umlage
505.jpg

     
        
スポンサーサイト

Comment 0

Leave a comment