違法じゃない? (03.03.2015)

ドイツに滞在すると、「マリワナ(カナビス、ハシッシ)の所有は違法ではない。販売すると違法になる。」という話を何度か耳にする。とりわけマリファナをやっている人は、この言い訳を好んで使用する。これが完璧な勘違いで、"Betäubungsmittelgesetz"(麻薬法)の29条に、「自身の消費の為、あるいは販売の為、あるいはその他の目的を問わず、麻薬の所持は違法。」 としっかり書かれている。それでも負けず嫌いなドイツ人が、「持っているだけで、どうして違法なんだ。」と子供じみた論拠で裁判所に訴えた。この件はなんと最高裁判所まで持ち込まれ、ここでも、「違法です。」と判断されたので、もう言い逃れはできません。違法です。ただし例外があり、「少量のカナビスの所有では、罰則は適用されない。」とあり、「社会に危険を及ぼす量の所有は処罰の対象になる。」とある。すなわち少量のカナビスの所有は、違法であっても、処罰せられないということになる。

すると、「じゃ、何グラムまでは違法にならないんですか。」と言う人、もう一度、読み返してください。所有は1グラムでも違法です。ただし微量だと罰則が、先に述べた理由で提供されない(かもしれない)だけです。どうしても知りたい方の為に書いておけば、ドイツでは大体6グラムまでは大目に見てもらえます。ただしドイツは連邦制なので、州により許容量が違います。例えばデユッセルドルフが州都のNRW州は寛大で、10グラムまで罰則が適用されない様子。販売量が多いベルリンでは(稀に)、15グラムまで大目に見てもらえることもある。「よし、じゃ週末オランダまで言ってかっきり10グラム買ってこよう。」という人、大きな間違いです。取締りでお財布に入っていた0.01gのカナビスが見つかった女性教師は、700ユーロの罰金刑を受けました。罰則が適用されない量は法律で規定されているものではありません。警察、検察が、「これは見逃せない。」と判断すると、微量でも罰則が適用されます。

興味半分で麻薬に手を出す人がいる一方で、カナビスに含まれている成分は治療方法のない病気で苦しんでいる患者の痛みを和らげることも証明されている。欧州ではこの成分を含んだ薬品"Sativex"が認可されており、医師が処方箋を出してくれれば薬局で買うことができる。だたし健康保険は費用を負担してくれないので、30日用のお薬で335ユーロも自腹で払うことになる。病気の為、生活保護で生活してる人間が払える額ではない。そこで、慢性的な痛みに悩む患者が、「カナビスの自宅栽培を許可すべきだ。」と、ケルンの司法裁判所に訴えた。

建前を最優先する日本と違い、ケルンの司法裁判所は、「他に痛みを和らげる方法がなく、仮に薬があっても高価で入手できないなら、自家栽培もやむ得ない。」と判決を下した。立派な理由があるにせよ、司法が麻薬の栽培を認めたこの判決は、ドイツでも注目を浴びた。ドイツには"Bundesinstitut für Arzneimittel und Medizinprodukte"、通称BfArMという機関がある。日本語に直すと、薬と医療製品局。本来は慢性的な痛みに悩まされる患者はここでカナビスの処方箋を申請すれば、オランダ産のカナビスが薬局で買える筈だった。ところがそこはお役所のやること。いつも何か苦情をつけて、滅多に処方箋を出す事がなかった。この判決により、この機関は裁判で勝訴した患者の審査をやり直すことになった。この判決はさらに面白い展開を見せた。

日本には中毒患者を対象とした医療機関が極めて少ない。日本社会では、「薬物に手を出して中毒になった者は自業自得。」と見捨てしまう。しかし、見捨てても、見捨てられた人間が自然に更正するわけではない。中毒患者は薬物を手に入れるため犯罪に手を出したり、組織犯罪の手先になる事が多く、最善のケースでも生活保護を受けての生活となる。日本なら、「それも仕方がない。」と考えるが、ドイツ(欧州)では、すでに中毒患者になってしまった場合、「どうすれば一番社会に害を及ぼすことがなくなるか。」と考える。そのまま放っておけば社会に害を与えることになるので、メタドンなどの代用麻薬を与えることにより、中毒患者が社会復帰ができることを目指す。社会復帰ができなくても、無料で麻薬が手に入るので、犯罪の数が減る。そして数は少ないが、代用麻薬により社会復帰を果たして、仕事をしている人間もいる。こちらの方が社会にとってはるかに安くあがる上、社会への危険も減る。この中毒患者の社会復帰を目的とした、"Drogenbeauftragte"(麻薬担当官)という役職がドイツにある。

この担当官が上述のカナビスの自宅栽培の判決を受け、慢性的な痛みに悩む患者が、毎回、BfArMを訴える手間を省くべく、「慢性的な痛みに悩む患者には、カナビスが医療品として与えられるべきだ。」と発言、政府も今回の判決を受けて、この指針に沿った法律案を準備中だ。予定では今年中に国会で審議されて可決、2016年からの施行を目指している。合法的にカナビスが買えるようになると、「慢性的な痛みに悩まされている。」と言い出す人間が急増するので、本当の患者とそうでない者をどうやって区別するのか、その他、いろいろな問題が山積している。それでもこの法案が国会で可決されることになれば、これまで痛みに悩まされてきた患者には、待遇改善への大きな一歩となる。

ちなみに日本の厚生省は、「今後の慢性の痛み対策」として次のような提言をしている。「慢性の痛みに苦しむ患者においては、自身の痛みを受容することにより症状の軽快が得られることがしばしば経験されており、痛みの消失を目的(=ゴール)とするのではなく、患者が痛みと向き合い、受容することも重要である。」と言っている。あっぱれ。見栄、建前に拘るあまりに代用薬物を出すことができず、これを正当化するために考え出されたのがこの指針だ。日本ではこのような病気に悩まされないことを祈るばかりだ。

編集後記
ベルリンのKreuzberg地区は、知る人ぞ知る、カナビス(マリワナ)の消費の首都。ゲルリッツ公園では夕方になるとデイーラーと消費者で大賑わいする。自治体は取り締まりを強化してこの傾向と戦ったが、2年後には降参した。あまりにも有名になり、取り締まりをしても一向に効き目がなく、子供が麻薬に他を出す危険が高まったためだ。そこで自治体はこの地区だけカナビスを合法化、ちゃんとした店舗で販売できるようにする法案を提出した。この法案が認可されれば、成人であれば誰でも30gまで購入が可能になる。ブレーメン、ケルンなども同じような法案を準備中だ、いよいよドイツでも合法化される日が来るのだろうか。

私服警官による取り締まり。左がディーラー、右が警官です。
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