ドン キ ホーテ (28.10.2014)

フランスで起きたテロを引き合いに出すまでもなく、ユダヤ関係の施設はドイツでも右翼とイスラム教徒に狙われている。ドイツでまたシナゴークが燃えると、「ドイツでナチが台等!」と新聞のトップを飾り、ドイツの評判は地に落ちる。朝鮮関連の施設を無防備で右翼の攻撃にさらしている日本と違って、ドイツではユダヤ関連の施設、それに米国大使館は24時間警備している。お陰でフランスで起きたテロは、ドイツでは未然に防ぐことができている。しかしその負担は警察官に重くのしかかっている。折角の週末なのに土曜日は夜通しユダヤ施設の警備、そしてその"Kroenung"(頂点)は、日曜日のサッカー警備である。

日本では滅多に報道されないが、ドイツにも「熱狂なサッカーファン」が多く居る。その多くは頭よりも腕前に自信がある。しかし卑怯者なので、一人では何もできない。しかし何百という同志と一緒にいると、いきなり強くなったような錯覚に陥る。おまけに朝から酒を飲んでいるので、かすかに残っていた知性は飛び去り、日本の夜の酒場のような光景、見知らぬ相手に喧嘩をしかけたり、公共の器物を破壊する、が昼間から観察される。こうした「ファン」の中には更にハードなコア(核)が居て、ドイツ語でこういう連中を"Ultra"(ウルトラ。ウルトラマンとは関係ない。)と呼ぶ。構成員は失業者とネオナチだ。社会に敵対している彼等は、その鬱憤を晴らす機会として、サッカーを利用する。彼等の攻撃目標は憎い体制を守っている警察と、相手チームのファン(ウルトラ)だ。

サッカーファンがいると大騒ぎしているので、すぐにわかる。電車の窓を叩いたり、雄たけびをあげている様は檻の中の猿と変わらない。同じ車両に乗るのは避けよう。チンパンジーご一行が目的地の駅に着くと、敵チームのファンと遭遇戦が始まる。そこで警察は駅に集結して、ファン同志が遭遇しないように、出口までエスコートする。このファンをそのまま競技場まで警備して、試合中に乱闘になると警察が真ん中に入り、両陣営を分ける。当然、警察は両陣営のウルトラから攻撃される。凶器を持っていることも珍しくないので、警察はヘルメットから防弾チョッキまでフル装備での出動だ。体力がないとできない仕事なので、まだ若い警官がこうした警備に狩りだされる。しかし、「ウルトラとの乱闘なんて無意味だ。」と警察官の士気はすでに底辺だ。これが毎週末に繰り返されるので、若き警察官の彼がブル~なのも無理はない。

特にダービーと呼ばれる地元のチームが対決するときは、熾烈を極める。ドルトムントとシャルケ、あるいはブレーマンとハノーファーなどはその典型的な例で動員される警察官の数は1200人、その費用は1日30万ユーロ(4千2百万円)もかかる。一体、誰がこの費用を払っているのか、ご存知だろうか。警察のお給料は地方自治体が払っている。すなわちサッカーなどには興味がない善良な市民が、この警察の動員費用を払わせられている。ところが地方自治体の家計は火の車。毎週、こんな費用を払わされてはたまらない。そこで自治体はドイツサッカー連盟(DFB)に、「費用を負担してもらえないか。」と打診したが連盟は、"Ich denke nicht daran"(有り得ない。)とこの打診を突っぱねた。そんな事を許しては、警察の動員費用を入場チケットに上乗せしなくてはならず、入場者数が減る。入場者数が減ると、連盟の収支が悪化する。そんな事は許されるものではない。ドイツはサッカーは国技なのだ。日本の国技ように税金をじゃんじゃん使用すべきだ。そこでドイツでも地方自治体は渋々、警察の動員費用を負担しているのが現状である。

ところが地方自治体でも特に貧乏なブレーメンが、「我慢袋の緒が切れた。」と、「次回の試合で発生した警察動員の費用はDFBに請求する。」と言い出した。DFBの脅しは長く待つまでもなかった。ドイツのナショナルチームが世界一になっての始めての試合はブレーメンで開催される筈だったが、DFBはこれをキャンセルした。これがDFBに対抗する地方自治体への見せしめになる筈だった。ところがブレーメンはこの脅しに屈しなかった(お金もなかった)。10月23日、ブレーメンは州議会で「サッカーの試合で発生する警察の動員費用は、競技の運営者が支払う。」と、この案件を可決、DFBに宣戦布告した。

DFBはすぐさま反撃に出て、ブレーメンで開催予定だったブンデスリーガの試合をキャンセルした。これによりブレーメンはファンからの抗議で折れるとDFBは考えている、しかし一向にその様子がない。このままの状況が続くと、ブレーメン市のチームがまだブンデスリーガの1部にビリながら在籍しているので、DFBは永遠に試合をキャンセルする事はできない。いつかはブレーメンで試合をする事になる。そしてブレーメンは請求書をDFBに送る。しかしDFBは支払いを拒否するので、ブレーメンは裁判所に訴える。こうしてこの懸案が、最高裁判所で判決されるまで続くだろう。

通常、DFBのような強敵に対抗する場合、同盟を組むのものだ。ハンブルクやハノーファーなどとハンザ同盟を組んで対抗すれば、この3都市(州)のチームはブンデスリーガの1部に在籍しているので、DFBはすべての試合をキャンセルする事はできない。だから勝算が高くなる。ところがよりによって16州あるドイツの州でもっとも小さくて、さらに貧乏なブレーメンが、風車のように強大なDFBに単独で宣戦布告した。これが勇気だったのか、それとも後先を考えない無謀な行為であったのか、数年後に最高裁判所の判決で結果が出るだろう。仮にブレーメンが勝ったとしよう。するとこれまでは傍観者だった他の地方自治体も「回れ右!」をして、DFBに請求書を送ることになるだろう。今後の展開が楽しみだ。


一見、普通のファンのようだが、
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競技場で発炎筒を点火して試合は中断。
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試合の前と後は、争いを求めて徘徊する。
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