„bewaffnungsfaehig“(06.08.2014)

日本では集団防衛権の行使について、日本らしい方法で、これまでの方針の変更が決定された。すなわち憲法には、「行使しない。」と書かれているのに、「解釈」を変えることで行使が可能になるという、日本人でなければ理解できない理屈である。別の言い方をすれば、黒色を、「黒色の解釈を変えることで、黒色ではなくなる。」という日本人にしか理解できない理屈だ。日本政府がこの独自の論理を国内で使用する分には問題なかった。ところが海外でも同じ理屈を使用するので、国際的に非難を浴びてきた。商用捕鯨を調査捕鯨と称するだけではなく、補助金を餌に金銭的に貧しい国を捕鯨委員会のメンバーに加入させ、捕鯨賛成派を多数派にしようと画策した。お陰で、「日本は汚い。」というイメージが西欧で定着した。某首相は靖国神社参拝を、「戦争犯罪人を拝みにいったのではない。」と説明する事で、世界が理解すると信じて疑わなかった。この誤謬により、よりによって唯一の日本の理解国であるアメリカからも非難され、中国を孤立化させる筈だったのに、日本が孤立しかねない状況を招いた。

さてドイツではとっくの昔に集団防衛権の行使が認められている。それどころか、ドイツ、及び同盟国が危険にさらされていない時でも、国連、あるいはNatoの要請があれば、(国会で認可の上)軍隊を派遣している。その例が旧ユーゴスラビア紛争や湾岸戦争である。現在はアフガニスタンから、トルコ(シリア内戦でトルコを支援する為、ウズベキスタン(アフガニスタンへの空輸ルートの確保)、コソボ、レバノン、そして10カ国のアフリカ諸国に派遣されて、駐屯している兵隊の数は4220人に昇る。ドイツ軍の規模は18万人でであるから、2.5%程度。一見すると少ない数に見えるが、交代要員を考えるとその3倍の兵員が必要になる。さらに海外に駐屯してる部隊に食料、弾薬を送り届けるために、空軍の補給部隊には休みが無いが、これらは派兵されている数には含まれていない。又、海外に派遣すると言っても、部隊は「何でもいい。」というわけではない。海が無いアフガニスタンに海軍を派遣するわけにもいかない。派兵できる部隊は限定されており、現在のドイツ軍の国防を第一任務とする体制では、能力の限界にある。しかし何を考えたのか、ドイツの大統領は、「ドイツはもっと海外に兵隊を送るべきだ。」と発言して、軍は言うに及ばず、政治家からも斜めに見られることになった。

大統領といえど、所詮は素人。「ドイツ軍はたったの4200人程度しか派兵していないが、もっと派兵できる能力がある。」と勘違いしたのも無理は無い。しかし大統領は、大事な点を見落としていた。ドイツ軍が海外に派遣される場合、主に地上部隊が派遣される。派兵制限の問題で、自前の空軍を連れて行けない。そこで日課のパトロールに出ると、「飛んで火にいる夏の虫」で、何の前触れもなく友軍の車両が火車になってから、待ち受けされたことがわかる。四方から銃撃されて頭をあげることさえもできない。運よく、無線機が壊れていなければ、無線で大本営に空軍の援護を要請できるが、他の戦線で空軍が投入されていないことを祈るしかない、すでに他で投入されていると、「援護はできない。」と言われて、タリバンの格好の射撃標的となる。無人偵察機があれば、敵の待ち伏せなどは事前に発見できるのに、ドイツ軍はソビエトを仮想敵国(甲)と考えていたために、ロシアの戦闘機と戦える迎撃戦闘機、ロシアの戦車も撃破する戦車を擁しているが、ゲリラ戦の装備は準備されていなかったのである。

