abgestuerzt und abgebrannt / 墜落炎上 (22.06.2015)

エアバス社。すでに何度も紹介しているのでご存知の方は多いと思うが、以前は"European Aeronautic Defence and Space Company" 略称"EADS"という名前だった。しかしかっての戦争大臣が防衛大臣に変わり、軍隊が国防軍、極端なケースでは自衛隊に変わったように、軍事を会社の看板に抱えていては時代の流れに逆らうことを賢く悟り、本社よりよく知られている子会社の名前、すなわちエアバスを会社名にした。

そのエアバス社が、未だに製造上の欠陥と戦っているユーロファイターと共に、会社の未来を託して開発したのが軍需輸送機A400Mだ。重い装備を積んで舗装されていない滑走路から離着陸できることが「ウリ」だったが、コストを安く上げるためにカナダの会社が生産している安価なエンジンを採用した。しかしこれでは馬力が足らず、肝心のウリが不可能なことがわかった。さらには、「欧州の政府が金を出している軍需企業なのに、北米に部品を注文するなんて論外!」と政治家のちょっかいが入り、結局、ロールスロイスとドイツの航空機エンジン会社が共同で開発する事になった。エンジンが変わったので、設計もやり直し。出鼻からつまづいた飛行機だった。

ところがいくらドイツ人のエンジニアが頑張っても、許された重量、大きさで、求められた馬力を出せなかった。そこでエアバスは一案を講じた。舗装された滑走路が必要な標準モデルと、舗装されてない滑走路から離着陸できる軍事モデルを導入することでこの問題を、少なくとも紙の上で解決した。すなわち当初、約束した草原から離着陸が可能な軍事モデルをどうしても望むなら、納入は2018年以降になるというわけだ。すでに4年近く装備の納入が遅れているのに、さらに3年も待てる軍隊など、自衛隊を除いて他にはない。こうして標準モデルの納入が2013年にやっと始まったが、ブレーメンの組立工場では予定の月産2.5機の組み立て目標にははるかに及ばない月産0,7機にしか達しなかった。結果、2015年、ドイツ空軍にはたったの2機しか納入されないことが明らかになった。

この組み立ての遅れは、車の製造ラインと同じように、全く新しい車種の組み立てラインを作ると、当初はどこの工場でも発生するもの。この輸送機の場合は、完成が遅れたので十分に飛行テストが完了しておらず、まだ飛行テストをしながら完成品の組み立てをしている事も、この遅い製造スピードに貢献した。テストにより、「改善が必要だ。」と分かれば、製造を止めてプログラムを新たに組まなければならない。これはウインドウズのプログラムをコンピューターにインストールするのと違って、大変な作業になる。こうして組み立ては、遅々として進んでいなかった。

ところが、ドイツ、及びフランス政府の売り込みの成果か、このいわくつきの輸送機、言う間でもなく標準モデルだが、の売り込みはそこそこ好調だった。エアバスの所有者であるフランス、ドイツは言うに及ばず、トルコ、英国、そしてなんとあのマレーシアからも注文をもらった。さらには今後、ベルギーやテスト飛行場のあるスペインから注文が入ってくる予定で、軍事輸送機の需要はそこそこあるようだ。エアバス社は商売上は優れた戦術を採用したようだった。

この5月、トルコに納入予定だったA400Mが、スペインで処女飛行を行った。ところが離陸中にエンジンが機能を停止、パイロットは軟着陸を試みたが、電線にひかかって1億4000万ユーロもする軍需輸送機は墜落、炎上した。テストパイロットの2名は死亡、2人の技術者は重傷を負ったが生き延びた。「A400M、墜落、炎上。」のニュースが伝わると、この輸送機をすでに保有している政府は、直ちに飛行を禁止した。まずは墜落の原因を解明してから、飛行許可を再度、与えることになった。

命を落したパイロットが墜落するまで管制塔をやりとりをしていたので、墜落の原因はエンジンの停止が原因だとわかったが、問題は何故、エンジンが停止してしまったのか、その解明が最重要課題に挙げられた。するとエアバス技術者は、「ソフトが間違った手順でインストールされていたために、コンピューターが相反する指令を受けて機能停止、ウインドウズで言うシャッタダウンを招いたと結論した。この報告を受けてエアバス社は、「飛行機の製造上のエラーではなく、組み立て工場でのエラーだった。」と断言、輸送機の組み立てと納入を再開すると発表したが、本当のところは誰にもわからない。仮にプログラムにミスがあったとしても、すでに納入された飛行機のプログラムを定期点検でアップデートすれば、誰にもわからないからだ。

以前ここで紹介したドイツ軍の標準消火器、G36の「目標に当たらない。」という小銃の決定的な欠陥に際して、軍の調達機関は、「問題は小銃ではなく火薬にあった。」と発表した。その数年後、新しい国防大臣が、「問題は小銃の構造にあった。」と認める羽目になった事がある。軍需産業の影響力は絶大なので、都合の悪いことは数年にわたって隠し通すことができる。そして事実ばれたときには、すでに後続モデルが完成しており、新たな大量注文が取れるという、まさに夢のようなおいしい商売が軍需産業だ。


墜落炎上したA400M。
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