ヒトラーの日記  (29.07.2006)

ドイツで有名な週刊誌、Sternが1983年、紙上でA.Hitlerの秘密の日記を公開して、ドイツは大きな話題に包まれた。死んでから半世紀経つというのに、この有名人は、毎週ドイツのテレビ、雑誌で取り上げられてその「人気」は一向に収まる傾向がない。そんな「有名人」のこれまで焼却処分されたと信じられていた日記が見つかってしまったのだから、それはもう蜂の巣を蹴っ飛ばしたような騒ぎになった。
他の雑誌の記者は(先を越されたので、悔しい一心で)「そんな日記は偽物に決まっている。」と主張した。勿論、Stern誌もこれが偽物なら大変な信頼性の失墜になるので、日記を掲載する前に筆跡の鑑定家に日記に書かれている筆跡の分析を依頼、「100%本物。」という確証をもらって掲載に踏み切ったのであるから、他の雑誌に偽物呼ばわりされるのが我慢ならない。Stern誌は日記の掲載後、記者会見を開いて、「本物のヒトラーの日記」を堂々と公開して、日記が本物であることを主張した。それでもこの日記の信憑性について一向に議論が収まらないので、Stern誌はこの日記の年代確定を研究所に依頼することになった。その後、研究所で日記に使われた紙、インクを鑑定した結果、この日記は1980年代に、つまりHitlerの死後、35年以上経ってから作成された物であることがわかってしまう。
会社をコケにされたStern誌は、直ちに日記を売り込んだKujau氏を詐欺の廉でDresden警察に告発、Kujau氏は逮捕されてしまう。その後の裁判でわかった事だが、Stern誌はこのよくできた贋作に930万マルクも支払っていた事が明らかになる。裁判ではKujau氏は4年の実刑判決を宣告される。普通ならここで詐欺師としてのキャリアは終わりになるハズだが、Kujau氏の場合はちょっと違った。出獄後、Kujau氏は「Stern誌を見事に騙した有名人」という事で、次々に贋作の依頼が殺到することになる。贋作は本物と称して売買すれば犯罪だが、最初から「コピー」として売買すれば犯罪にならない。ましてや、「あのヒトラーの日記の作者の作品」という事で人気が出て、Kujau氏は2000年に死亡するまで数多くの「贋作」を描き続けた。
このKujau氏の「偽物」だが、流石は Stern誌を見事に騙すだけのことはあって、なかなかの出来栄えである。Kujau氏の死後、氏の「作品」は値段が高騰、Ebayなどのオークションで本物の画家が羨む様な値段がつくようになった。すると市場には、あり得ない数のKujau氏の作品が売りに出される事になる。この作品をEbayで購入した客が不審に思い作品を鑑定に出して見ると、なんとこの作品は中国で作成された偽物であることがわかってしまう。このもあろうに、オリジナルの贋作の贋作が作られていたのである。もしKujau氏がまだ生きていたなら、自分の贋作の贋作が作成されて本物の贋作 として販売されているのを見て、一体どんな気持ちになったであろうか。さらには Kujau氏の死後、Kujau美術館までできてしまう。贋作者とはいえ、ここまで有名になってしまう贋作者に、ドイツではMeister Faelscherの名を奉った。

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Meister Faelscher, Kujau氏

 
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