業を煮やしたドイツ軍は、イスラエルから無人偵察機をレンタルしたが、この偵察機には武器の搭載不可能な純粋な偵察機である。軍はタリバンの集中砲火に遭っている兵隊を救える能力を持っている無人攻撃機を欲したが、政治がこれを許さなかった。というのも米国がイラクやパキスタンでこの無人攻撃機を多様、罪の無い市民を(標的と誤って、あるいは標的と一緒に)多数殺害している。その使用(殺人)命令は軍が自由にその場で下しており、事後の議会への報告義務もなければ、その正当性を調査するすることもない。これが原因で武器を搭載した無人飛行機の評判は、ドイツ国内ではすこぶる悪い。かってゲシュターポが市民の権利を無視して容疑者を拘留、殺害した歴史を持つドイツでは、この種の兵器はゲシュターポ同様に悪の権化とみなされている。

このように政治的配慮でドイツ軍に必要な兵器が調達されないことに、ドイツ軍は大いに不満であったが、無い袖は触れない。そこで無人偵察機で我慢する事にしたが、(前)国防大臣が無人偵察機の導入で大へまをかまし、危うく首になる所だった。こうして幸か不幸か、無人機導入の話は白紙に戻ってしまった。そして新しく就任した国防大臣は、思ったより話がわかった。今後、ドイツ軍の海外派遣が減ることはまずないだろう。ならばせめて最善の兵器を持たせてることで、戦死、あるいは重症を負う兵士の数を少なくする事ができる。この理屈は、母親でもある大臣にはよく理解できた。さらには最善の兵器を装備する事で、兵士は祖国が政治目的の為に利用してない事がわかり、士気があがる。この機会に国防大臣は„bewaffnungsfaehig“(兵器が搭載可能な)無人機を導入したかったが、これを公言すると世論に叩かれる。野党はこれを機会に、「ドイツ軍はまたもや海外で殺人をするようなる!」と論拠、大衆の心理を味方につけて大臣の意志を鼻先で挫くだろう。そこで熟練政治家である大臣は、ドイツ国内で「無人偵察機か、それとも兵器を搭載した無人機か。」の議論が高まるのを待つことにした。

絶対的過半数を持つ与党は日本のように、「閣議決定しました。」で意志を押し通すこともできだが、そのような手段は取らなかった。国民が議論に参加して、賛成と反対の議論を聞き、そして各自が意見をもつべきだと考えたが故である。これがドイツの民主主義と、日本のなんちゃって民主主義の違いである。くだらないドラマや、お笑い番組であふれる日本のテレビと違って、ドイツではテレビ局が競って議論の場を作った。こうした議論のお陰で、どうすれば米軍のような殺人行為が避けられるのか、導入、使用方法についてさまざまな議論が交わされた。国内での議論が高まったところで、国防大臣は「兵士を守ることができる無人飛行機の導入を考えている。」と、慎重にその胸の内を明かした。

これを聞いて無人攻撃機、"Predator"を製造している米国のGeneral Atomics社と、Heron TPを製造しているイスラエルの兵器産業とエアバス社*は、防衛省に商談にやってきた。アメリカ人に言わせれば、無人攻撃機の代名詞とも言えるPredator は、その実用性、耐久性は、イラクとパキスタンでの実戦投入で十分に証明されているので、「すぐに実戦投入が可能」だという。一方、イスラエル製の無人飛行機は、基本的に偵察機である。これを任務によって兵器を搭載して無人攻撃機器として使用が可能になるので、ドイツの世論には受けがいい。さらにこの兵器はイスラエルの製造元から、エアバス社がこれを商社のように買ってドイツ軍に納入するので、政界へのパイプは太い。表向きには調達局が調達先を決めることになるが、ドイツ軍は今後も米軍と共同の軍事行動を取ることになるだろうから、統一された武器系統を採用した方が、戦場での弾薬、部品の調達など便利な面がある。果たして決定はいかに?

* エアバス
独仏合資の兵器産業。この前までは社名はEADSで、エアバスのはその子会社だった。しかし兵器産業の親会社の名前を出すと人気がないので、民間機を製造している子会社の名前を会社の名前にする事にした。

 

Heron TP、イスラエル製。
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Predator B 米国製。
508 (2)



        
        
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