お調子者  (05.07.2006)

久しく待ち焦がれていたWMも終わった。すくなくとも、日本とドイツにとっては終わったも同然である。準決勝戦でイタリアにドイツが負けた際のドイツ人の反応は面白いものがった。中には涙を流して、敗戦を悲しむ姿も見られたが、多くのドイツ人が、「イタリアチームの方が優れたチームだったので、勝った(負けた)のは当然だ。」という評価をしたのである。普段の「絶対に失敗を認めないドイツ人」を知っているだけに、この率直さには驚かされた。
それはさておき、WM前のドイツチームの評価は最低だった。危うく日本チームに負けそうになったり、イタリアチームに4-1で惨敗して、監督の手腕が大いに疑問にされた。ドイツチームの監督に就任したKlinsmann氏はかってのドイツチームが世界チャンピオンになった時のメンバーだが、現在は米国に住んでいる。誰もなりたくないドイツチームの監督の大役を引き受けたKlinsmann氏は、就任の記者会見で「目標は、2006年のWMで世界チャンピオンになる事。」と公言して記者団の失笑を買った。ちょうどヨーロッパ選手権の予選で一勝もできずに、惨めに予選で敗退したばかりだったけに、誰の目にもそんなことは到底達成不可能に思えたからである。その後、ドイツ国内はおろか、外国に出かけて試合をするも強豪と呼ばれるチームに対して、1回も勝つ事ができなかった。あまりの惨状にいたたまれなくなったドイツのサッカー連盟は、監督の訓練方法に批判を行なうようになり、最後には、「ドイツのナショナルチームの監督たるものは、試合の時だけドイツに飛んで来るのではなく、ドイツに住んでチームの育成にもっと時間を費やすべきだ。」と個人攻撃が始まった。あきらかに、今回のWMが終わったらさっさと首にして、別の監督に代えるぞ!と暗に言っているのである。
ところが、である。いざWMが始まって見ると、ドイツチームは全勝で予選をクリアして、あれよあれよという間に準決勝戦に進出。ドイツではドイツチームの活躍に全く期待していなかっただけに、ドイツは国中がWMの熱に沸いた。最後までドイツチームの成果を疑っていた者も、準準決勝戦でドイツチームがアルゼンチンに勝利してからは、アパートの窓からドイツの国旗を掲揚する愛国者に変身。準決勝戦ではなんと3100万以上の人がテレビのサッカー中継を観戦して、戦後のテレビの高視聴率を更新した。
準決勝戦の前に記者会見をしたKlinsmann氏は、「当時は、(WMで優勝すると言っても)誰も信用しなかったが、今、どれだけの国民がドイツチームの優勝を信じていることか、この違いを見て欲しい。」と優勝にかける意気込みをみせた。結果はご存知の通り。敗戦後、Klinsmann氏は記者会見で「WMで優勝するという目標を掲げて監督に就任した以上、この地位に留まるべきか疑問に思う。」と暗に辞任をほのめかした。これを聞いて驚いたのは、WMの前までは散々監督の手腕を批判してやまなかったドイツサッカー連盟。ドイツサッカー連盟は急遽、記者会見を行い、「Klinsmann氏には是非、ナショナルチームの監督に留まってほしい。」と調子のいいラブコールを送った。ちょうどその席に居合わせた米国の記社が(米国に住んで、米国の女性と結婚、子供をもうけている)Klinsmann氏に同情したのか、「いままで散々、監督の手腕を批判して邪魔ばかりしてきたのに、それは調子が良すぎるんではないですか。」とドイツ語で質問。サッカー連盟の会長は、(怒りで)言葉を失い、「よく理解できなかったので、通訳をお願いします。」と聞こえないフリをしたほど。
日本でも勝てば官軍というが、ドイツでもその通り。このサッカー連盟の会長の調子のいい事。これまでの発言を翻して堂々とラブコールを送れる神経の図太さ(無神経さ)がうらやましい。 (05.07.2006)

7月12日、Klinsmann氏は記者会見を行い、ナショナルチームの監督を辞任する旨、発表した。辞任の本当の理由はスポーツマンらしく述べられなかったが、表向きの理由として、「家族を大事にしたいから。」という個人的な理由があげられた。(12.07.2006)

049.jpg
ナショナルチームの監督を辞任したクリンスマン氏

050.jpg
ドイツ中は見渡す限り、旗、旗、旗。

スポンサーサイト

Comment 0

Leave a comment